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➄では、問55~問64までの解答と解説です。
当然ですが、眼の事を学習していくと専門用語が沢山でてきます。
今まで知らなかった事がわかるようにもなります。
いつの間にか、難しいと感じていた『専門用語』も当たり前のように感じてくるという変化が起こります。
『変化にはストレスが付き物』ですが、現場でお客様に接する時にも自分の変化に気付く事があります。
インフォームドコンセントが大切という考えである筆者は、眼鏡の使用方法など以外にも、近年増えているPC作業などに対する姿勢やモニター位置、画面反射などなど・・『眼鏡マネジメント』も一緒にします。
その説明をする時に、専門用語が先ず頭に浮かんできます。
伝わらなければ全く意味がありませんので、お客様の理解度に合わせて専門用語を使ったり使わなかったりと・・。
最近のストレスは、『専門用語』を『日常用語』に変換する作業です。
有難いことに、どこで聞いたか調べたのか、『〇〇さんという方がいらっしゃると聞いたんですけど・・』と指名を受けることが増えました。
そういう方の多くは、『以前の眼鏡に何らかしらの不満』を抱えており、いつもの倍のお時間を頂戴してしまいます。
感謝されるのも倍で、とても有難いです。
フレーム選択時だけが接客ではなく、測定や眼鏡調整も接客に含まれると考えております。
測定時間が掛かっても特に問題なしと考えている筆者は、量販店では少数派かもしれません。
『ご指名される事』に驕れずに精進して参りますので、これからもよろしくお願いします。
問55.治療に遠視眼鏡を用いない疾患はどれか。
- 真性小眼球
- 隔日性内斜視
- 屈折異常弱視
- 屈折性調節性内斜視
- 両眼先天白内障術後
正解・・2
◎ 膈日性内斜視(周期性内斜視)では、48時間の隔日性周期で内斜視が出現する傾向があります。
隔日性外斜視でも同様に、48時間周期で外斜視が出現する傾向があります。出現頻度は、内斜視に比べて低いといわれます。
周期性斜視では、斜視の手術治療となります。
◎ 真性小眼球とは、生まれつき眼球が小さい遺伝性の疾患とされておりますが、多くの原因は不明です。
小眼球症では、角膜や水晶体、網膜などの発生異常に伴い発達障害が起こりやすく、その程度は様々です。
遠視眼鏡による弱視治療の他、多種多様の合併症に注意が必要となります。
◎ 屈折異常弱視とは、両眼とも遠視度数が強い為に視力の発達がせずに弱視となったものです。
近視では、視物を近づけると網膜に像を結びます。その為、屈折異常による弱視となる事は殆どないとされます。
片眼の遠視度数が強く、その眼が使われずに弱視となるものは不同視弱視です。
◎ 屈折性調節性内斜視では、遠視度数による屈折異常による、調節性輻輳での内斜視となるものです。AC/A比(調節性輻輳量/調節刺激の比)は正常です。
非屈折性調節性内斜位では、AC/A比が高い為に起こる近方内斜視です。
◎ 両眼先天白内障術後では、眼内レンズを用いない場合(幼児では度数が変わる為)には、無水晶体眼となります。
問56.プリズム眼鏡で治療するのはどれか。
- 外方回旋斜視
- 下斜筋過動症
- 後天上下斜視
- 後天固定内斜視
- 屈折性調節性内斜視
正解・・3
眼鏡のプリズム補正では、フレネル膜プリズムにて40Δまで可能です。
外方回旋斜視では、上下斜視に伴う回旋斜視は眼鏡補正できても、そのものを治療する事はできません。
上下筋過動症とは、両眼での眼球運動時に上下方向の眼球偏位が見られるものです。例えば、下斜筋過動症(左眼)では、右方視時に左眼が上転します。
後天固定内斜視では、眼球が上直筋と外直筋により挟まれることで生じ、上転および外転が制限され、内転位で固定された状態です。眼軸が延長された強度近視に伴うことが多く、外直筋と上直筋を結合するなどの手術による治療となります。
◎ 屈折性調節性内斜視では、AC/A比は正常ですが、屈折異常に関係がある調節性の内斜視ですので、先ずは遠視度数の屈折異常を補正します。
1ヶ月~2ヶ月後位に解消する事が多く、成長と共に遠視度が減少していくこともあります。3割程は手術が必要となります。
問57.形態覚遮断弱視について正しいのはどれか。
- 3歳以上で起こる。
- 予後は良好である。
- 弱視治療が奏功する。
- 両眼視機能は良好である。
- 白内障や重度の眼瞼下垂が原因となる。
正解・・5
形態覚遮断弱視では、3歳までの時期に、先天白内障や眼瞼下垂、角膜混濁、眼帯装用などによる形態覚の遮断が原因となります。
予後は、他の機能弱視に比べて悪いとされます。
原因疾患の早期手術と、その後の迅速な視力管理を行うことで視機能改善に期待を持つ事はできます。
問58.アトロピン硫酸塩による遮閉訓練について正しいのはどれか。2つ選べ。
- 副作用はない。
- 両眼視は不可能である。
- コンプライアンスを問う必要はない。
- 弱視眼の近見視力は 0.2 以上必要である。
- 絆創膏型遮閉具に比べ患児のストレスが低い。
正解・・4、5
薬物による『ぺナリゼーション法』では、不同視弱視の健眼を遮蔽する代わりに調節麻痺剤を点眼(+凸レンズ装用・・等)する方法です。
コンプライアンスはとても重要です。
薬物に対しての服薬順守の他、患者とそのご家族の協力が弱視治療の成否に影響します。
アイパッチの装用時間を指示された通りに実行できた患者さんは半数以下というアンケート調査もあり、ペナリゼーションの是非(健眼遮蔽との比較、点眼回数など・・)を議論する事と同様に、重要と考えます。
問59.光学的視能矯正について正しいのはどれか。
- 近視進行抑制には過矯正眼鏡が適している。
- 円錐角膜にはソフトコンタクトレンズが適している。
- 中近累進屈折力レンズは近用部が広く設計されている。
- 開散麻痺では遠見での基底内方プリズム眼鏡を装用する。
- 非屈折性調節性内斜視では 3.00D 付加の二重焦点眼鏡を装用する。
正解・・5
◎ 非屈折性調節性内斜視とは、屈折異常に関係なくAC/A比が高い為に起こる近方内斜視(輻輳過剰)です。
通常、エグゼブティブ型(EX型)による眼鏡矯正をしますが、EX型レンズは重く下がりやすく、装用困難となる事もあります。
その際には、ストレートトップの方が良い場合もあります。
問60.乳児内斜視と外転神経麻痺との鑑別に有用なのはどれか。2つ選べ。
- Bielschowsky 頭部傾斜試験
- Parks の 3step 法
- 人形の眼現象
- 牽引試験
- 遮閉試験
正解・・3、5
乳児内斜視とは、生後6ヶ月以内で発症する交代性内斜視です。
◎ Bielschowsky(ビールショウスキー)頭部傾斜試験では、麻痺眼側に頭部を傾ける事で上転が増加する滑車神経(上斜筋)麻痺を検出する試験です。
◎ Parksの3step法では、第1眼位、第2眼位、頭部傾斜の眼球運動から麻痺筋を検出する方法です。
◎ 人形の眼現象とは、頭部を上下左右で急激に動かした時、正面を見ようと動かした反対方向へと眼球が動く現象です。
外転神経麻痺では、外転しません。
正常では、この眼球頭位反射があります。異常では、脳幹や中脳の障害が疑われます。
◎ 眼球牽引試験とは、眼球運動に障害がある場合、眼筋麻痺の鑑別で行います。眼球を麻酔させた後にピンセットで牽引し、その抵抗の強さで鑑別します。
◎ 遮蔽試験では、第1眼位での検査が中心となりますが、水平3方向(頭部を左回転、正面、右回転)や垂直3方向(顎を出す、正面、顎を引く)のカバーテスト、5方向カバーテストも有用です。
動眼神経麻痺では、外転以外の動きが制限される為に不向きです。
その場合には、角膜反射で斜視角を定量検査する、Hirschberg(ヒルシュベルグ)法やKrimsky(クリムスキー)法が検査の中心となります。
問61.不同視弱視の視能訓練を計画する上でまず行うべき訓練目標はどれか。2つ選べ。
- 視力の安定
- 両眼視の獲得
- 眼位ずれの矯正
- 屈折異常の矯正
- 網膜対応の正常化
正解・・1、4
屈折異常があれば矯正し、弱視眼の使用を強要し視力の安定に努めます。両眼視の獲得などは、その後に行います。
問62.検査と検査距離の組合せで誤っているのはどれか。
- Worth 4 灯試験 ー 5 m
- Amsler チャート ー 30 cm
- 石原色覚検査表 ー 75 cm
- TNO stereotest ー 60 cm
- ニューアニセイコニアテスト ー 40 cm
正解・・4
◎ Worth 4 灯試験は、両眼視機能の検査で使用します。
右眼は赤色フィルターにより🔸と○の2つ、左眼は緑色フィルターにより2つの+と1つの○が見えている状態となります。
両眼で融像していると光源が4つ見えます。
◎ Amsler チャートは、変視症や中心暗点などを検査できます。
両眼ではなく、片眼で見え方を確認します。
◎ TNO Stereo Test(立体視機能検査)の測定距離は40cmです。
視標には赤と緑の点がランダムに点在しており、RG眼鏡にて両眼を分離します。
◎ ニューアニセイコニアテスト(不等像検査)は、RG眼鏡にて赤半月と緑半月を見て、二つの大きさが同じに見えるかの検査です。
問63.AC/A 比について誤っているのはどれか。
- 視能訓練で減少する。
- 生後 18 か月頃に成立する。
- 正常値は 4±2 Δ/D である。
- 両眼の内直筋後転により減少する。
- heterophoria 法は gradient 法より大きい値をとる。
正解・・1
◎ AC/A比は、V.T.(視機能訓練)などで変えられるものではないという考えが一般的です。
◎ 加齢(毛様体筋への神経支配の変化)に伴い、若干増加する傾向にあります。
◎ 臨床でよく使われるAC/A比は、調節刺激に基づく『Stimulus AC/A比』です。調節反応に基づく『Response AC/A比』ではありません。
◎ Heterophoria AC/A比は、近接性輻輳が介入する可能性があります。Gradient AC/A比は、近接性輻輳がAC/A比に含まれません。
その為、『Heterophoria 法 > Gradient 法』となります。
- Stimulus AC/A比
- Heterophoria AC/A比(または、Calculated AC/A比)
- Gradient AC/A比
問64.外転障害がみられないのはどれか。
- 開散麻痺
- 固定内斜視
- Möbius 症候群
- Duane 症候群Ⅰ型
- 先天外眼筋線維症(general fibrosis syndrome)
正解・・1
◎ 開散麻痺では、遠見の共同性内斜視が認められますが、外転は可能です。
◎ 固定内斜視では、内転位で固定されますので、眼球運動の制限があり外転に障害がみられます。
◎ Möbius(メビウス)症候群では、外転神経麻痺を伴う先天性両側顔面神経麻痺があります。
◎ Duane(デュアン)症候群は、外転と内転の制限によりⅠ型~Ⅲ型に分類されます。
- Ⅰ型・・外転制限、内転時の眼裂狭小と眼球陥凹
- Ⅱ型・・内転制限、内転時の眼裂狭小と眼球陥凹
- Ⅲ型・・外転と内転制限、内転時の眼裂狭小と眼球陥凹
◎ general fibrosis syndrome は、『Congenital fibrosis of the extraocular muscles (CFEOM)』の事です。
- general・・全般
- fibrosis・・線維症
- syndrome・・症候群
- congenital・・先天的
- fibrosis・・繊維症
- extraocular muscles・・外眼筋
先天性の両側性非進行性の外眼筋麻痺(線維化)で、眼瞼下垂を伴う場合もあります。1型~3型(CFEOM1、CFEOM2、CFEOM3)があります。
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