第51回午前、視能訓練士国家試験の解答と解説⑥

眼鏡作製技能士向けの問題

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日々寒くなり、雨の日は湿気で髪が少しウネウネになります。

最近の出来事ですが、朝食にサバを焼いて仕事に行ったら、手が魚の匂いで眼鏡調整中に『やばっ』って思いました。

石鹸で手洗いはしたんですけど、臭いが少し残っていました・・。

お客様用のセリートも、前日に洗って干すのですが、生乾き臭が・・、『よし、もう一回洗おう』。

香りには気を付けようと思います。

さてさて、では前回の続きから解説していきます。

問65.眼振の記載図(別冊No. 2)を別に示す。説明で誤っているのはどれか。

  1.  右方視での眼振は疑わしい。
  2.  左方視では最も振幅が大きく頻度も多い。
  3.  上方視では上向き眼振で振幅が大きくなる。
  4.  下方視では下向き眼振で振幅も小さく頻度も少ない。
  5.  正面視では左向き眼振で振幅が小さく頻度も少ない。

正解・・3

眼振の記録方法は以下のようになります。

眼振の記載図

上方視では上向き眼振で振幅が大きくなる。・・✕
正しくは、振幅小、頻度小

問66.72 歳の女性。視力低下、目の奥の痛みを主訴に来院した。来院時視力は右 0.8(1.0×+0.50D)、左光覚弁(矯正不能)であった。来院時の9方向眼位写真(別冊No. 3)を別に示す。病変部位はどこか。

  1.  眼球内
  2.  眼窩先端部
  3.  視神経管
  4.  視交叉
  5.  海綿静脈洞

正解・・2

眼球運動と視神経の障害がみられますので、眼窩先端部の異常となります。

頭蓋内から眼窩に入る神経は、海綿静脈洞-上眼窩裂-眼窩先端部へと通ります。

走行する神経や血管は部位により異なりますので、症状も異なります。

  • 全眼筋麻痺を伴う症候群
    • 海綿静脈洞症候群
      • 動眼神経、滑車神経、外転神経、三叉神経の障害、眼球突出、眼瞼・結膜浮腫
    • 上眼窩裂症候群
      • 動眼神経、滑車神経、外転神経、三叉神経、交感神経の障害、眼球突出
    • 眼窩先端部症候群
      • 上眼窩裂症候群視神経障害

問67.52 歳の男性。近方の見えにくさを自覚し、来院した。視力は両眼ともに 0.3(1.5×−2.00D)である。調節力は 1.00D であった。遠用部には −2.00D、近用加入度+2.00D の累進屈折力眼鏡を処方した。この眼鏡で明視できない範囲はどれか。

  1.  無限遠から眼前1m
  2.  眼前1m から眼前 50 cm
  3.  眼前 50 cm から眼前 33 cm
  4.  眼前 50 cm より近方
  5.  眼前 33 cm より近方

正解・・5

眼鏡装用時、無調節での遠点は、無限遠~50cm
眼鏡装用時、調節時での近点は、眼前1m~眼前33cm

よって、明視域は、無限遠~33cmとなります。

問68.23 歳の女性。左眼の視力低下を主訴に来院した。視力は右 0.8(1.2×−0.50D cyl−0.50D 170°)、左 0.01(矯正不能)。両眼とも前眼部、中間透光体および眼底に異常は認めない。Goldmann 視野計による動的量的視野検査で右眼は異常がなく、左眼の途中経過(別冊No. 4)を別に示す。Ⅴ/4e 視標は正面視では見えないが下方30°では見えており、Ⅴ/4e イソプタをつないだところである。引き続きⅤ/4e 視標の暗点を測定するのに視標を呈示し始める部位はどれか。2つ選べ。

  1.  Ⓐ
  2.  Ⓑ
  3.  Ⓒ
  4.  Ⓓ
  5.  Ⓔ

正解・・1、4

◎ イソプター(isopter)とは、点を繋いだ『等感度線』のことです。視標ごとに感度の限界を示すことが出来ます。

◎ Ⅴ/4eとは、Goldmann視野計の視標Ⅴを用い、投影面の面積4[㎜2]輝度 e を意味します。

◎ 暗点の測定は、中心(5°以内)とMariotte盲点(耳側、約15°)から呈示します。

  • 中心窩視・・傍中心窩(5°まで)、遠中心窩(9°まで)
  • Mariotte盲点・・耳側約15°、下方約5°、直径5°

問69.34 歳の女性。右眼の急激な視力低下、視野異常、光視症を主訴に来院した。視力は右(0.2×−11.25D)、左(1.2×−10.50D)であった。右眼の眼底写真、OCT、静的視野検査および多局所 ERG の結果(別冊No. 5)を別に示す。考えられる疾患はどれか。

  1.  急性帯状潜在性網膜外層症(AZOOR)
  2.  中心性漿液性脈絡網膜症
  3.  網膜中心静脈閉塞症
  4.  うっ血乳頭
  5.  視神経炎

正解・・1

◎ 急性帯状潜在性網膜外層症(acute zonal occult outer retinopathy:AZOOR、アズール)とは、光視症を伴う急激な視力低下視野欠損で発症します。

網膜の外層に主病巣が存在しますが、眼底写真や蛍光眼底造影はほぼ正常な所見を示します。

別冊No5では、

眼底写真は正常ですが、Mariotte盲点の拡大がみられます。

光干渉断層計(optical coherence tomography:OCT)での網膜外層の構造では、視野の欠損部位に一致した ellipsoid zone(エリプソイド帯:EZ)の不明瞭interdigitation zone(インターデジテーション ゾーン:IZ)の消失多局所ERG(electroretino gram:網膜電図)の振幅が低下がみられます。

OCT(ELM、EZ、IZ、RPE-BM complex)

◎ 中心性漿液性脈絡網膜症では、黄斑部に限局した滲出液(しんしゅつえき)の貯留による網膜剥離がみられます。

◎ 網膜中心静脈閉塞症では、本幹閉塞(CRVO)は視神経乳頭を中心に四方への出血、分枝閉塞(BRVO)は閉塞部から扇状形の出血がみられます。

◎ うっ血乳頭では、Mariotte盲点の拡大はありますが、眼底写真ので視神経乳頭の浮腫もみられます。

問70.1歳4か月の男児。両眼の白色瞳孔を主訴に来院した。眼底写真(別冊No. 6)を別に示す。また、頭部 CT 検査で両眼に石灰化病変を認めた。考えられる疾患はどれか。

  1.  未熟児網膜症
  2.  網膜芽細胞腫
  3.  網膜有髄神経線維
  4.  家族性滲出性硝子体網膜症
  5.  硝子体血管系遺残(第1次硝子体過形成遺残)

正解・・2

◎ 白色瞳孔とは、水晶体後方の組織塊が瞳孔を通して白く見えるものをいいます。(白内障は厳密には白色瞳孔とはいいません。)

白色瞳孔の鑑別

乳幼児での『白色瞳孔』と、CT検査での石灰化があれば『網膜芽細胞腫』でほぼ確定します。

問71.57 歳の女性。外斜視を主訴に来院した。母親から斜視は生来だと言われているが、マスク着用の頻度が増えてから眼位異常を指摘されるようになった。在胎7か月、1,300 g で出生した。視力は右 0.2(1.2×−1.50D cyl−1.50D 85°)、左 0.1(1.2×−1.50D cyl−2.75D 65°)。角膜反射検査では 15°外斜視を認めるが、遮閉試験で整復運動は認めない。眼位写真および眼底写真(別冊No. 7)を別に示す。今後の治療方針として正しいのはどれか。

  1.  融像訓練を行う。
  2.  斜視の治療は行わない。
  3.  斜視に対して観血的治療を行う。
  4.  斜視に対してプリズム眼鏡を処方する。
  5.  斜視に対して A 型ボツリヌス毒素注射を行う。

正解・・2

未熟児網膜症に伴う、牽引性の黄斑偏位と思われます。

他覚的な外斜視はありますが、黄斑が耳側に偏位している為、黄斑部中心窩で見る事にはあまり問題は無く、『γ(ガンマ)角異常』の偽斜視となります。

γ角異常

問72.82 歳の男性。2か月前から続く右眼の流涙、羞明および異物感を主訴に来院した。右前眼部写真(別冊No. 8)を別に示す。根治的治療として正しいのはどれか。

  1.  A 型ボツリヌス毒素注射
  2.  眼瞼手術
  3.  遮光眼鏡
  4.  睫毛抜去
  5.  人工涙液点眼

正解・・2

眼瞼縁が内方に彎曲し、睫毛が眼球に接触し、角膜と結膜が刺激される『眼瞼内反(内反症)entropion』がみられます。

ご年齢的に、老人性内反と思われます。

姑息的治療では『睫毛抜去』根本的治療では『眼瞼手術』となります。

◎ 老人性内反(加齢内反)・・眼輪筋の緊張低下、眼瞼皮膚弛緩によるもの

問73.5歳の男児。生後早期から内斜視がみられ、生後5か月のときに自宅近くの眼科を受診した。定期的に検査を受けていたが、積極的な治療はしていなかった。母親が今後のことを聞きたいと来院した。調節麻痺薬点眼後の視力は右 1.2(1.2×+1.00D)、左 0.07(0.07×+1.25D)で、大型弱視鏡検査では、右眼固視での他覚的斜視角が+12°、自覚的斜視角は+10°であった。眼位写真(別冊No. 9A)及び眼底写真(別冊No. 9B)を別に示す。この患児の母親への説明で正しいのはどれか。

  1.  眼鏡をかける必要があります。
  2.  将来右眼も視力が低下してきます。
  3.  眼位が気になれば斜視手術で治します。
  4.  将来斜視の角度は変化することはありません。
  5.  左眼の視力は弱視訓練をすれば正常になります。

正解・・3

◎ 朝顔症候群(morning glory syndrome)・・視神経乳頭領域の拡大と陥凹、陥凹部の白色組織が朝顔に似ています。

問74.4歳の女児。幼稚園の健診で視力不良を指摘され来院した。屈折性弱視と診断され両眼+8.00D の完全矯正眼鏡を処方し作製したが、頂点間距離が 18.0 mm になり、右レンズの光学中心が上方に3mm ずれていた。光学的影響はどれか。2つ選べ。

  1.  網膜像が縮小する。
  2.  右眼の視線が下方に向く。
  3.  矯正効果は過矯正となる。
  4.  右レンズに基底上方のプリズム効果が生じる。
  5.  右レンズに基底外方のプリズム効果が生じる。

正解・・3、4

装用距離が12mmから18mmに離れますので、補正度数は
D=8.00/(1-0.06×8.00)≒15.38[D] となりますので、過矯正。

P[Δ]=0.3[㎜]×8.00[D]=2.4[Δ]、レンズの厚い中心部分が上に来ますのでBUのプリズム効果が生じます。

問75.52 歳の女性。交通事故後に複視を自覚し来院した。大型弱視鏡による左眼固視での自覚的斜視角(別冊No. 10)を別に示す。麻痺筋はどれか。

  1.  右眼上斜筋
  2.  右眼下直筋
  3.  左眼上直筋
  4.  左眼下直筋
  5.  左眼下斜筋

正解・・1

シノプト9方向眼位から、右下斜視と外方回旋偏位を認めることができますので、右眼上斜筋麻痺となります。

◎ シノプト9方向眼位・・マスは3行3列、
それぞれ、上から『水平偏位・上下偏位・回旋偏位』を示します。

右眼上斜筋麻痺
  • 中央マスの上段(水平偏位)・・−3°は外斜視
  • 中央マスの中段(上下偏位)・・R/L5°は上斜視
  • 中央マスの下段(回旋偏位)・・Ex5°は外方回旋斜視
第一眼位での外眼筋の働き

第1眼位での外眼筋の働き(上図)と、向き運動での作用する外眼筋(下図)を示しておきます。

向き運動

以上、お疲れ様でした。

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