視機能系の練習問題、其の4

眼鏡作製技能士向けの問題

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屈折要素

【問1】眼の光学系でよく用いられる標準的モデルであるGullustrandの模型眼で、屈折力が43.05Dといえばどこの部位?

  • 角膜

【解説】

角膜(屈折率1.376)の屈折力は、前面では+48.83D、後面では−5.88Dとなります。

これは、角膜前面が大気と接し、後面が房水(屈折率1.336)と接している事が条件となります。

では次に、角膜の厚み0.5mmを無視した場合に、角膜が大気中(屈折率1.00)にある時の屈折力を考えてみます。

角膜の前面屈折力は48.83+(−5.88)=+42.95[D]となり、後面屈折力は−55.29[D]となります。

それを足し合わせた42.95+(−55.29)=−6.5[D]が空気中でのおおよその屈折力となります。

角膜屈折力は、大気中では−6.5Dであり、角膜後面が房水と接すると+43Dと強いプラスの作用をします。

角膜屈折力+43.05Dを以下の数字を使用し、実際に計算で求めてみます。

nは屈折率、rは曲率半径

角膜前面屈折力D1’は、(1.376−1.000)/0.0077=+48.8[D]となります。

角膜後面屈折力D2’は、(1.336−1.376)/0.0068=−5.9[D]となります。

よって、角膜の厚みt=0.5mmを考慮して角膜屈折力D’を求めてみますと、
D’=D1’+D2’−t/n×(D1’×D2’)
 =48.8+(−5.9)−(0.0005)/1.376×(48.8)×(−5.9)
 ≒+43.05[D]
になり、確かに求められました。

【問2】Gullustrandの模型眼で、屈折力が19.11Dといえばどこの部位?

  • 水晶体(無調節状態)

【解説】

最大調節時(13.95D)の、水晶体屈折力は33.06Dです。

水晶体の平均屈折率は約1.41です。若年者の水晶体屈折率は中心部が高く、年齢と共に周辺部が高くなっていきます。

加齢に伴う軽度の遠視化の理由の1つとして、このような透光体の屈折率の変化が考えられます。

ただし、加齢に伴う遠視化の最大因子は、水晶体の硬化による屈折力の減少と考えられています。

他の因子としては、角膜屈折力の減少、眼軸長の短縮、水晶体の後退などが考えられます。

皮質白内障では遠視化に変化しますが、核白内障では近視化に変化します。

問1と同様にして、水晶体の大気中での屈折力を計算しますと、厚みを無視した場合には108.93D、厚み(3.60mm)を考慮しますと101.82Dとなります。

角膜(屈折率1.376)は、大気(屈折率1.0)と房水(屈折率1.336)に接している時には+43.05Dの屈折力ですが、大気中では−6.5Dとなります。

水晶体(屈折率1.386)は、前房と後房で房水(屈折率1.336)と硝子体(屈折率1.336)に接している時には+19.11Dの屈折力ですが、大気中では+101.83Dとなります。

【問3】眼軸長の測定時、散瞳の必要性が無く非接触であり、短時間の測定で済む方法は、Aモード超音波 測定法と光学式眼軸長 測定法のどちら?

  • 光学式眼軸長 測定法

【解説】

Aモード超音波測定法は、散瞳の必要があり接触具合により、測定時間も精度にも測定者の熟練度によるバラつきが出ます。

測定範囲は、角膜表面から内境界膜まであり、光軸で測定します。

レーザーによる光学式眼軸測定法は、非接触である為、測定値の再現性が高いです。

測定範囲は、涙液表面から網膜色素上皮までですが、網膜の厚みを補正した値(Aモードと相関するように内境界膜までの値)が表示されます。光軸では無く、視軸で測定します。

成熟白内障などの光学式眼軸長測定が困難な場合には、Aモード超音波測定が必要となります。

【問4】新生児の眼軸長は約17mm、成人は約24mmといわれますが、眼軸が1mm伸展する事による屈折異常の変化は?

  • 約3Dの近視化

【解説】

眼軸長が1mm伸長すると、約3.00Dの近視化が起こります。

新生児は、成人と比べ眼軸長が約7mmほど短いです。

成人で正視眼となる方が、新生児で21D(3.00[D]×7[mm]=+21[D])の遠視眼である・・・という訳ではありません。

成人になるにつれ、角膜と水晶体の屈折力も弱く変化していきます。

つまり、新生児から成人になるにつれ、眼軸は伸展し近視化が起こり、屈折系(角膜と水晶体)では遠視化が起こります。

その屈折変化は、バランス良く正視化になるように働きます(正視化現象)が、眼軸の伸展による影響が強い(1mmで約3D)為に、過度に伸展しますと強度近視(−6.00D超~−10.00D以下)最強度近視(−10.00D超~−15.00D以下)・・となります。

【問5】成人の場合、強主経線の方向はどの方向へと変化する傾向にありますか?

  • 縦方向から横方向へと変化

【解説】

倒乱視化される理由の1つとして、角膜の形状(角膜乱視)が変化する事であり、眼瞼圧が加齢により減少する影響(左右眼での乱視軸や度数の対称性との関係性など・・)だと考えられております。

幼児期に多い倒乱視は、20歳ぐらいまでは減少し直乱視化する傾向にあります。

20歳ぐらいを過ぎると、60歳頃までは倒乱視化がみられます。

倒乱視化が起こる場合の、乱視軸方向の変化(計算上)をいくつか挙げてみます。

例1)

C−1.00 Ax90°で補正される眼(倒乱視)に、1.00Dの倒乱視化が起こる場合には、以下のようにC−2.00 Ax90°となります。

例2)

C−1.00 Ax30°で補正される眼に、1.00Dの倒乱視化が起こる場合には、以下のようにC−1.00 Ax60°となります。

  • 乱視度数が同じ場合(今回であれば、1.00Dと+1.00D)には、次の法則が成り立ちます。『⇩難しければ無視して下さい』
  • 本来の軸度(30°)と、変化しようとする軸度(180°)の、中間の軸度(15°)から45°反対方向に軸度が変化します。つまり、15°から45°増えた60°方向に残余乱視が発生します。

例3)

C−1.00 Ax45°で補正される眼(斜乱視)に、1.00Dの倒乱視化が起こる場合には、以下のようにC−1.41 Ax67°となります。

  • 上の残余乱視でいいますと、45°と180°の中間22.5°から45°ズレた軸度の22.5+45=67.5°方向に残余乱視が発生します。

『例2と例3の残余乱視の軸度の説明で何を伝えたいのか』という事ですが、一般屈折測定での完全補正値の乱視軸を故意にずらして、正確かどうかの確認が出来るという事です。

乱視軸の測定値が正確である場合には、乱視軸を30°ずつ、時計回りと反時計回りにずらして、それぞれ逆方向に30°(30°の中間15°から45°ズレ)残余乱視が発生するかで確認できます。(⇦放射線視標の30°は、時計で例えると12時-1時の短針1時間の角度)

【問6】不正乱視となる翼状片は、鼻側と耳側のどちらから侵入しますか?

  • 鼻側

【解説】

不正乱視とは、主に角膜(稀に水晶体)の表面が凹凸不正の乱視となるものです。

Placido角膜計により、同心円が不規則に歪んでいるのが観測されます。

Placido角膜計

例えば、円錐角膜翼状片角膜創傷の治療後に確認されます。

翼状片(pterygium)は、角膜の瞼裂に相当する部位に肥厚し充血した結膜が三角形に侵入してきます。

一般屈折測定では、強い乱視の値が測定されます。

通常は瞳孔領にかかる前に切除する事になりますが、非常に再発し易い為、再発防止の目的で、術後に抗癌薬マイトマイシンの点眼やストロンチウム90の照射などが行われます。

原因として、長年のコンタクトレンズ装用や粉塵、紫外線によるものだと考えられております。

【問7】角膜の5層を前面から全て挙げよ

  • 上皮
  • Bowman膜(外境界膜)
  • 実質
  • Descemet膜(内境界膜)
  • 内皮

【解説】

角膜(cornea)は、直径約10mmの、無色透明の無血管組織です。

ボーマン膜は再生能力が無く、デスメ膜は再生能力があります。

角膜症では、角膜の部位を知る事で疾患の理解が深まります。

例えば、上皮とボーマン膜の間に水疱が出来るものを水疱性角膜炎、角膜上皮に糸状物(filament)が生じるものを糸状角膜炎などがあります。

他にも、角膜血管新生では、ボーマン膜の上にみられる表在性血管新生(パンヌス)、実質にみられる深在性血管新生があります。

角膜が円錐状に膨隆し、不正乱視となる円錐角膜(keratoconus)では、デスメ膜の破裂により実質層に前房水が侵入し混濁していきます。

【問8】10層で構成される網膜の第4層(外顆粒層)の大部分を占める視細胞は?

  • 杆体細胞(Rod sherule)と錐体細胞(Cone pedicle)

【解説】

ヒトの場合には、約1億個の杆体約700万個の錐体があるといわれております。

明るい所で働く錐体の機能は、詳細な形や色を感覚する事です。

色覚については、赤感受性錐体(L錐体)、緑感受性錐体(M錐体)、青感受性錐体(S錐体)の3種類が、波長の光刺激を受けて色を感じます。

例えば、白色を見た場合には全ての錐体が刺激され、黒色の場合にはいずれの錐体も刺激されません。

【問9】毛様体筋で、輪状筋、近方視の際に働き、動眼神経(副交感神経)支配なのは?

  • ミューラー筋(Muller’s muscle)

【解説】

ブリュッケ筋(Brucke muscle)は、縦走筋、遠方視の際に働き、交感神経支配となります。

毛様体筋は、輪状筋、縦走筋、斜行筋の3つから成ります。

虹彩筋(瞳孔括約筋・・動眼神経支配で縮瞳、瞳孔散大筋・・交感神経支配で散瞳)と毛様体筋を合わせて、内眼筋といいます。

6つの外眼筋の働きを以下に示します。

眼球の向き運動による外眼筋の働き

上図では、

例えば、右斜め上を見る時には、右眼は上直筋左眼は下斜筋が働く事を示します。

第一眼位での外眼筋の働き

また、上図では、

正面視を第一眼位といいますが、例えば、内方回旋の働きがあるのは、上直筋と上斜筋という事を示します。

【問10】角膜の直乱視と水晶体の倒乱視(−0.50D Ax90°)から全乱視を推定するJaval’s ruleで、角膜乱視が−1.00D Ax180°の場合の全乱視は?

  • −0.75D Ax180°と推定

【解説】

ジャバルの公式は、
【 1.25×(角膜乱視) + (−0.50D Ax90°) = (全乱視) 】です。

角膜乱視が−1.00D Ax180°の場合の
全乱視は、1.25×(−1.00D Ax180°)+(−0.50D Ax90°)
=−1.25D Ax180°+0.50D Ax180°
=−0.75D Ax180°

【問11】失明の原因疾患1位の緑内障ですが、近視度数が強くなる程に頻度が高くなり、隅角の機能が悪く房水の排出が障害される緑内障を?

  • 開放隅角緑内障

【解説】

開放隅角緑内障(POAG)は、隅角が広いが機能が悪い為に房水の排出が障害されているものです。通常は、前房が深いです。

閉塞隅角緑内障(PACG)は、隅角が狭いという構造上の異常で房水の排出が障害されています。通常は、前房が浅いです。

毛様体で房水が産生されますが、房水の産生量よりも流出量が少ないと高眼圧緑内障となります。

正常眼圧(多数の健常眼から統計的に得た眼圧)でも、その人の健常眼圧(その眼の機能障害を起こさない眼圧)を超えると視機能障害を起こします。これを、正常眼圧緑内障(NTG)といいます。

一方で、正常眼圧を超えていても視機能障害を起こさない状態を高眼圧症といいます。

【問12】網膜剥離や裂孔、緑内障、白内障の要因となる屈折異常は?

  • 強度近視

【解説】

強度近視では、後部ぶどう腫という特殊な眼球形状、硝子体皮質、内境界膜、網膜血管などにより網膜が牽引される事が網膜剥離に関与すると考えられております。

後部ぶどう腫

強度近視は、開放隅角緑内障の頻度も高く、後極白内障が特徴であり、網膜脈絡膜萎縮を伴いやすくなります。

白内障の全体的割合では皮質性白内障が多いものの、強度近視では特に核白内障を伴う事が多くなります。

【問13】屈折性不同視眼と軸性不同視眼では、Knapp(ナップ)の法則から眼鏡補正による不等像視の発生が少ないのはどっち?

  • 軸性不同視眼

【解説】

眼鏡の像倍率(Spectacle Magnification)は以下の公式があります。

眼鏡の像倍率

ナップの法則とは、補正レンズを後頂点位置と眼の第一焦点が一致するように装用すると、Shape factor(レンズの中心厚などによる要因)を無視した場合には、軸性屈折異常に対しての網膜像の大きさは変わらないという法則です。

Knapp(ナップ)の法則

つまり、パワーファクターのみを考慮し、装用距離12mmと入射瞳約3mmを足した約15mmの位置で眼鏡を装用した際には、軸性の屈折異常眼での網膜像は正視眼と同じになるという事を示しています。

しかし、実際には、様々な要因が複雑に影響しますので、軸性でも屈折性でも結局はコンタクトレンズでの補正が良いという考えもあります。

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