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過去投稿①~②の中で、問1~問30までの解説。
今回投稿③では、問31~問39までの解説をしますが、眼科勤めではない眼鏡士にとっては接する機会があまり無い内容でした。
ですが、これから視能訓練士さんと連携していく為には必要な内容だと考えます。
転職するにしても必要ですね。
数年に一度、『新店を出すから、優秀な人材を探してて・・店長として働いてくれませんか』という打診がきます。
先月も友人からそんな連絡を受けました。
給料と職場次第であるのが正直な所なのですが、現状に不満は無いですし、横浜や千葉、仙台だったり・・と、自宅から遠かったり、引っ越しするのが面倒で惰性で毎回お断りさせて頂いておりますが・・
しかし、『change、変化』に『challenge、挑戦』することは『chance、好機』なのかもしれません。
何事も変化することには苦痛が伴いますが、それを乗り越えた先の景色はきっと素晴らしいものだと思います。
では、問題を解いていきましょう。
問31.パターン刺激を用いる測定法があるのはどれか。2つ選べ。
- EMG
- ENG
- EOG
- ERG
- VEP
正解・・4、5
眼の臨床視覚電気生理は大まかに、『EOG』『ERG』『VEP』の3種類あります。
パターン刺激には、市松模様(チェッカーボードパターン)や、格子縞による刺激などがあります。
その中でも、パターン刺激を用いる測定は、『ERG(網膜電図)』と『VEP(視覚誘発電位)』です。
- EMG(electromyogram)・・筋電図
- ENG(electronystagmography)・・電気眼振図
- 神経眼科領域で用いるEOGと同義語
- めまい、平衡障害の診断
- EOG(electrooculogram)・・眼球電図
- 左右の内眼角と外眼角に電極を装着する
- 網膜色素上皮の診断
- Best病(卵黄状黄斑変性)
- ぶどう膜炎
- 網膜色素変性症など
- ERG(electroretinogram)・・網膜電図
- 角膜上にコンタクトレンズ型の電極を設置する
- 網膜(視細胞、双極細胞)の診断
- 網膜色素変性症など
- VEP(Visual evoked potentials)・・視覚誘発電位
- 第一次視中枢近くの頭皮に電極を設置する
- 視神経の診断
- 視神経炎、多発性硬化症など
問32.融像幅の測定に使用する器具はどれか。
- hole in card
- Maddox 正切尺
- タイポスコープ
- ビズスコープ
- プリズム
正解・・5
- hole in card test・・優位眼(利目)の確認法です。
- 両手で作った穴(又は、穴あきカード)を使用したテストです。
- 視標を見ている方の眼が優位眼です。
- Maddox 正切尺・・眼位検査です。
- 中心に光源があります。
- 角膜反射光を観察し斜視角をみたり、片眼にMaddox Rodを装用させて眼位を調べます。
赤フィルターを片眼に置いて、正切尺を見た時の赤色光の位置で考えられる眼位異常は何か・・「交代性上斜位」
(視能訓練士国家試験:第36回午後、問43)
- タイポスコープ(Typoscope)・・近方視や読書時の補助用具です。
- ビズスコープ・・中心窩固視の検査です。
- 場所を選ばず、継時的に固視の確認が可能です。
- 検者のみが観察する為、判定の客観性に欠けます。
融像幅の測定には、プリズム、Bagolini(バゴリニ)線条レンズ、大型弱視鏡などによる測定方法があります。
融像幅とは、以下の図の『全輻輳幅』の事です。
米国式21テストでの斜位測定後「#8」の『0』状態からスタートし、ΔBIを付加(開散力テスト)していきますと「#11」以上で分離します。また、ΔBOを付加(輻輳力テスト)していきますと「#9」でぼやけ、「#10」以上で分離します。
「#11」~「#10」まで幅が『融像幅』となります。
例えば、
BI方向に6Δ以上、BO方向では25Δ以上で複視となる場合の融像幅は
『-6Δ~+25Δ』と記載します。
問33.視標の像が固視眼の中心窩と斜視眼の中心窩に投影される検査はどれか。2つ選べ。
- Bagolini 線条検査
- Worth4灯試験
- 赤フィルタ法
- 残像検査
- 残像転送試験
正解・・4、5
『残像検査法』には、『Heringの残像法(After image test)』や『残像転移試験(After image transfer test)』などがあります。
強い光を見た時には、目を閉じても残像として見える現象を用いた検査法です。
先ずは、偏位眼を遮蔽し、健眼に縦長の光を照射し中心窩に『残像』を作ります。
次に、健眼を遮蔽し、偏位眼を開放して行う網膜対応検査です。
問34.小数視力が 0.5 であった。対数視力で2段階上昇した時の小数視力はどれか。
- 0.6
- 0.7
- 0.8
- 0.9
- 1.0
正解・・3
先ずは、小数視力0.5の、LogMAR視力を求めます。
『 LogMAR 視力=Log (視角 ′ )=−Log(小数視力) 』から、
小数視力0.5 ≒ LogMAR視力0.3 となります。
次に、LogMAR視力0.3から2段階上昇した、LogMAR視力0.1の小数視力を求めます。
LogMAR視力0.1≒小数視力0.8 となります。
問35.父親は2型色覚で、母親は2型色覚の保因者である。その子どもで正しいのはどれか。2つ選べ。
- 男児が色覚異常になる確率は 25%
- 男児が保因者になる確率は 50%
- 女児が色覚異常になる確率は 50%
- 女児が保因者になる確率は 50%
- 色覚正常(保因者を含む)である確率は0%
正解・・3、4
人間の染色体は46個、23対あります。
その内の1対のみ、X染色体とY染色体からできており、
X Y の組み合わせは男子、X X の組み合わせは女子となります。
1型・2型の色覚異常の遺伝形式は『X 染色体劣性遺伝』です。
3型の色覚異常の遺伝は、常染色体優性遺伝です。
- 男子のX染色体は1つですので、異常DNAがある場合には表面化します。
- 女子のX染色体は2つあり、両方とも異常DNAでなければ表面化しません。
異常遺伝子をxとしますと、以下のようになります。
- 父・・X Y(正常)、x Y(異常)
- 母・・X X(正常)、x X(正常、保因者)、x x(異常)
従って、問題文にある、
父・・x Y(異常)と、母・・x X(正常、保因者)の子どもは
「x x」、「x X」、「x Y」、「X Y」の4通りとなります。
「x x」・・女子、(異常)
「x X」・・女子、(正常、保因者)
「x Y」・・男子、(異常)
「X Y」・・男子、(正常)
- 男児が色覚異常になる確率は 25%ではなく、50%
- 男児が保因者になる確率は 50%ではなく、0%
- 男子はX染色体が1つである為、保因者にはならない
- 色覚正常(保因者を含む)である確率は 0%ではなく、50%
問36.限界フリッカ値に影響しないのはどれか。
- 加 齢
- 固 視
- 視神経炎
- 白内障
- 疲 労
正解・・4
限界フリッカー(critical flicker fusion frequency、CFF)値とは、視点を点滅させ、ちらつきを感じなくなった点滅回数(頻度)のことです。
正常値は40Hz~50Hzです。50Hz以上の点滅は、神経の伝達速度の関係から認識できません。
明滅する視標の波長(R : 660nm、G : 555nm、Y : 570nm)により、限界フリッカー値は異なり、R<G<Y となります。
25Hz以下は病的とされ、視神経疾患が疑われます。
CFFは、屈折異常や、軽度の中間透光体混濁による影響はありませんので、軽度の白内障はCFFに影響を与えません。
また、老視、斜視、ぶどう膜炎などの場合にも、CFF低下はありません。
問37.隅角鏡で観察できないのはどれか。
- 血管新生
- 色素沈着
- 前房蓄膿
- 網膜裂孔
- 周辺虹彩前癒着
正解・・4
隅角鏡で、網膜の裂孔を観察する事はできません。
細隙灯顕微鏡の付加レンズには、HrubyレンズとGoldmannレンズがあります。
角膜表面に載せる隅角鏡を用いた検査法には、
間接型のGoldmann隅角鏡と、直接型のKoeppe(ケッペ)隅角鏡などがあります。
Goldmann隅角鏡には、三面鏡と一面鏡があります。
問38.疾患と蛍光眼底造影の所見の組合せで誤っているのはどれか。
- Behçet 病 ー 蛍光漏出
- 加齢黄斑変性 ー 脈絡膜新生血管
- 糖尿病網膜症 ー 無灌流領域
- 虚血性視神経症 ー 充盈遅延・欠損
- 中心性漿液性脈絡網膜症 ー 蛍光遮断
正解・・5
中心性漿液性脈絡網膜症(central serous chorioretinopathy、CSC)とは、中心性網脈絡膜炎(chorioretinitis centralis)ともいいます。
中年男子の片眼に好発し、黄斑部に限局した円形の滲出(しんしゅつ)液貯留による網膜剥離が起きた状態となるものです。
蛍光眼底造影では、病巣内に円形や噴水型などの蛍光色素の漏出(ろうしゅつ)が見られます。
- 蛍光漏出(leakage)・・血液網膜関門の障害により生じます。経時的に蛍光拡大します。
- 蛍光遮断(blockage)・・白斑や出血などで蛍光が遮断され、低蛍光を示します。
- 充盈(じゅうえい)遅延 / 欠損(filling delay / defect)・・血管の循環障害や閉塞により、造影剤の流入時間の遅延や流入しない部位がある状態。低蛍光を示します。
問39.検影法について正しいのはどれか。
- 30 cm の距離で行う。
- 乱視は検出できない。
- 強度近視眼ほど反射光は暗い。
- 眼内レンズ眼では測定できない。
- 収束光で中和した場合は遠視である。
正解・・3
検影法(retinoscopy、skiascopy)での測定距離は、日本では50cm(2.00D)が多いです。体格に合わせて、67cm(1.5D)や、40cm(2.5D)でも良いです。
検影に用いる光束には、『収束光線』、『平行光線』、『開散光線』があります。
強度の屈折異常では反射光は弱くなりますので、強度近視では短収束光、強度遠視では長収束光を用います。
長収束光で中和した場合でも、遠視眼とは限りません。
線条検影では、線条の方向を乱視の焦線に一致させ、直交する方向に光束を移動させ中和点を検出する事で、乱視の両主経線の屈折を測定する事ができます。
検影法(開散光線)での、『同行』となる概念を以下に示します。
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