拡大径指定と偏心指定はどっちが良い?

一般消費者、眼鏡作製技能士を志す方に向けて

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必要レンズ径が足りない場合などにする「拡大径指定」や「偏心指定」は、どちらを選択すれば良いのでしょうか?・・・という疑問にお答えします。

結論から述べますと、凹レンズではどちらでも良いです。

凸レンズでは、ナイロールなどで厚みを出したい場合には「拡大径」、フチ厚を厚くしたくない場合には「偏心」を選択します。

更に、遠視性単性倒乱視、遠視性複性倒乱視、混合性倒乱視では、その選択の違いが大きくなります。

例)C+3.00 Ax180°(遠視性 単性 倒乱視)、S+1.00 C+2.00 Ax180°(遠視性 複性 倒乱視)、S+1.00 C−2.00 Ax90°(混合性 倒乱視) など・・。

必要レンズ径の計算式は?

必要最小径=FPD(フレーム玉形中心間距離)−CD(心取り点間距離)+玉形横幅(玉形最大)+加工上の余裕

で計算することができます。

例題)『PD60、眼鏡フレームのサイズが「55☐15_150」』の場合に必要となるレンズの最小径は?

解)55+15−60+55+余裕(5mm)=65+5 ≒φ70mm

必要最小径 φ65mm+5mm(余裕)

レンズの基準径がφ65mm の場合では「拡大径指定」か「偏心指定」が必要となります。

① 拡大径指定の場合では φ70mm指定
② 偏心指定の場合では、(70−65)÷2=2.5mmIN指定

拡大径指定と偏心指定の光学中心

乱視なし、凸レンズのフチ厚(拡大径指定と偏心IN指定)

乱視が無い凸レンズを、「拡大径指定」と「偏心指定」で比べてみますと下図のようになります。

拡大径指定と偏心指定のフチ厚

特注指定した凸レンズを実際に加工してみますと、乱視が無い凸レンズでは、レンズ加工後でのフチ厚は変わりません。

拡大径と偏心指定でのレンズ加工後フチ厚

乱視あり、凸レンズのフチ厚

乱視が有る凸レンズの場合には、その軸度方向によりフチ厚の方向が変わります。

例えば、倒乱視(180±30°)では水平方向が厚く、直乱視(90±30°)では垂直方向が厚くなります。

通常、レンズのトーリック面は後面に入りますので、前面を凸球面、後面をトーリックで描写してみました。

例)C+1.00 Ax180(遠視性単性倒乱視)、S+1.00 C+1.00 Ax90(遠視性複性直乱視)

プラス乱視軸180°の拡大径指定と偏心IN指定(コバ厚)

プラス乱視軸180°のコバ厚

例えば、プラス度数の単性乱視軸180°のレンズを拡大径指定した場合には厚くなります。

しかし、偏心IN指定した場合では、180°方向は度無しですのでコバ厚は変わりません。

偏心指定のコバ厚(プラス乱視軸180°)

プラス乱視軸180°の拡大径指定と偏心IN指定(コバ厚)

プラス乱視軸90°のコバ厚

例えば、プラス度数の単性乱視軸180°のレンズを拡大径指定した場合には厚くなります。

偏心IN指定した場合では、180°方向にプラス度数があるためにコバ厚が厚くなります。

偏心指定のコバ厚(プラス乱視軸90°)

オンライン薄型加工

薄型加工とは通常、オンライン加工のことです。

特に、プラス乱視度数が+1.00D以上、乱視軸が180°方向(±30°)の場合、天地幅が小さいフレームで、必要最小限のレンズ厚で仕上げることが可能となります。

例)
① (遠視性 単性 倒乱視)・・C+3.00 Ax180° など
② (遠視性 複性 倒乱視)・・S+1.00 C+2.00 Ax180° など
③ (混合性 倒乱視)・・S−1.00 C+2.00 Ax180° など

例)プラス乱視軸180±30°での、オンライン加工による厚み軽減

例えば、プラス乱視軸180°でのコバ厚は、通常の加工では水平方向よりも垂直方向が薄くなります。

最小必要レンズ径による外径指定をして加工したとしても、垂直方向に余分なフチ厚が出てしまいます。

乱視軸180°、薄いのは垂直方向

オンライン薄型加工では、この余分なフチ厚を無くすことで更に薄い仕上がりになります。重量や厚みの軽減を図ることが可能となります。

プラス乱視軸が90°方向では、天地幅が狭くても水平方向で必要となる最小限のフチ厚に変化がないため、オンライン薄型加工での薄型化の効果はあまり得られません。

乱視軸90°、薄いのは水平方向、

フチ厚指定は?

フチ厚指定(肉厚指定)では、「OC度180°方向、35mmの位置、フチ厚2mm」などと指定します。

レンズ中心からレンズ周辺部に向かい薄くなる凸レンズなどでは必要となることがあります。加工後のコバ厚が薄過ぎますと、レンズ強度が保てなくなります。

例えば、溝掘フレームでは1.6~1.7mm(糸の太さの約3倍)、縁なしフレームでは2.2mm~2.5mmが必要最小のコバ厚となります。

フチ厚指定では、プラス乱視度数の有無により注意が必要となります。

プラス乱視度数が無い場合では、OCからの最長距離となるOC度と位置でフチ厚指定をして良いですが、プラス乱視度数が有る場合で同様に指定をしますと失敗することがあります。

その理由として、乱視軸の違いによるフチ厚の薄い方向に違いがでるからです。

乱視軸の違いによる、薄い方向の違い

例えば、C+3.00 Ax120°のフチ厚が薄い方向は30°、厚い方向は120°です。

コバ厚が薄くなりそうなOC度で指定をしないといけませんので、玉型デザイン次第ですがこの場合では210°(30°)などでフチ厚指定をすると良いです。

実際には、ざっくりと「フチ厚指定」と「拡大レンズ径指定」の併用をすることが多いと思われます。

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