クロスシリンダー法のやり方

一般消費者、眼鏡作製技能士を志す方に向けて

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乱視の測定には『パスカル (Pascal. J. I)』と『コーポランド(Copeland. J. C)』の方法があります。

  • パスカル (Pascal. J. I)の測定法
    • 乱視度数を増加することのみを考えた方法
    • 乱視ゼロの状態から測定開始
    • 調節休止状態で最小錯乱円視をさせる
  • コーポランド(Copeland. J. C)の測定法
    • 乱視度数を減少することのみを考えた方法
    • 他覚測定値(又は、眼鏡度数)から測定開始
    • マイナス乱視度数を減らすことを考慮し、遠視状態にすることで調節させ最小錯乱円視をさせる
    • 調節力が無い人には適用付加

手持ちクロスシリンダー

先ずは、手持ちクロスシリンダーですが、例えば、以下のようなものです。

クロスシリンダー(±0.25D)

手持ちクロスシリンダーには、度数(±0.25Dや±0.50D、±0.75D、±1.00D)、黒と白の〇、赤と黒の〇や線、手持ち柄の方向に線があるものや図のように白〇があるものなど様々な種類があります。

実際に使用される前には、どこに度数が入っているのかを確認しましょう。

クロスシリンダーレンズの度数

しかしながら、基本的には円柱軸のプラスとマイナスが直交するような構造になっており、手持ちを回転させる事で乱視が90°反転します。

最小錯乱円の位置を変えずに、前焦線と後焦線の位置をそれぞれ近づけたり遠ざける方向に移動させる事ができます。

その結果、最小錯乱円の大きさが小さく変化したり、大きく変化したりします。

コーポランドによる乱視測定の手順

クロスシリンダーテスト法による測定の流れです。(※一例です)

  1. 問診(測定の方向性を決める)
  2. 遠用ハーフPDを測定します(定規やPDメーターなどで)
  3. 裸眼視力、眼鏡装用視力を測定します(視力から完全補正値を予想)
  4. 視線の確認
    • 輻輳近点テスト・・鼻の付け根から8cm以内での分離(ぼやけでは無く複視)
    • カバーテスト・・カバー・アンカバーテスト、交互カバーテスト
    • 眼球運動テスト・・眼前30cmで約30cmの正方形、単眼運動と両眼共同運動と両眼離反運動(本検査で詳しく測定する為、一般的には予備検査では行わない)
  5. オートレフラクトメーターなどの他覚屈折測定値、もしくは旧眼鏡度数を仮枠にセットします(仮枠のPDを合わせるのを忘れずに)
  6. 左眼を遮蔽し、右眼の測定する
  7. RG視標を呈示し『R=G』になるように球面度数を合わせます(又は、視力表にて『最高視力』が出る最もプラス寄りの度数:M+BVA
  8. 球面度数S−0.50Dを両眼共に加え、R<G寄りにする(あえて調節させ最小錯乱円視させる:コーポランド)
  9. クロスシリンダー用視標を呈示する(0.3のランドルト環で代用しても良い)
  10. 乱視の有無を確認する
    • 他覚値(又は眼鏡度数)に乱視が無い場合
      1. 手持ちクロスシリンダーの柄を45°(又は135°)にして反転させた前後で、見え方の差を尋ねる
        • ある場合には、はっきり見える面の赤印にC−0.25Dが付与されるようにC−0.25D Ax180°(又はAx90°)のレンズを仮枠に入れ⇨手順11の乱視軸測定ヘ
        • 無い場合には⇨次の手順へ(別の乱視軸方向で確認)
      2. 手持ちクロスシリンダーの柄を90°(又は180°)にして反転させた前後で、見え方の差を尋ねる
        • ある場合には、はっきり見える面の赤印にC−0.25Dが付与されるようにC−0.25D Ax45°(又はAx135°)のレンズを仮枠に入れ⇨手順11の乱視軸測定ヘ
        • 無い場合には、『乱視無し』と判断⇨手順13(調節緩解処置)へ
    • 他覚値(又は眼鏡度数)に乱視が有る場合⇨そのまま手順11へ
  11. 乱視軸の測定
    1. 手持ちクロスシリンダーの柄方向を、マイナス円柱レンズの軸方向に合わせて反転させた前後で、見え方の差を尋ねる
    2. はっきり見える面があれば、その時に赤印寄りにある経線方向に仮枠に挿入されている円柱レンズ軸を回転させていき、反転前後で同じ見え方になるまで何回か繰り返す(回す角度は10°、戻す時は5°・・など)
  12. 乱視度数の測定
    1. 手持ちクロスシリンダーの赤印(又は黒印)を、マイナス円柱レンズの軸方向に合わせて反転させた前後で、見え方の差を尋ねる
    2. はっきり見える面があれば、その時に赤印がマイナス円柱軸と90°垂直方向にある場合にはC−0.25を増加させる(円柱軸方向と垂直方向に度数が入る為)、黒印の場合にはC−0.25Dを減少させる
      • 常に最小錯乱円視させる為、等価球面度数が同じになるようにする。
      • 例)C−0.25増加⇨C−0.25増加とS+0.25増加
      • 例)C−0.25減少⇨C−0.25増加⇨C−0.25増加⇨C−0.25増加とS+0.25増加
  13. 調節緩解処置として、枠に挿入されている球面度数にS+1.00Dを加えたレンズをセットする。
  14. RG視標を呈示し、S−0.25Dステップで増加しR=G(R<Gの1つ前の球面度数)にする。(もしくは直接、視力表にてM+BVA(最もプラス寄りの最高視力がでる度数)を求める)
  15. 補正視力の測定をする
  16. ※反対の左眼も同様に測定し、※両眼視力の測定をする

上記の測定手順11~12の具体例

S−0.50 C−1.00 Ax30°で補正される近視眼の場合です。

つまり、眼の屈折要素は『S+0.50 C+1.00 Ax30°』です。

S+0.50 C+1.00 Ax30°

ⅰ.先ずは、乱視軸の測定です。

仮枠には『S−1.00 C−0.75 Ax180°』でセットしているとします。

S−1.00 と C−0.75 Ax180°
S−1.00 C−0.75 Ax180°

『眼の要素』を『補正レンズ』で補正した状態(2つを足し合わせた状態)は次のようになります。

S+0.50 C+1.00 Ax30°とS−1.00 C−0.75 Ax180°の合成レンズ

被検者は調節しようとします。

つまり、M+BVAの状態から余分に加えた『0.50D』と、乱視の未補正度数『今回は0.125D』の調節をすることで最小錯乱円視をしている状態となります。

最小錯乱円視での未補正度数

それでは、実際にクロスシリンダーを振っていきます。

今の段階では、『S+0.50 C+1.00 Ax30°』という眼の屈折要素に対して、仮枠には2枚のレンズ(『S−1.00』と『C−0.75 Ax30°』)が挿入されている状態です。

S−1.00 と C−0.75 Ax30°

以下のように『クロスシリンダーの手持ち柄を円柱レンズの軸である180°』に合わせ、①番・②番と反転させます

『未補正レンズ度数(残余乱視)』と『クロスシリンダーの①と②』を合成した未補正はそれぞれ以下の様になります。

最小錯乱円視での未補正度数
クロスシリンダーの手持ち柄を180°に合わせ、反転させた①番・②番
反転させた①番と②番での、それぞれの未補正度数

上の図から、②番の方が見えやすい筈です。

仮枠に挿入されている円柱レンズの軸方向を、マイナス円柱軸方向(赤い線の方向)に10°回転させます

つまり、『S−1.00 C−0.75 Ax180°』から『S−1.00 C−0.75 Ax10°』にします。

未補正レンズ度数も、以下のように少し変化します。

補正レンズの円柱軸を180°から10°に修正、前後の比較

今度は、『クロスシリンダーの手持ち柄を円柱レンズの軸である10°』に合わせ、①番・②番と反転させます。

クロスシリンダーの手持ち柄を10°に合わせ、反転させた①番・②番
反転させた①番と②番での、それぞれの未補正度数

今度も上の図から、②番の方が見えやすい筈です。

仮枠に挿入されている円柱レンズの軸方向を、マイナス円柱軸方向(赤い線の方向)に+10°回転させます

つまり、『S−1.00 C−0.75 Ax10°』から『S−1.00 C−0.75 Ax20°』に更に回転させます。

未補正レンズ度数も、以下のようにまた少し変化します。

補正レンズの円柱軸を10°から20°に修正、前後の比較

同様に、『クロスシリンダーの手持ち柄を円柱レンズの軸である20°』に合わせ、①番・②番と反転させます。

クロスシリンダーの手持ち柄を20°に合わせ、反転させた①番・②番
反転させた①番と②番での、それぞれの未補正度数

今度もまた上の図から、②番の方が見えやすい筈です。仮枠に挿入されている円柱レンズの軸方向を、マイナス円柱軸方向(赤い線の方向)に+10°回転させます

つまり、『S−1.00 C−0.75 Ax20°』から『S−1.00 C−0.75 Ax30°』に回転させます。

未補正レンズ度数も、以下のようにまた少し変化します。

補正レンズの円柱軸を20°から30°に修正、前後の比較

同様に、『クロスシリンダーの手持ち柄を円柱レンズの軸である30°』に合わせ、①番・②番と反転させます。

クロスシリンダーの手持ち柄を30°に合わせ、反転させた①番・②番
反転させた①番と②番での、それぞれの未補正度数

今度は、①番と②番のボヤケ具合は同じになりました。

つまり、『マイナス円柱レンズの補正軸は30°付近である』という事ができます。

補正軸は30°でほぼ決まりですが、念の為、マイナス円柱軸方向(赤い線の方向)に更に+10°回転させ確認していきます。

『クロスシリンダーの手持ち柄を円柱レンズの軸である40°』に合わせ、①番・②番と反転させます。

①番と②番での未補正度数は以下のようになります。

上の図から、①番が濃くはっきり見える筈ですので、補正軸を5°戻します。

『クロスシリンダーの手持ち柄を円柱レンズの軸である35°』に合わせ、①番・②番と反転させます。

①番が濃くはっきり見えるという事で、補正軸を5°戻します。

先ほど、仮で決定した円柱軸30°と一致しました。

再び、『クロスシリンダーの手持ち柄を円柱レンズの軸である30°』に合わせ、①番・②番と反転させますと、ぼやけ具合が同じという事で補正軸30°に決めます。

この状態での仮枠には『S−1.00 C−0.75 Ax30°』が装用されている状態となります。

ⅱ.続いて、乱視度数の測定です。

『S−0.50 C−1.00 Ax30°』で完全補正される眼に、
『S−1.00 C−0.75 Ax30°』が装用され、調節により最小錯乱円視している以下のような状態です。

では、実際に乱視度数を測定していきます。

『クロスシリンダーのマイナス軸を、装用している軸方向の30°(クロスシリンダーの手持ち柄は75°)』に合わせ、①番・②番と反転させます

マイナス軸を30°に合わせ、反転させた①番・②番
反転させた①番と②番での、それぞれの未補正度数

上図から、①番の方が濃くはっきりと見えます。

はっきり見える①番は、クロスシリンダーのマイナス軸が30°と重なる時ですので、『C−0.25 Ax30°』を増やし、『C−1.00 Ax30°』とします。

再度、『クロスシリンダーのマイナス軸を、装用している軸方向の30°(クロスシリンダーの手持ち柄は75°)』に合わせ、①番・②番と反転させます。

マイナス軸を30°に合わせ、反転させた①番・②番
反転させた①番と②番での、それぞれの未補正度数

①番も②番も同様の見え方になります。

よって、乱視度数が決まりました。

もし仮に、①番がはっきり見えるという回答があった場合には、C−1.25 Ax30°にしますが、網膜上に最小錯乱円がある状態を維持させる為、S+0.25Dを一緒に仮枠に装用させなければなりません。

C−0.50D を付加する毎に、S+0.25D を付加します。
C+0.50D を付加する毎に、S−0.25D を付加します。

(例)
C−0.75(起点)⇨C−1.00⇨
C−1.25とS+0.25⇨C−1.50とS+0.25⇨
C−1.75とS+0.50⇨C−1.50とS+0.25

偏光RG法による両眼バランスの測定手順

  • 単眼視でのバランステスト
    • 交互遮蔽法
    • プリズム分離法
    • レッドグリーン視標による方法
    • クロスシリンダーを用いる方法・・など
  • 両眼視によるバランステスト
    • 偏光レッドグリーンテスト
    • 偏光視標によるバランステスト
    • ターヴィルの方法(約6cmの遮蔽板を使用する方法)
    • ハンフリスの方法(測定する反対の眼にS+0.75D付加した両眼開放測定)・・など
  • 偏光RGによる両眼バランスの測定手順
    1. 偏光フィルターをセットし、右眼で上の視標が見え、左眼で下の視標が見えているかを尋ねます。
    2. 両眼で4つの視標がちらつかないかを尋ねます。
    3. 上の視標(右眼)の、赤側と緑側の◎か数字を比較してもらい濃く見える方を尋ね、R=Gになるように球面度数を変えます。
    4. 下の視標(左眼)も同様に行いR=Gにします。
    5. 偏光フィルターを外し、両眼にS+0.50D程度雲霧します。
    6. 視力表を呈示し、両眼にS−0.25Dステップで付加していき最高視力がでる最もプラス寄りの度数を求めます。

交互遮蔽法によるバランステストの測定手順

単眼視でのバランステストです。

その為、左右の屈折補正視力が等しい場合にのみ測定が可能となります。

また、斜位がある場合には、遮蔽する度に視標が上下左右に移動するという訴えが起こります。

  • 交互遮蔽法による単眼バランステストの測定手順
    1. 両眼視力が0.5が辛うじて見えるように、球面度数S+1.00Dほど付加する
    2. 左右眼を交互に遮蔽し、良く見える方の眼があるかを尋ねます。
    3. 良く見える方があれば、S+0.25Dを加えていき左右同程度にします。
      • 良く見える方の眼が無い場合には、左右それぞれS+0.25Dを付加し、付加しなかった逆の眼が見えやすいかを確認する。
    4. バランスがとれたら、両眼同時に雲霧を解いていき、M+BVA(最もプラス寄りの最高視力がでる度数)を求めて終了

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