Last Updated on 3か月 by 管理者
視機能系の例題を80問作成しました。
私が出題するとしたら、以下のような内容を答えさせる選択肢を作ります・・。ということで、ご参考にしてみてください。
1.角膜と水晶体の屈折力、眼軸長、回旋点は?
Gullstrand(グルストランド)氏の要式眼に従った眼球の光学的数値は以下の通りです。
【解説】
仮に、眼内から大気中に取り出した時の角膜屈折力は−7.00D位、水晶体の屈折力は+101.82D~+108.93Dです。レンズ前面と後面がそれぞれ接する屈折率が、眼内と眼外では異なる事が理由です。
水中で目を開けると見え方が変わる理由と同じです。角膜前面の空気(屈折率は約1.00)から水(屈折率は約1.33)に変わる結果、角膜の屈折力が弱くなるからです。
また、隅角を観察する時に、メチルセルロース(スコピゾル)(眼科診断や手術時に特殊コンタクトレンズなどの装着を容易にし、密着させる)を使用し、観察用のコンタクトレンズ(角膜の屈折率に近い)を角膜上に密着させる理由である、境界面での全反射を無くす事とも類似しています。
2.S+1.50Dの遠視の人が、測定中に1.75Dの調節介入した時の測定結果は?
【解説】
S+1.50の遠視成分は1.50Dの調節力で相殺され、残りの0.25Dの調節が近視状態として測定されます。
測定中の調節介入は、避けられません。調節緩解する為に、近視眼では雲霧が有効であり、遠視眼では調節麻痺剤が有効です。
調節麻痺剤の点眼で初めてわかる「潜伏性遠視」を眼鏡店で発見するのは難しく、偽近視はその存在自体に賛否両論あります。
3.S+2.50Dの遠視眼の人が、仮に眼軸長が1㎜伸び、眼の屈折力が0.50D弱くなった時に、屈折補正度数はどのように変化すると予測されますか?
【解説】
眼軸長が1mmで3.00Dとは良く言われますが、実際にはそこまでの変化はなく、1mmの伸長での近視化は2.32D位ではないかという話もあります。
4.水晶体の厚みと屈折率は?
【解説】
水晶体の屈折力20Dを、眼鏡レンズで考えるとかなり強めの度数です。
水晶体の屈折力は、大気中では100Dを超えますが、眼鏡レンズの屈折率1.5よりも低い屈折率1.41でその屈折力を出せるって凄い。しかも厚さがたった4mmの水晶体。
5.S−3.00 C−1.00 Ax180で補正される眼の、角膜の垂直方向の屈折力が0.50D弱くなり、水晶体の屈折力が1.50D弱くなった時の屈折補正度数は?
【解説】
実際に起こり得る、加齢性遠視と倒乱視化による度数変化の例です。
幼児期では倒乱視が多く、~20歳位までは直乱視化、~60歳位までは倒乱視化が起こるとされています。乱視軸に対称性があることから、眼瞼圧の変化によるものだと考えられています。
6.オフサルモメーター(ケラトメーター)で測定した角膜の屈折力43.00D@90°、44.00D@180°の場合、Javal’s Rule(ジャバルの式)から全乱視を予測すると?
【解説】
全乱視=角膜乱視+水晶体乱視です。
ハードコンタクトレンズでは、涙液レンズやな何やらで角膜乱視の補正は出来ても、水晶体乱視は補正できません。その時にジャバルの式を使い全乱視を推測したりもします。
7.ドンダーズのプッシュアップ法で調節力を測定した時、遠点が眼前50cm、近点が20cmの時の調節力は?
【解説】
プッシュアップ法は、相対距離拡大により調節力が若干大きく測定されます。更に、距離の違いは、輻輳刺激が一定ではなく、また近接効果の介入にも影響が出ます。
マイナスレンズを付加する調節力測定(米国式21項目検査の#19)では、これらが改善されます。
8.S+2.50Dの補正が必要な眼の調節力が6.50Dである時の遠点と近点は?
【解説】
遠くも近くも明視できる遠視を、随意遠視といいます。遠くしか明視出来ない遠視を相対遠視といい、遠くも近くも明視出来ない遠視を絶対遠視といいます。
このケースでは、随意遠視であり、年齢による調節力の関係から30代と思われます。
9.S+1.00D C−1.00 Ax90°の補正が必要な眼は、遠視性単性直乱視の屈折異常に属しているか否か?
【解説】
この場合は、強主径線が横方向ですので、倒乱視となります。
前焦線と後焦線の位置で近視性や遠視性が決まり、更に、単性か複性、混合性が決まります。強主経線の方向で直乱視か倒乱視が決まります。
10.S+1.00 C+1.00 AX180°の補正が必要な人が、眼前40cmを見る時に、最小錯乱円視する為に必要となる調節力は?
【解説】
最小錯乱円の位置は等価球面度数SE(spherical equivalent)で考えます。スタームのコノイドを頭で考えられると良いですね。
11.S−1.00Dの近視眼の裸眼での遠点と、S+1.00Dのレンズを装用した時の遠点は?
【解説】
実際には、頂点間距離の違いで度数が変わるように、装用レンズ度数が強くなる程、頂点間距離12mmでの度数と実際の補正度数とは異なります。これを、調節効果といいます。
遠視眼での眼鏡装用状態では計算値より多くの調節が必要となり、近視眼では少なく済みます。
12.調節域が眼後50cm~眼前25cmの明視域は?
【解説】
調節域は眼後の距離でも表せますが、明視域を眼後〇cmなどと表したりはしません。
因みに、この人の遠視度数はS+2.00Dであり、調節力は6.00Dです。
13.調節麻痺剤の使用で検出される潜伏遠視とは別で、通常の屈折測定で検出される遠視を何という?
【解説】
潜伏遠視と顕性遠視を足した遠視が、全遠視です。
顕性遠視を調節力によって、絶対遠視や随意遠視と分類することも出来ます。
14.小数視力1.0を、視角の常用対数のlogMARであらわすと?
【解説】
視角は小数視力の逆数です。
例えば、小数視力0.1をlogMARで表す場合は、1/0.1から視角10分となります。よって、小数視力0.1は、log1010=1.0となります。
小数視力1.0をlogMARでは0.0とあらわしますし、小数視力が1.0を超えますとlogMARではマイナスの値になります。例えば、小数視力2.0ではlogMARは−0.30です。
ログマーは、視力を統計処理するのに適しています。
15.「5m用」の0.1のランドルト環が4mの距離で判別できた時の視力は?
【解説】
1mの距離で判別できた時の視力は0.02となります。更に近い距離50cmで判別ができれば視力0.01です。
- それでも判別できない場合:
- 指の数が何㎝の距離で見えるのかの『指数弁(例:30cm指数、30cm/n.d.)』
- 指の動きが分かるかの『手動弁(m.m.)』
- 光を感じるかどうかの『明暗弁、光覚弁(s.l.)』
- 光を感じなければ『全盲』
16.「5m用」の0.1のランドルト環と「3m用」の0.1のランドルト環の、それぞれの視角は?
【解説】
視力の定義は『視角の逆数』というのは変わりませんが、測定距離の違いによる網膜像の違いで視力値は変わると考えます。
因みに、視角の1分は1/60度です。1秒は1/60分。小数視力1.0のランドルト環の大きさは、直径7.5mmで太さ1.5mmです。
17.5m用の視力表を誤って4mの距離で測定してしまい、視力が1.0でした。5mの距離で改めて測定すると視力はいくつ?
【解説】
4mでの視力よりも5mでは下がる筈です。実際にはこんな失敗例は無いですけどね。
18.海外で測定された視力が分数視力6/30とありました。小数視力ではいくつ?
【解説】
分数視力は、主にイギリスでの表記方法です。「視力6/30」の6は測定距離[m]、判別できる距離が30cmとなります。
アメリカでは、「20/100」のようにフィート(1フィートは30.48cm)で表します。
この場合、20フィートで測定していますという事です。つまり、609.6cmの測定距離です。小数視力で表す時にはそのまま20を100で割って0.2となります。
19.測定距離50cmで開散光線を使用し、静的検影法をした時に、S+2.00Dで中和した場合の屈折補正値は?
【解説】
例えば、正視の人がS+2.00Dの眼鏡を掛けると、遠点は眼前50cmになります。それと一緒で、50cmの距離で静的検影法を行いS+2.00で「中和」する状態は正視状態となります。
この人に、裸眼の状態で行うと、反射光は「同行」します。
S+2.00よりも強く入れると「逆行」します。また、測定距離が離れると「逆光」しますし、近づくと「同行」します。そして、入射光線が「収束光線」では、「同行」と「逆行」が入れ替わります。
20.開散光線による移動検影法を行った際、180°経線は40cmの距離で中和し、90°経線では25cmで中和した時の、眼の屈折補正値は?
【解説】
移動検影法は、眼前にレンズを入れずに、測定距離を変えることで中和点から度数を求める方法です。測定距離の逆数がそのままの度数となります。
21.開散光線による静的検影法を66.6cmで行ったところ、S+3.00Dで中和する眼の屈折補正値は?
【解説】
余談ですが、動的検影法とは、被検者が近点視物を固視している間に行う検影法です。
調節が介入するほか、中和に巾(中和域)がありますが、縮瞳する為収差が少なく、測定距離が近くより正確な値が出やすい(本当⁉)方法です。但し、調節刺激(AS)に対する調節反応(AR)の違いで、反射光の種類は変わります。
これらが、静的検影法との違いです。
22.乱視測定で、放射線視標の濃さが均一にむらなく見える時は、乱視が補正されているといって良い?
【解説】
「雲霧法による乱視測定」では、調節により最小錯乱円視させないように雲霧し、「近視性の状態」にしてから放射線視標を見せないといけません。
また、乱視度数が合っていても、乱視軸がずれてしまうと、残余乱視という別の乱視が発生してしまいますので、濃く見える方向が変わります。
23.無調節状態の遠視性単性乱視の人が、裸眼の状態で放射線視標を見た時に、12時-6時と11時-5時の間が同程度に濃く見える場合のマイナスシリンダーの乱視軸は何度?
【解説】
前焦線が165°、後焦線が75°です。更には、調節介入すると濃く見える方向が無くなったり、垂直方向になったりもしますので、一度、雲霧をし近視性の状態にしてから放射線視標を見せます。
24.クロスシリンダーを反転した場合の最小錯乱円の位置は変わりますか?
【解説】
最小錯乱円が網膜上にある位置でクロスシリンダーを反転させますが、乱視度数を付加した場合には勿論、位置は少しずれます。
そのため、乱視度数を2段階付加したら、球面度数で帳尻を合わせます。等価球面度数SEの考え方です。
25.屈折補正値がS−3.00 C−1.50 Ax180°の眼に対して、クロスシリンダーテストにて乱視測定する際の、無調節状態での最小錯乱円視させる球面値は?
【解説】
放射線を使った雲霧法では近視性の状態での測定で、クロスシリンダーによる乱視測定では、最小錯乱円視させた状態での測定となります。
実際には、無調節状態で最小錯乱円が網膜上にピッタリくることはありませんので(度数が0.25stepの為)、調節力がある被検者の場合には少し過補正気味(S−0.25D~−0.50D)にした状態で調節をさせることにより最小錯乱円視をさせてクロスシリンダーテストを行います。その方が精度が上がると考えます。
26.バランステスト(Refractive Balance Test)の目的は?
【解説】
左右眼で、別々に調節量をコントロールする事は一般的には出来ません。これはHeringの法則です。
- 外眼筋の神経支配に関連した法則:
- シェリントン(Sherringon)の相関神経交配法則(ともひき筋)
- 筋収縮に作用する神経刺激を1つの筋が受け取った時には、それと拮抗の関係にある筋は同時に筋弛緩に作用する神経刺激を受けます。
- ヘリング(Hering)の法則(ともむき筋)
- 両眼筋は同じ神経分枝の支配を受けているので、一眼だけ他眼と無関係に動かす事は出来ません。
- シェリントン(Sherringon)の相関神経交配法則(ともひき筋)
へリングの法則は、片眼の眼瞼下垂手術後でも起こります。左右で同程度の挙上シグナルが起こりますので、眼瞼手術を行っていない正常な眼瞼が手術後で逆に下がってしまうことなどが例として挙げられます。
27.カバーテストでカバーされない眼に動きがあるその眼は斜位?それとも斜視?
【解説】
アンカバーテストのみでは、斜視か斜位の判別は出来ません。
カバーテストで反対の眼に動きがあっても、再度カバーすると動かない(優位眼が交代する)ような交代性斜視もあります。
カバーテストは両眼視の状態(斜視、又は斜位)、眼位の種類や程度を間接的に検査できるテストで「カバー・アンカバーテスト」と「交互カバーテスト」から成り立ちます。偏心固視などの固視異常のある被検者には正確な結果は得られません。
28.赤マドックス桿を右眼前に装用させ斜位測定をした時に、赤の横線が固視している光よりも上方に見える斜位の種類は?
【解説】
右眼にはマドックスロッドにより点光源が横に伸びた状態で見え、左眼には点光源がそのまま見えている状態となります。
29.40cmの距離にて、左眼に6△BDを装用させ上下に分離させ、水平斜位の測定をした際に、下の視標が右に1cmずれて見える時の斜位は?
【解説】
フォングレフェによるプリズム分離法での斜位測定で、分離させる為に必要となるプリズム量の目安は、上下では6△であり、水平では10~12△です。
30.ハーゼ理論(独)によるポラテスト法とは?
【解説】
大まかにざっくりと、ドイツではハーゼ理論など完全補正が良いとされ、アメリカでは完全には補正せず部分補正が良いとされています。
31.正視で裸眼状態の人が、裸眼状態での近方では1△の外斜位、S+1.00Dを付加した近方では5△の内斜位だった場合のGradient AC/Aは?
【解説】
Gradient AC/A比の標準値は4±1ですので、ちょっと高めです。輻輳過剰の傾向があります。
おそらく、近方眼鏡ではプリズム処方よりも球面調整で十分だと思われますが、Gradient法は計算しやすいが、あくまで目安です。
32.PD62の正視で裸眼状態の人が、遠方1△の外斜位、近方40cmでの近方4△の外斜位だった場合のCalculated AC/Aは?
【解説】
Gradient AC/A比の測定距離は同じなのに対し、Calculated AC/Aでは測定距離が異なります。その為、近接性輻輳が介入する可能性があります。
33.完全補正値S+1.50D、調節力2.00Dの眼に対し、S+1.00 Add2.50で二重焦点レンズの処方をした時の明視域は?
【解説】
この場合に明視できない距離は、眼前66.6cm~眼前50cmです。
また、遠方部と近方部の境目で像の跳躍(イメージジャンプ:小玉のPΔBDにより明視できない範囲が存在する)が起こります。
34.近方赤緑視標にて加入度を測定した時に、遠用測定値にS+2.50Dを加入した時の濃さが赤だった場合は?
【解説】
実際には、高齢者では色収差が少なくなり赤緑の判別が難しくなりますのであまりこの方法は用いられませんが、理論的な事は知っておくべきだと考えます。
35.コンタクトレンズの度数、曲率半径、厚み、直径はどんな測定機器を使う?
【解説】
因みに、コンタクトレンズのフィティング状態を確認する為には、スリットランプを使用します。
36.コンタクトレンズ装用前は『角膜測定値:44.00D@180° 46.00D@90°、屈折度数:S−1.00 C−2.00 AX180』がコンタクトレンズ装用後に『角膜測定値:43.00D@180° 44.00D@90°』となる場合の予想される屈折度数は?
【解説】
十字を書いてスコア表記で考えると良いです。角膜の180°経線方向は+2.00寄りに、90°経線方向は+1.00寄りに変化しています。
37.ハードコンタクトレンズの装用により、角膜カーブが全体的にフラットになった場合の屈折度数は?
【解説】
角膜のカーブが平らになると、角膜屈折力は弱くなります。
オルソケラトロジーなどがこの症例にあたります。
38.ソフトコンタクトレンズの含水率が高くなるとどうなる?
【解説】
含水率が50%以上のものを『高含水コンタクトレンズ』、50%未満のものを『低含水コンタクトレンズ』といいます。
39.フリッカー視野検査って何ですか?
【解説】
1Hzでは、1秒間に1回光ります。その1秒あたりの点滅回数が増える程、感知できなくなります。人はおよそ70Hz以上でちらつきを感じなくなります。
蛍光灯でもフリッカー現象を起こします。東日本では50Hz、西日本では60Hzの交流電源ですが、そのおよそ2倍(例えば東京50Hzなら100Hz)で点滅します。
40.遠見の、虚性相対輻輳力(NRC)テストでぼやけ(blur)が一般的には生じない理由とは?
【解説】
BIプリズムを付加していくと、網膜像は鼻側にずれ、開散を促します。その虚性融像性輻輳(NFC)の限界に達すると、調節介入がある場合にはその調節を緩める事で開散しますので視標は『ぼやけ』ます。
しかし、一般的には(理論上)調節の介入はないものとしますので『ぼやけ』ることはなく(調節性開散の限界に達し)『分離(break)』します。
近見のNRCテストでは虚性調節性輻輳(NAC)を生じさせる為『ぼやけ』が生じます。
41.シェアードの基準に従い、必要なプリズム量を計算すると? [近方:水平斜位9△BI、実性相対輻輳のぼやけ8△、虚性相対輻輳のぼやけ22△]
【解説】
余力(Reserve)とは、斜位を補正した後、残っている融像性輻輳の事です。輻輳余力と開散余力の2つがあります。
外斜位の余力は、輻輳余力であり実性相対輻輳力になります。内斜位の余力は、開散余力であり虚性相対輻輳力となります。
42.パーシバルの基準に従い、必要なプリズム量を計算すると? [近方:水平斜位9△BI、実性相対輻輳のぼやけ8△、虚性相対輻輳のぼやけ22△]
【解説】
Sheardの基準では『正常な両眼視を維持する為には、輻輳余力または開散余力が斜位の2倍の量と等しいか、またはそれ以下でなければならない』としています。
Parcivalの基準では『全相対融像幅の中央1/3の間をドンダーズ線が通過するのが、正常な両眼視の条件』としています。
パーシバルの基準では、正常な両眼視に関して斜位値を考慮していないという事を留意すべきです。
43.同時視、融像、立体視の定義とは?
【解説】
クロードワースは1910年頃に両眼視を「第1段階の同時視」、「第2段階の融像」、「第3段階の立体視」と分類しました。
ただし、両眼視の程度は、立体視や大型弱視鏡で検査した場合に判明する事で、人の自然の両眼視発達における体系ステップを意味するものではありません。
『深径覚』とは第3次元である奥行きを認識する感覚のことで、『立体視』と『遠近感覚』があります。
遠近感覚は融像されない複視の状態でも、単眼の状態でも生じます。つまり、立体視≠遠近感覚です。
立体視の正確度は~125m(200m)ほどの限られた距離であり、「立体視」以外の経験的に基づく「遠近感覚」というものが日常では必要となります。
44.眼球回旋点から40cm離れた距離を両眼単一視するための輻輳角は?
【解説】
メートル角(Meter angle)とは、正中正面(Median plane)上眼1メートルの固視物に輻輳した時の輻輳角を1メートル角(MA)としています。
MAの長所は、調節力と同じ数値で輻輳角を表せる点ですが、両眼の回旋点が、臨床上測定困難である事や、PDも考慮していない点は注意しなければなりません。
45.PDが60cmの被検者が80cm前方(両眼回旋点の中間距離から)の視標を両眼視している時の輻輳角をMAで表すと?
【解説】
因みに、輻輳量を表すには、MAとPDを掛ければ良いので、輻輳量=1.25MA×6.0cm=7.5△となります。
46.調節状態による屈折の分類で、調節休止状態を静的屈折といいますが、調節が働いている屈折は何といいますか?
【解説】
眼球内に入射する光線は、主に角膜(等質角膜面の屈折力43.08D)と水晶体(非調節時19.11D、最大調節時33.06D)で屈折し、網膜の視細胞上に結像されます。その眼の機能を『屈折』といいます。
屈折状態により、正視(emmetropia)、近視(myopia)、遠視(hyperopia、hypermetropia)、乱視(astigmatism)・・と分類されますが、通常は静的屈折での状態で分類されます。
47.学童期に発生進行する学校近視の大部分は、視機能障害を伴わない単純近視ですが、眼軸長が26.0~26.5mm以上ある強度近視に多い、何らかの視機能障害を伴う近視は?
【解説】
強度近視(high myopia)の多くは軸性近視(axial myopia)であり、良性なものもありますが、多くは網膜や硝子体に変性があります。
その為、変性近視(degenerative myopia)ともいわれます。
単純近視(simple myopia)又は、良性近視(benign myopia)の発生原因を、近業時の毛様体筋や脈絡膜の萎縮による眼軸長の伸長とする説が有力となります。遺伝や生活環境などの因子が影響を及ぼすとも考えられております。
遠方視による調節緩和や、太陽光によるドーパミン分泌の増加による眼軸長の過伸長抑制、縮瞳による焦点深度の深さが眼軸長の伸長を抑制する・・とする考えもあります。
48.暗所で、眼の屈折状態が近視よりになる現象は何近視?
【解説】
明所にて調節する際の手掛かりは、網膜像のボケです。色収差や球面収差、みかけの大きさや距離などを手掛かりとします。
しかし、暗所では調節刺激に対して多くの調節反応が起こります。この状態は、調節緊張の状態であり、調節安静位や夜間近視とよばれます。
パソコン画面などのVDT作業でもこの現象に似た現象が起きています。
パソコン画面は電気的に作られた画素によるもので、文字のエネルギー分布が一様ではないために、Dark focus(完全暗室での調節状態)という過度な調節(約1.00D)の誘発があります。
49.核白内障などでみられる近視で、水晶体核の屈折率が皮質に比べて高くなり生じる近視は?
【解説】
老人性白内障の中で最も頻度が高いタイプは皮質型白内障です。
皮質型白内障は、水晶体の端から中心部に向かい徐々に混濁が生じ、屈折度数が遠視方向に変化する特徴があります。一方で、水晶体核が凝縮し、硬くなり色がつき混濁を増すタイプを核白内障といいます。
核白内障は、屈折度数が近視方向に変化します。
50.斜位角が大きい外斜位でみられる、輻輳により起こる近視は?
【解説】
近見三反応として、輻輳と調節と縮瞳があります。
例えば、輻輳すると調節と縮瞳が同時に起こります。調節の変化に伴い生じる輻輳を、調節性輻輳(Accommodative convergence:AC)といいます。
調節性輻輳(AC)を調節の変化(A)で割った値は個々でほぼ一定(平均値3.5△/D)であり、調節の変化であるAC/A比は臨床で良く利用されます。実際に利用されるAC/A比は、一定の調節刺激の変化を基にしたStimulus AC/A比です。
調節反応は臨床時に直接測定ができない為、調節反応を基にしたResponce AC/A比とは異なる事を留意して利用しなくてはなりません。
つまり、一定の調節刺激に対して生じる調節反応は一定ではないという事です。
※ 加齢に伴いAC/A比は、若干、増加する傾向にはありますが、ビジュアルトレーニング(Visual training:VT)による変化も無いとされるのが一般的です。
51.遠視眼の調節状態による分類で、潜伏遠視と顕性遠視を合わせた遠視は?
【解説】
顕性遠視とは、通常の非調節麻痺状態での一般屈折測定で検出される遠視をいいます。完全な調節麻痺状態で測定される場合には潜伏遠視が無くなり、屈折測定で全遠視を測定する事ができます。
また、調節力で遠視度数を打ち消し、良好な遠方視力や近方視力が得られる遠視を随意遠視といいます。良好な遠方視力は出るが、調節性輻輳による内斜位や内斜視になり、良好な近方視力が出ないような遠視を相対遠視といいます。遠方も近方も視力不良で、調節力で代償できない遠視を絶対遠視といいます。
52.外界の一点から発せられる光線がどこにも結像しない屈折状態は?
【解説】
点として結像せずとも、直交する二つの焦線を成すものは正乱視であり、直交しなかったり、屈折度が不規則な為に結像が乱れ焦線とならないものなど、正乱視以外は不正乱視となります。
正乱視は眼鏡での乱視補正が可能ですが、不正乱視では難しくなります。もし、不正乱視を眼鏡で視力補正する場合には、測定時に乱視度数が強く測定され易い事を留意する必要があります。不正乱視は眼疾患が考えられますので、基本的には眼科さんの指示を仰ぐのが良いでしょう。
正乱視は強度数になる程、軸度方向のズレによる残余乱視の発生がある事も留意する必要があります。
53.眼の強主経線が20°方向にある乱視は?
【解説】
乱視の強主経線方向による分類として、一般的には90°±30°(60°~120°)を直乱視、180°±30°(0°~30°と150°~180°)を倒乱視、45°±15°と135°±15°(30°~60°と120°~150°)を斜乱視といいます。
正乱視を眼鏡レンズで補正する場合には、マイナス円柱レンズでは軸方向を弱主経線に合わせて補正します。プラス円柱レンズで補正する場合には、軸方向を強主経線に合わせて補正します。
上図のような倒乱視で、例えば、1.00Dの乱視がある場合には以下の様に乱視補正できます。
凹円柱レンズと凸円柱レンズは共に、スコア表記の±0.00Dの方向が軸度方向となります。マイナス円柱レンズでは軸方向が弱主経線であり、プラス円柱レンズでは強主経線方向に合わせて補正できるという事がわかります。
54.プラス円柱レンズで補正され、前焦線が網膜上にあり、後焦線が横方向にある乱視の種類は?
【解説】
プラス円柱レンズで補正され、前焦線と後焦線の位置(網膜後方の位置)から、遠視性乱視です。
また、一方の焦線が網膜上にあるという事は、単性乱視です。
後焦線が横方向にあるという事は、弱主経線方向の屈折が後焦線として結像しており、弱主経線の方向は縦です。強主経線の方向は横ですので、倒乱視です。
55.強度近視の度数範囲は?
【解説】
屈折異常の程度による分類としては、弱度は±3.00D以下、中等度は±3.00D超~±6.00D以下、強度は±6.00D超~±10.00D以下、最強度は±10.00D超~±15.00D以下、極度は±15.00D超となります。
しかし、『日本眼鏡学会の眼鏡学ハンドブック』や『日本学術振興会、昭和17年』などの古い資料では、遠視度数の範囲が異なります。中等度を+3.00D以上~5.00D未満としたり、弱度を+2.00以下としたりもします。
56.眼の光学系でよく用いられる標準的モデルであるGullustrandの模型眼で、屈折力が43.05Dといえばどこの部位?
【解説】
角膜(屈折率1.376)の屈折力は、前面では+48.83D、後面では−5.88Dとなり、角膜前面が大気と接し、後面が房水(屈折率1.336)と接している事が条件となります。
では次に、角膜の厚み0.5mmを無視した場合に、角膜が大気中(屈折率1.00)にある時の屈折力を考えてみますと、角膜の前面屈折力は48.83+(−5.88)=+42.95[D]となり、後面屈折力は−55.29[D]となります。それを足し合わせた42.95+(−55.29)=−6.5[D]が空気中でのおおよその屈折力となります。
角膜屈折力は、大気中では−6.5Dであり、角膜後面が房水と接すると+43Dと強いプラスの作用をします。
角膜屈折力+43.05Dを以下の数字を使用し、実際に計算で求めてみます。
角膜前面屈折力D1’は、(1.376−1.000)/0.0077=+48.8[D]となります。
角膜後面屈折力D2’は、(1.336−1.376)/0.0068=−5.9[D]となります。
よって、角膜の厚みt=0.5mmを考慮して角膜屈折力D’を求めてみますと、
D’=D1’+D2’−t/n×(D1’×D2’)
=48.8+(−5.9)−(0.0005)/1.376×(48.8)×(−5.9)
≒+43.05[D]
よって、計算で角膜屈折力を求めることが出来ました。
57.Gullustrandの模型眼で、屈折力が19.11Dといえばどこの部位?
【解説】
最大調節時(13.95D)の、水晶体屈折力は33.06Dです。
水晶体の平均屈折率は約1.41です。若年者の水晶体屈折率は中心部が高く、年齢と共に周辺部が高くなっていきます。
加齢に伴う軽度の遠視化の理由の1つとして、このような透光体の屈折率の変化が考えられます。ただし、加齢に伴う遠視化の最大因子は、水晶体の硬化による屈折力の減少と考えられています。他の因子としては、角膜屈折力の減少、眼軸長の短縮、水晶体の後退などが考えられます。
皮質白内障では遠視化に変化しますが、核白内障では近視化に変化します。
水晶体の大気中での屈折力を計算しますと、厚みを無視した場合には108.93D、厚み(3.60mm)を考慮しますと101.82Dとなります。
角膜(屈折率1.376)は、大気(屈折率1.0)と房水(屈折率1.336)に接している時には+43.05Dの屈折力ですが、大気中では−6.5Dとなります。
水晶体(屈折率1.386)は、前房と後房で房水(屈折率1.336)と硝子体(屈折率1.336)に接している時には+19.11Dの屈折力ですが、大気中では+101.83Dとなります。
58.眼軸長の測定時、散瞳の必要性が無く非接触であり、短時間の測定で済む方法は、Aモード超音波 測定法と光学式眼軸長 測定法のどちら?
【解説】
Aモード超音波測定法は、散瞳の必要があり接触具合により、測定時間も精度にも測定者の熟練度によるバラつきが出ます。測定範囲は、角膜表面から内境界膜まであり、光軸で測定します。
レーザーによる光学式眼軸測定法は、非接触である為、測定値の再現性が高いです。測定範囲は、涙液表面から網膜色素上皮までですが、網膜の厚みを補正した値(Aモードと相関するように内境界膜までの値)が表示されます。光軸では無く、視軸で測定します。
成熟白内障などの光学式眼軸長測定が困難な場合には、Aモード超音波測定が必要となります。
59.新生児の眼軸長は約17mm、成人は約24mmといわれますが、眼軸が1mm伸展する事による屈折異常の変化は?
【解説】
眼軸長が1mm伸長すると、約3.00Dの近視化が起こります。
新生児は、成人と比べ眼軸長が約7mmほど短いです。
眼軸長1mmで約3.00Dとはいえ、正視眼の成人を逆算して新生児で21D(3.00[D]×7[mm]=+21[D])の遠視眼である・・・という訳ではありません。
新生児から成人になるにつれ眼軸は伸展し近視化が起こりますが、角膜と水晶体の屈折力は弱く変化しますので屈折系(角膜と水晶体)では遠視化が起こります。
その屈折変化は、バランス良く正視化になるように働きます(正視化現象)が、眼軸の伸展による影響が強い(1mmで約3D)為に、過度に伸展しますと強度近視(−6.00D超~−10.00D以下)や最強度近視(−10.00D超~−15.00D以下)・・となります。
60.成人の場合、強主経線の方向はどの方向へと変化する傾向にありますか?
【解説】
倒乱視化される理由の1つとして、角膜の形状(角膜乱視)が変化する事であり、眼瞼圧が加齢により減少する影響(左右眼での乱視軸や度数の対称性との関係性など・・)だと考えられております。
幼児期に多い倒乱視は、20歳ぐらいまでは減少し直乱視化する傾向にあり、20歳ぐらいを過ぎると60歳頃までは倒乱視化がみられます。
倒乱視化が起こる場合の、乱視軸方向の変化(計算上)をいくつか挙げてみます。
例1) C−1.00 Ax90°で補正される眼(倒乱視)に、1.00Dの倒乱視化が起こる場合は「C−2.00 Ax90°」となります。倒乱視に倒乱視化で乱視度数が強く変化しています。
例2) C−1.00 Ax30°で補正される眼に、1.00Dの倒乱視化が起こる場合は「C−1.00 Ax60°」となります。倒乱視化により乱視度数に変化は無いが乱視軸が変わります。
- 乱視度数が同じ場合(今回であれば、1.00Dと+1.00D)には、次の法則が成り立ちます。
- 本来の軸度(30°)と、変化しようとする軸度(180°)の、中間の軸度(15°)から45°反対方向に軸度が変化します。つまり、15°から45°増えた60°方向に残余乱視が発生します。
例3) C−1.00 Ax45°で補正される眼(斜乱視)に、1.00Dの倒乱視化が起こる場合は「C−1.41 Ax67°」となります。
- 上の残余乱視でいいますと、45°と180°の中間22.5°から45°ズレた軸度の22.5+45=67.5°方向に残余乱視が発生します。
例2)と例3)の残余乱視の軸度の説明で伝えたい事は、一般屈折測定での完全補正値の乱視軸を故意にずらして正確性を確認できるという事。
乱視軸の測定値が正確である場合には、乱視軸を30°ずつ、時計回りと反時計回りにずらして、それぞれ逆方向に30°(30°の中間15°から45°ズレ)残余乱視が発生するかで確認できます。(⇦放射線視標の30°は、時計で例えると12時-1時の短針1時間の角度)
61.不正乱視となる翼状片は、鼻側と耳側のどちらから侵入することが多いですか?
【解説】
不正乱視とは、主に角膜の表面(稀に水晶体)が凹凸不正の乱視となるもので、Placido角膜計により、同心円が不規則に歪んでいるのが観測されます。例えば、円錐角膜や翼状片、角膜創傷の治療後に確認されます。
- 翼状片(pterygium)は、角膜の瞼裂に相当する部位に肥厚し充血した結膜が三角形に侵入してきます。
- 一般屈折測定では、強い乱視の値が測定されます。
- 原因として、長年のコンタクトレンズ装用や粉塵、紫外線によるものだと考えられております。
通常は瞳孔領にかかる前に切除する事になりますが、非常に再発し易く、再発防止の目的で術後に抗癌薬マイトマイシンの点眼やストロンチウム90の照射などが行われます。
62.角膜の5層を前面から全て挙げよ。
【解説】
角膜(cornea)は、直径約10mmの、無色透明の無血管組織です。ボーマン膜は再生能力が無く、デスメ膜は再生能力があります。
角膜症では、角膜の部位を知る事で疾患の理解が深まります。
例えば、上皮とボーマン膜の間に水疱が出来るものを水疱性角膜炎、角膜上皮に糸状物(filament)が生じるものを糸状角膜炎などがあります。角膜血管新生では、ボーマン膜の上にみられる表在性血管新生(パンヌス)、実質にみられる深在性血管新生があります。角膜が円錐状に膨隆し、不正乱視となる円錐角膜(keratoconus)では、デスメ膜の破裂により実質層に前房水が侵入し混濁していきます。
63.10層で構成される網膜の第4層(外顆粒層)の大部分を占める視細胞は?
【解説】
ヒトの場合には、約1億個の杆体と約700万個の錐体があるといわれております。
明るい所で働く錐体の機能は、詳細な形や色を感覚する事です。
色覚については、赤感受性錐体(L錐体)、緑感受性錐体(M錐体)、青感受性錐体(S錐体)の3種類が、波長の光刺激を受けて色を感じます。
例えば、白色を見た場合には全ての錐体が刺激され、黒色の場合にはいずれの錐体も刺激されません。
64.毛様体筋で、輪状筋、近方視の際に働き、動眼神経(副交感神経)支配なのは?
【解説】
ブリュッケ筋(Brücke muscle)は、縦走筋、遠方視の際に働き、交感神経支配です。
毛様体筋は、輪状筋、縦走筋、斜行筋の3つから成ります。
虹彩筋(瞳孔括約筋は動眼神経支配で縮瞳、瞳孔散大筋は交感神経支配で散瞳)と、毛様体筋を合わせて、内眼筋といいます。
内眼筋は虹彩筋と毛様体筋です。外眼筋は4つの直筋と2つの斜筋があります。
6つの外眼筋の働きを以下に示します。
上図は、例えば、右斜め上を見る時には、右眼は上直筋、左眼は下斜筋が働く事を示します。
また、上図は、正面視を第一眼位といいますが、例えば、内方回旋の働きがあるのは、上直筋と上斜筋という事を示します。
65.角膜の直乱視と水晶体の倒乱視(−0.50D Ax90°)から全乱視を推定するJaval’s ruleで、角膜乱視が−1.00D Ax180°の場合の全乱視は?
【解説】
ジャバルの公式は、
【 1.25×(角膜乱視) + (−0.50D Ax90°) = (全乱視) 】です。
角膜乱視が−1.00D Ax180°の場合の全乱視は、
1.25×(−1.00D Ax180°)+(−0.50D Ax90°)
=−1.25D Ax180°+0.50D Ax180°
=−0.75D Ax180°
角膜乱視が180°の場合の全乱視は減りますし、90°の場合には増えます。
66.失明の原因疾患1位の緑内障ですが、近視度数が強くなる程に頻度が高くなり、隅角の機能が悪く房水の排出が障害される緑内障を?
【解説】
- 開放隅角緑内障(POAG)は、隅角が広いが機能が悪い為に房水の排出が障害されているものです。通常は、前房が深い。
- 閉塞隅角緑内障(PACG)は、隅角が狭いという構造上の異常で房水の排出が障害されています。通常は、前房が浅い。
毛様体で房水が産生されますが、房水の産生量よりも流出量が少ないと高眼圧緑内障となります。
正常眼圧(多数の健常眼から統計的に得た眼圧)でも、その人の健常眼圧(その眼の機能障害を起こさない眼圧)を超えると視機能障害を起こします。これを、正常眼圧緑内障(NTG)といいます。
一方で、正常眼圧を超えていても視機能障害を起こさない状態を高眼圧症といいます。
67.網膜剥離や裂孔、緑内障、白内障の要因となる屈折異常は?
【解説】
強度近視では、後部ぶどう腫という特殊な眼球形状、硝子体皮質、内境界膜、網膜血管などにより網膜が牽引される事が網膜剥離に関与すると考えられております。
強度近視は、開放隅角緑内障の頻度も高く、後極白内障が特徴であり、網膜脈絡膜萎縮を伴いやすくなります。白内障の全体的割合では皮質性白内障が多いものの、強度近視では特に核白内障を伴う事が多くなります。
68.屈折性不同視眼と軸性不同視眼では、Knapp(ナップ)の法則から眼鏡補正による不等像視の発生が少ないのはどっち?
【解説】
ナップの法則とは、補正レンズを後頂点位置と眼の第一焦点が一致するように装用すると、Shape factor(レンズの中心厚などによる要因)を無視した場合には、軸性屈折異常に対しての網膜像の大きさは変わらないという法則です。
眼鏡の像倍率(Spectacle Magnification)は以下の公式があります。
つまり、パワーファクターのみを考慮し、装用距離12mmと入射瞳約3mmを足した約15mmの位置で眼鏡を装用した際には、軸性の屈折異常眼での網膜像は正視眼と同じになるという事を示しています。
しかし、実際には、様々な要因が複雑に影響しますので、結局は軸性でも屈折性でもコンタクトレンズでの補正が良いという考えもあります。
69.調節力が8.00D、眼鏡度数S+3.00Dで完全補正される遠視眼の、裸眼での明視域と調節域は?
【解説】
眼鏡の装用距離を無視した場合には、
単純に【 D=1/f 】、もしくは【 f=1/D 】で計算すれば良いです。
無限遠方を明視する為に、約+3.00Dの調節力を使用し、残りの5.00Dの調節力で近方を明視します。
- 遠点は、1/+3.00≒0.333[m]
- 近点は、1/(8.00−3.00)=0.2[m]
特に、設問では装用距離を何ミリでという条件はありませんでしたが、日本で一般的な12mmである場合には数字的に違いが出てきます。装用距離が離れるほどに凸方向に補正度数が変化し、逆に近づくほどに凹方向に度数が変化するからです。
例えば、コンタクトレンズと眼鏡の度数が異なる原因の1つが、この装用距離による違いです。
近方視が困難になってきたシニアグラス(老視用の眼鏡)の装用距離を離すと、以前のように近方が見えやすくなる理由と同じです。
この度数の違いは、公式【 D/(1−d[m]×D) 】から計算できます。
眼鏡度数S+3.00D(装用距離12mm)で完全補正されるという事は、眼の屈折要素は−3.00より強いという事です。
実際に計算しますと、
(+3.00)/{1−0.012×(+3.00)}≒3.1120[D]
となり、約+3.11[D]の遠視眼である事がわかります。
別解】 S+3.00[D]の焦点距離が1/3=約33.3[cm]である事から、以下の図のように考えて、
1/{1/3−0.012}=750/241≒3.1120[D]と計算しても良いです。
注】 焦点距離1/3を0.333として計算すると誤差が出ますので、分数のまま計算しましょう。
因みに、設問の「調節力8.00[D]」はおよそ20代です。
そして、近点が眼前20cmとはいえ、最大調節力での明視は維持するのが辛く長時間では疲れます。作業距離20cmは明視できますが負担も最大ですね。
70.調節力が2.00D、S−5.00Dで完全補正される近視眼の、二重焦点レンズ度数S−5.00D Add+2.50の眼鏡装用でのおおよその明視域は?
【解説】
- 二重焦点レンズ:
- 遠方部での遠点~近点は、
- 無限遠方~1/2.00[D]=0.50[m]です。
- 近方部での遠点~近点は、
- 1/2.50[D]=0.40[m]~1/(2.50+2.00)=1/4.50≒0.222[m]です。
- 遠方部での遠点~近点は、
つまり、眼前50cm~眼前40cmは明視できません。
71.自身の調節力2.00Dの半分を使用し、S−5.00Dで完全補正される近視眼の、二重焦点レンズ度数S−5.00D Add+2.50の眼鏡装用でのおおよその明視域は?
【解説】
- 二重焦点レンズ:
- 遠方部での遠点~近点は、
- 無限遠方~1/1.00[D]=1.00[m]です。
- 近方部での遠点~近点は、
- 1/2.50[D]=0.40[m]~1/(2.50+1.00)=1/3.50≒0.286[m]です。
- 遠方部での遠点~近点は、
つまり、半分の調節力では、眼前100cm~眼前40cmは明視できません。(最大の調節力を使用しても眼前50cm~眼前40cmは明視できません。)
- 明視域:最大の調節力を使用
- 無限遠方~眼前50cm、眼前40cm~眼前22.2cm
- 実用明視域:半分の調節力を使用
- 無限遠方~眼前100cm、眼前40cm~眼前28.6cm
最大調節を長時間維持するのは疲れますので、快適に長時間の近業作業をするためにには、およそ自身の調節力の半分(実用調節量)を目安に処方すると良いです。
二重焦点レンズの良い点は、累進多焦点レンズと比べて周辺部の歪みが無く視界が広く、明視するレンズ位置がわかりやすい事です。
72.自身の調節力2.00Dの半分を使用し、S−5.00Dで完全補正される近視眼の、二重焦点レンズ度数S−5.00D Add+1.50の眼鏡装用でのおおよその明視域は?
【解説】
加入度数を必要以上に強く処方する事でのデメリットが多くあります。明視する事が出来ない距離が存在してしまうことも、デメリットの1つです。
- 仮に、自身の最大調節力を使用した際の明視域は、
- 遠方部では、無限遠方~眼前50cmとなり、
- 近方部では、眼前66.7cm~眼前28.5cmとなります。
適正な加入度数にする事で、明視できない距離が無くなります。
累進多焦点レンズでも同様に、『近方が見えないから強く処方して欲しい』というお客様の話をそのまま素直に加入度数を強くしていくのはお勧めしません。
〇が書かれた鏡を使用した『ミラー法』や、顎を上げてもらう等の方法で近方視線を確認しましょう。
また、近用度数の処方を弱く下げる(加入度数を強くする)ほど、明視可能な距離の幅が狭くシビアになります。
例えば、S−5.00Dで完全補正される近視眼(調節力2.00とする)に、近用眼鏡処方として2つの例を挙げます。
- 眼鏡処方をS−3.50Dとした際の明視域:
- 眼前66.7cm~眼前28.6cmであり、その幅は38.1cm。
- 眼鏡処方をS−3.00Dとした際の明視域:
- 眼前50.0cm~眼前25.0cmであり、その幅は25cm。
このように、距離の幅自体が小さくなります。また、像が拡大される事により視野が狭くもなりますので、より顔を動かす必要がでます。これもデメリットです。
73.遠点が眼後66.7cm、近点が眼前12.5cmの人の調節力は?
【解説】
- 遠点から、f遠=1/0.667≒1.499[D]
- 近点から、f近=1/0.125≒8.00[D]
遠点が眼前ではなく、眼後である事から遠視眼です。無限遠方視の為に1.499[D]使用し、近見で更に8.00[D]使用できることから、これらを足し合わせた値が調節力ですので1.499+8.00≒9.50[D]となります。
調節力テストは、「マイナスレンズ付加法」と「ドンダーズのプッシュアップ法」などがあります。
- マイナスレンズ付加法:
- マイナスレンズ付加による視標の縮小の為に調節力過小評価になり易くなります。
- プッシュアップ法:
- 相対距離拡大により網膜像が拡大される事で調節力が大きめに測定される傾向になります。
そして、調節力テストの値が正常でも、全体的に調節が機能していない事もあります。
74.Donder’s(ドンダース氏)の表から予想される50歳の調節力はどの位?
【解説】
年齢と調節力の関係を示した研究は様々あります。石原氏、福田氏、Donder’s、Duane、Hofstetterなどが有名です。
以下に石原氏とドンダーズ氏のデータを並べて表に示します。調節力は減衰するものであり、このような差が出てしまうのは仕方がない事ですが、測定時の参考になります。
Hofstetterは、以下に示す『ホフステッターの公式』として、年齢による調節力との関係性でも広く知られております。
- (平均調節力)=18.5−0.3×(年齢)
- (最小調節力)=15−0.25×(年齢)
75.標準視標であるLandolt(ランドルト)環は最小〇〇閾?
【解説】
閾値とは、境界となる値の事です。
視力は、眼の解像度の閾値で表します。「最小分離」で表す他に、「最小可読」、「最小視認」、「副尺視力」などがあります。
Landolt環の他に、Ferree-Rand環、Snellen鉤、井上鉤、Bostrom鉤、ローマ字視標、市松模様視標などもあります。
76.ある正視眼の被検者が測定距離5mで、ランドルト氏環の直径15.0mmより小さい視力表を正読できない場合、小数視力は?
【解説】
視力は、視角[分]の逆数で表されます。
例えば、視角1分[ ′ ]を視力1.0とします。
視角2′では視力0.5となり、視角5′では視力0.2となります。
ランドルト氏環の直径が15.0mmという事は、上図より視角が2分となりますので視力は0.5となります。
以下の公式で視力を求める事ができます。
- 小数視力=7.5÷(直径)
- 小数視力=1.5÷(幅)
小数視力とLandolt環の大きさは以下の表に示します。
77.測定距離5mでランドルト氏環の直径7.5mmが正読可能である場合、3mでの距離に換算すると直径何ミリの視力と同等といえますか?
【解説】
5m視標で直径7.5mm、幅1.5mmの分離が判別できる際の視力は1.0です。
仮に3m視標を作製する際には、下図のように、5m視標の5分の3の大きさでランドルト環を作ると良いという事になります。
4m視標であれば、5分の4の大きさという事になります。
但し、近距離になると相対距離拡大により網膜像が拡大され見えやすくなります。つまり、3m視標の方が良い視力と判断されやすくなります。例えば、運転免許の更新用で3m視標で両眼視力0.7の眼鏡でも、5m視標で0.7の視力が無い場合もあり得ます。
78.5m距離用の0.5視標を、3mで判別できた人の視力は?
【解説】
0.5[視標]×3/5[m]=0.3[視力] となります。
以下に、視力に対するランドルト環の直径を、5mと3mで表にしたものを示します。
上図で、例えば視力0.5のランドルト環の直径は、5m距離用では直径15mm、3m距離用では9mmとなります。また、視力0.3では、5mは25mm、3mでは15mmとなります。
つまり、5m用の視力表を3mで見せた時の、0.5視標は視力0.3となります。
- 5m用の2.0視標は、3mでは視力1.2
- 5m用の1.5視標は、3mでは視力0.9
- 5m用の1.0視標は、3mでは視力0.6
- 5m用の0.5視標は、3mでは視力0.3
- 5m用の0.1視標は、3mでは視力0.06
0.1以下の視力測定の場合、5m用の0.1視標を近づけて見える距離で測定することができます。
- 5m用の0.1視標は、5mでは視力0.1
- 5m用の0.1視標は、4mでは視力0.08
- 5m用の0.1視標は、3mでは視力0.06
- 5m用の0.1視標は、2mでは視力0.04
- 5m用の0.1視標は、1mでは視力0.02
- 5m用の0.1視標は、50cmでは視力0.01
また、それでも見えない場合には、30cmの距離で指の本数が判別可能か測定します。それを指数弁といい、30cm指数、30cm/n.d.(n.d.=numerus digitorumの略)と表記します。
それでも判別不可の場合には、手動弁(眼前手動、m.m.=motus manus)、明暗(光覚)弁(s.l.=sensus luminis)、全盲(0)となります。
79.LogMAR=1.0の視力は、小数視力でいくつ?
【解説】
LogMAR視力とは対数視力の事です。MAR ( Minimum Angle of Resolution )とは、最小可視角の事です。対数視力と小数視力は以下の関係性があります。
- Log MAR=Log (視角)=Log (1/視力)
Log MAR=1.0 の場合、1.0=Log10(101) であり、101の部分が視角となります。視角10分の視力は、小数視力=1/10=0.1となります。
◎対数の復習ですが、以下の関係が成り立ちます。
- x=10y
- y=log10x
また、それぞれをグラフにしますと、以下のようになります。
「y=10x」と「y=log10x」は「y=x」に対して対称になります。
LogMAR視力1.0は小数視力0.1ですが、視力を対数で表記する良い点は、視力の間隔と大きさの間隔が等しくなる事です。その為、視力の良し悪しに関わらず、等しく比べる事ができます。
小数視力の場合には、低視力の場合には通常視力と等しく比べる事ができません。例えば、以下のように小数視力0.1と0.2の大きさの差は、小数視力0.9と1.0の大きさの差は等しくありません。
LogMAR視力表の場合には、大きさが約1/1.26倍(1010/2倍)と一定となります。
以下に、視力0.1間隔の小数視力とLogMAR視力を比較したものを示します。
80.黄斑部中心窩に結像した場合に視力が良好となる理由は?
【解説】
中心窩の錐体は、1つの双極細胞および1つの神経節細胞と1:1で連絡します。周辺部の錐体では、1つの双極細胞に多数の錐体あるいは桿体が連絡し、更には、この双極細胞のいくつかが1つの神経節細胞と連絡します。その為、中心窩からズレると視力は急激に低下します。
中心から2°ズレると、およそ視力1.0が0.5となり、5°ズレると視力は0.3、10°ズレると視力0.2、20°ズレると視力0.1になるともいわれます。例えば、網膜対応異常の場合には視力が出づらくなります。
81.普通第一種免許の更新時、片眼視力0.3未満、若しくは片眼が見えない場合の条件は?
【解説】
普通第一種免許の更新では、ランドルト環視標で、片眼視力0.3以上、両眼視力0.7以上が必要となります。
片眼視力0.3が出ない場合には、他眼の視力が0.7以上で視野が150°以上の条件を満たす事で、更新自体は通ります。
しかし、個人的には、状況判断能力の低下などもあり得ますので免許更新が通りさえすれば良いという甘い考えは辞めて欲しいです。年齢と共に、一般的には視力の低下は起こります。しかし、80歳の1割程度の方は視力1.0あるともいわれております。
コメント メールアドレスが公開されることはありません。*が付いている欄は必須項目です。