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今回のテーマは知っているようで、知らない『黒目』です。
例えば、『瞳孔間距離って片眼ずつ正確に測る必要ありますよね~(中略)。そもそも瞳孔って何?』ってなったら皆さんは何と答えますか?
瞳孔とは虹彩に囲まれている黒い穴の事です。
光量を調整する機能があります。明所では縮瞳し、暗所では散大します。
直径は2mm~6mm位ですが、2.5~4mm位が多いです。その大きさは薬物や心理状態でも変化します。
瞳孔筋
まず、瞳孔径が変化する仕組みを理解する為には、虹彩内にある2つの瞳孔筋(瞳孔括約筋と瞳孔散大筋)の働きを知る必要があります。
- 2つの瞳孔筋
- 瞳孔括約筋(動眼神経中の副交感神経支配)
- 縮瞳する際に働く
- 瞳孔散大筋(交感神経支配)
- 散瞳する際に働く
- 瞳孔括約筋(動眼神経中の副交感神経支配)
ベラドンナという毒性のある植物の名前を聞いたことはありますか?
この名前の由来は、イタリア語のbella donna(美しい女性) の読みからきています。この実の抽出物を使うと散瞳し、女性が瞳孔を大きく見せる為に使用していました。
副交感神経の作用を抑制させる効果がありますので、散瞳を引き起こします。実は、ベラドンナ総アルカロイドとして鼻炎薬などに使用されています。
副交感神経が興奮するとアセチルコリンという物質が分泌されます。そうすると瞳孔括約筋が緊張して縮瞳します。
一方、ベラドンナはこれを抑える抗コリン成分が含まれているため散瞳します。
散瞳薬
- 散瞳薬は2種類
- 瞳孔括約筋を麻痺させる(副交感神経遮断)作用を持つもの
- 瞳孔散大筋の働きを強くする(交感神経刺激)作用を持つもの
このうち、副交感神経遮断薬は毛様体筋(ミューラー筋、ブリュッケ筋)にも作用し、調節麻痺剤としても用いられております。
- 散瞳薬の商品名の強い順
- (調節麻痺剤としても使用される)
- アトロピン硫酸塩水和物、
- シクロペントラート塩酸塩
- サイプレジン:参天製薬
- トロピカミド・フェニレフリン塩酸塩
- ミドリンP:参天製薬
- サンドールP:日本点眼薬研究所
- オフミック:わかもと製薬
- トロピカミド
- ミドリンM:参天製薬
- ネオシネジン:コーワ興和
- フェニレフリン塩酸塩
注意点として、狭隅角や浅前房の人には散瞳による隅角閉塞の為,急性緑内障を起こす危険性がある為に使用できません。
加齢による変化
瞳孔径はご年齢とともに変化もします。
- 新生児では2mm
- 20歳~25歳で4~6mm
- 老人になると小さくなり2mm
理由として、新生児では瞳孔散大筋の未発達によるもので、高齢者では瞳孔括約筋の硬化によるものです。
ただ、見えている瞳孔径と実際の大きさとは異なり、角膜などで屈折され、虹彩が絞りとなり大きく見えている虚像となります。
瞳孔径が変わると見え方も変わります。
例えば、瞳孔径が小さくなると焦点深度が深くなる為、一般的に視力が向上します。
これを利用したテストがピンホールテストです。
測定値の上に丸い穴の開いたピンホール板を付加して視力を確認するテストです。
この時、ピンホールの大きさは0.7mmよりも大きいのを試して下さい。0.7mm以下だとピンホールの縁による回析効果がピンホール効果より上回る為に視力が低下します。
- ピンホール視力が向上しない場合には、乱視は合っていると考えられます。
- 球面度数が、正視か遠視状態(マイナス過矯正)
- S-0.25D以下の近視状態に補正されている可能性
- 透光体混濁の可能性
- ピンホール視力が向上する場合には、
- 乱視の度数(0.50D以上のズレ)か軸度の間違い(合成乱視)
- 球面度数の間違いの可能性
瞳孔反応
一般的に、眼に光が入り縮瞳すると、輻輳や調節の反応が同時に起こります。逆に、輻輳が起こった場合には調節や縮瞳が起きますし、調節が起こった場合にも輻輳や縮瞳が起こります。
- 近見三反応
- 縮瞳
- 輻輳
- 調節
調節機能を完全に喪失した老視眼や近視眼でも縮瞳は生じ、たとえ一眼をカバーしていても左右同時に起こります。
普段、オートレフの測定時に被検者の瞳孔の様子を見てみると、光がパッと当たった一瞬、縮瞳し次第に散大していきます。(瞳孔に照射した反帰光を回析するため、縮瞳しないように近赤外スリット光源を使用していますが…)
散大するのは、上手に雲霧が働いた証拠です。もし、縮小したままだと調節緊張の可能性があります。
調節による度数が強めに出るだけではなく、調節性輻輳により瞳孔間距離も狭くなります。
光が入射し縮瞳する反応を対光反応といいます。
直接入射した側が縮瞳することを直接対光反応といい、他眼が間接的に縮瞳することを間接対光反応といいます。
眼に当てられた光の反応は、網膜から視神経、中脳と至り、そこから動眼神経を通じて瞳孔括約筋に作用します。
左右眼の直接対光反応と間接対光反応をみることで、障害部位が視神経なのか動眼神経なのか、脳の障害なのかを知ることができます。
- 瞳孔異常の例
- ホルネル症候群の3主徴
- 交感神経麻痺による縮瞳
- 眼裂狭小(瞼板筋麻痺による)
- 眼球陥没
- アディー症候群(瞳孔緊張症)
- 片眼性で散瞳を伴い、対光反応の消失または遅鈍
- 調節や輻輳反応の遅鈍
- アーガイル・ロバートソン瞳孔
- 近見反応は正常
- 両眼とも対光反応が無い状態
- ホルネル症候群の3主徴
瞳孔の形
瞳孔の形は生き物によって様々です。縦長や横長、三日月型や変化しない生き物まで存在します。
瞳孔括約筋と瞳孔散大筋が、それぞれの生活に合わせて進化してきた違いと考えられています。
桿体が発達している夜行性の多くは素早く瞳孔を縮める事が出来る縦長が多く、錐体が発達している昼行性の動物は広い視野を保てるように横長が多いようです。
スリット状の瞳孔は多焦点の眼光学系を持つ動物のみが持ち、スリット状であることで多焦点の眼光学系における色収差の軽減に役立っているようです。
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