プリズム眼鏡の注意点(加工時)

一般消費者、眼鏡作製技能士を志す方に向けて

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プリズム加工では、軸出し器で印点を打つときや、サクションカップをレンズに吸着(ブロッキング)するときなど、レンズ後面の傾きなどによるずれに注意する必要があります。

また、加工機にチャッキングレンズするときなどでも注意が必要です。(可動式のプリズム加工用の可動式のタイプを使用する、もしくは後面に厚みのある吸着シールなどを貼ると良い)

では実際に加工機にデータを入力し、強制モードで削りますが、レンズカーブ、ヤゲン位置はどう指定すれば良いのでしょうか。

美観的要素の理由から、レンズがフレームの前面からなるべく出ないように強制指定をして加工をするのか。もしくは、光学的要素からレンズを前面に出すように加工するのかどうか・・。

美観的要素、光学的要素のどちらをとりますか?

もしくは、何も考えずにオートモードで削りますか?(笑)

私は、フレームのそり角を見て、処方PDから光学中心の位置を大まかに見て、レンズ後面が視軸と垂直になるようにフレームのそり角を考慮して、レンズを前面に出します。

フレーム選択の際には、BOであれば横幅を狭め、BIであればブリッジ幅が広め、BUやBDでは天地幅が狭めの枠を選ぶと良いです。

メタル素材よりもプラスチックフレーム素材の方が、レンズ前面の厚み(前に出して加工)が隠れやすいのでGoodです。

優先順位としては、①サイズが小さいもの、②プラスチック素材・・位の感じで考えております。

プリズム作用とは

レンズによる光線の収束や発散とは別に光線の進行が変わる場合、その角度をフレ角(偏角)といいます。稜、頂角、基底などの名前は以下の通りです。

フレ角δ、頂角α、稜、基底

最小フレ角(δm:angle of minimum deviation)の条件は、光線がプリズムを対照的に通るとき(φ1=φ2)です。

最小フレ角は、【 δm=2φ1−α 】となり、

Snellの法則から屈折率nを求めることも可能です。

Snellの法則

屈折率nは、【n=(α+δm)/α 】です。

このときの最小フレ角は、【 δm=(n−1) 】です。

例題)屈折率が2.0の正三角形プリズムによる最小偏角は?

解)正三角形ですので、α=60°

よって、最小フレ角 δm=(n−1)α =(2−1)×60°=60°

平行ではない2つの平面に光が通るときや、レンズが視軸に対して偏心して平行ではない2つの面を通るときなどには、このプリズム作用が生じます。

プリズムディオプトリ(Δ)という単位で表され、1m先の物体が1cmずれて見えるときを1Δとします。

1Δで1m先が1cmずれる

下図のようなプレンティスの公式も復習します。

S+1.00の焦点距離が1mなので、偏心1cmが1Δ、2cmで2Δ・・・

レンズが傾くことによるマーチンの式も復習します。

Martinの式

例えば、レンズの前面がフレームから出ないように加工された場合のプリズムの変化を下図に示します。傾いた方にプリズムが発生します。

傾きによるプリズム

これらのことを知っておくと、なぜ前面に出さないといけないのかが分かると思います。

適切ではない反り角で加工されてしまうと、眼科処方箋の装用度数も変わります。

適切ではないプリズム量になりますので、医療目的を達成できません。

皆様、プリズム加工の場合には、いつもよりご注意をお願いします。

・・・というのも、素人が加工したであろう酷いプリズム眼鏡(シートメタルのようなデザインのフレーム)を、緩くなったということで再調整したという経緯があります。

お客さまに「処方箋でプリズム入れてますか」と聞いたら、「入れています」と返答がありました。

レンズ後面が視線に対して斜めになっていて、見え方が合わずにブリッジを反らせることで改善されていたようです。その結果が横幅が緩くてずれ落ちるということでした。

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