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固視とは『1つのものを注意して見ている時の網膜像が中心窩に結像され、かつ安定的にそこに維持されていること』となります。
このような固視を特に『中心固視』といいます。
眼球運動が正確に行われていても、その視物を見続けるためには『固視』が必要となります。
また、一般の臨床では、両眼視状態での固視(両眼固視)に異常かその疑いが見られる場合のみ、単眼視状態での固視(単眼固視)が調べられます。
固視微動
固視物が網膜上で動かないことが、はっきり見るのに好都合であるように考えられます。
しかし、眼は静止しておらず、断続的な眼球運動が観察されます。
この眼球運動を『固視微動』または、『生理的眼振』と呼びます。
固視微動をPhotosensor oculographなどの器具で調べると、3つの微動が観察されます。
- Photosensor oculograph
- 赤外線を放射する装置からの光線が角膜や強膜で反射され、その反射光線が光感作性細胞で解析されます。
- 右や左への眼球運動のたび、強膜で反射される光線量は変わり、その変化が分析され、それに応じて眼球運動の程度を表す目盛りがセットされています。
- 3種類の固視微動
- Drift・・中心窩からゆっくりとずれていくような動き
- 弧度25分/秒の早さ
- Tremor・・driftに上乗せられた高頻度で振幅は、ほぼ錐体の直径の0.5~1.5倍までの動き
- 弧度12.5分/秒の早さ
- Saccade・・中心窩からのずれを戻すための動き。Fast fickとも呼ばれます。
- 弧度13.5度/秒の早さであり、固視微動の中で一番早い動き
- Drift・・中心窩からゆっくりとずれていくような動き
固視微動の意義
固視微動の動きは、視覚上どのような意義があるのでしょうか。
特殊な装置で網膜上に静止画像を作り、視覚に及ぼす動きの影響を調べる実験では、その静止網膜像は徐々に見えなくなります。
しかし、視標の照明を断続的に点滅させると、見えなくなった視標は再度みえるようになります。
静止網膜像の消え方は一定のパターンがあり、認識できる形を維持しながら約5秒で消失していきます。
単に、網膜レベルではなく中枢も関与していると考えられます。
消失の例として、『網膜血管像』があります。
網膜血管は網膜上にありますので、本来であればこの血管像が常に見えるはずですが、静止像となるため普段はこれをみることが出来ません。
見る為には、側方から瞳孔に光を当て、絶えず動かすと見えるようになります。
固視時の、これらの不随意眼球運動は、正常な視覚を得る為に必要な視覚生理となります。
固視微動(saccade, drift, tremor)の影響
速い『saccade』をしている間は視力が落ちます。
『saccade』は『drift』による誤差を中心窩の方へ引き戻します。
しかし、『saccade』の起こる間隔はほぼ一定しており、注視像の像が中心窩の部分に当たっていても起こります。
そして、中心小窩外の一点から、別の中心小窩外の一点に飛ぶこともあります。
『drift』は錐体細胞にon-off効果を及ぼしますが、長引くと視力が落ちるという報告もあります。
『saccade』はその時に起きると思われます。
ですので、必ずしも中心小窩に向かわなくても良いということになります。
視力は『saccade』が終わった直後に急激に向上し、徐々に低下していきます。
『saccade』が中心小窩に向かう時には、より視力が向上します。
従って、良い視力を保持する為には、この『saccade』がある間隔で規則的に頻発する必要があります。
固視ゆれが増大するのは、この『saccade』が活発に起こる為として理解できます。
ただし、『saccade』の『速さ』や『大きさ』が、ある一定の範囲内にあるという事は重要となります。
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