モノビジョンの処方例

一般消費者、眼鏡作製技能士を志す方に向けて

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モノビジョンの『mono(モノ)』とはギリシア語で『1』を表します。

  • ギリシア語の数
    • mono(モノ)・・1
    • di(ジ)・・2
    • tri(トリ)・・3
    • tetra(テトラ)・・4
    • penta(ペンタ)・・5
    • hexa(ヘキサ)・・6
    • hepta(ヘプタ)・・7
    • octo(オクタ)・・8
    • nona(ノナ)・・9
    • deca(デカ)・・10
    • hendeca(ヘンデカ)・・11
    • dodeca(ドデカ)・・12
    • trideca(トリデカ)・・13
    • tetradeca(テトラデカ)・・14

これらが使われている例として、

モノレール、レンマ、トリケラトプス、テトラポッド、ペンタゴン、ヘキサゴン、オクトパス・・等

どれも、日常でよく耳にする言葉ですね。

モノビジョン法とは

Fondaにより1966年に初めて報告された矯正方法です。

一般的に、優位眼(利き目)を遠見用非優位眼を近見用に矯正して遠方から近方まで明視できるようにした方法となります。

ただし、遠方と近方からの像を同時に作る為、利き目の影響が強い方には向いておりません

更には、遠方と近方はそれぞれ単眼視となる為、立体視が低下します。融像されず、複視の状態でも生じる遠近感覚となります。

モノビジョンの処方例

前提として、自然にモノビジョンになっている方には良い方法かもしれません。

賛否両論はありますが、あえてモノビジョンとなる処方をするのには当然リスクもある事を留意しなければなりません。

処方例を挙げますと、

例)完全矯正値が以下の場合を考えます。
R S−3.00
L S−6.00

旧眼鏡度数が以下の場合
R S−2.50・・遠点距離は、1/0.50=2m
L S−4.50・・遠点距離は、1/1.50=0.66m

では、55歳(調節力1.50D)、利き目は右眼、
主訴が近方が見えづらい場合の処方をどうするか。

例えば、以下のように左右度数を等しくS−0.50弱く処方したとします。
R S−2.00・・遠点距離は1/1=1m、近点距離は0.4m
L S−4.00・・遠点距離は1/2.00=0.5m、近点距離は0.29m

近くが楽になりますので、主訴は改善されます。

しかし、遠方(右眼)は2mから1mになりますので、見えづらくなります。

一方で『モノビジョン』の処方は以下のようになります。

R S−2.50・・遠点距離は2m、近点距離は0.5m
L S−4.00・・遠点距離は0.5m、近点距離は0.29m

右眼は遠方視、左眼は近方視となります。

このような処方の仕方があるという事は知っておいても良いでしょう。

片眼を遠近両用レンズにして、他眼を単焦点にする方法もあります。

ただし、あえて『モノビジョン』にするメリットはあまり無いように感じます。

『遠近両用レンズ』がありますので、先ずはそれを試す方が良いです。

例えば、遠近両用レンズが慣れない場合で、用途によって眼鏡の掛け外しをしたくなく、どうしても1本の眼鏡で遠くも近くも見たいと思われている方・・など

最終的な選択肢として、『モノビジョン』を試してみても良いのかもしれませんが、お勧めはしません。

コンタクトレンズ装用者であれば、片眼のみにコンタクトレンズを装用して生活してみると『モノビジョン』の体験ができます。

片目で遠くや近くをみる事となりますので、視野が狭くなります。そして、他眼はボヤけた像が視界に常に入ります。

『モノビジョン』の見え方に慣れる為には、数ヶ月かかるといわれております。

それであれば、遠近両用レンズをお勧めし、しっかり両眼視した方が良いと考えます。

そして、『遠近両用レンズ』で、視線の使い方などの慣れに時間を費やす方が良いのではないでしょうか。

結果的に『モノビジョン』になってしまった件が多いのではないでしょうか。

あくまで個人的な見解ですが、それの理由付けとして、『あえて、そうしています』という後付けの理由がしてなりません。

実例

この投稿の数日後、『モノビジョンにして眼鏡を作成したいのですが・・・』

というお客様が実際にご来店されました。

『モノビジョン』という言葉を知っている事も驚きましたが、現代では、インターネットで簡単に調べる事ができますので、場合によってはお客様の方が知っている事もあるように感じます。

ですので、プロとしてやっていく為には情報のアンテナを常に張っておかなくてはなりません。

という訳で、この件の経緯としては以下のようになります。

コンタクトレンズの調子が悪くて、たまたま片眼のみのコンタクトレンズ装用になってしまったそうです。

その見え方に慣れてしまい、遠くも近くも良く見える事に満足感を覚え、眼鏡でもそうしたい・・・ということでした。

こちらの方の完全補正値は、大体以下の様な度数でした。

55歳、利目は右眼
RV=1.0×S−1.75 Add2.50
LV=1.0×S−2.00 Add2.50

コンタクトレンズ度数 P−1.50 右眼のみ装用

です。

先ずは、お客様の仰る通りの『モノビジョン』での処方にして眼鏡装用してもらいました。

眼鏡の処方度数
R S−1.50・・遠方視
L S±0.00・・近方視

です。

遠くも近くも、良く見えて良いとのことでした。

ただ、単眼視となり両眼視が出来ませんので『立体視』が出来ない事(不等像視による『融像』のし辛さ)をご説明し、

更に、立って足元をご覧になる際、プリズムの影響で、右眼のみが浮く感じが出る事を説明しましたら、

やはり、『違和感がある』との事でした。

コンタクトレンズでの『モノビジョン』は、眼鏡と違い装用距離による影響が少ないので良いのかもしれません。

見えやすい眼鏡処方と、掛けてて違和感が少なく楽な眼鏡処方とは異なる事を説明し、遠近両用レンズを提案してみました。

眼鏡での『モノビジョン』処方と、『遠近両用』処方の見え方を比べて頂き、同じ慣れが必要なのであれば、『遠近両用』で慣れた方が方が良いとも説明しました。

『遠近両用』の方が、実際に違和感が少ないとの事でしたので、そのまま遠近両用にて作成される事となりました。

このように、左右差が元々少ない方は『モノビジョン』ではなく、『遠近両用』の方が良いと考えます。

もし仮に、完全補正値の左右差が大きな不同視眼であれば、『モノビジョン』にする事も出来たかもしれません。

ただし、基本的には『慣れ』や『見え方』の点に於いて、こちらから積極的にはお勧め致しません。

今回は、自然と『モノビジョン』になってしまった実例がありましたのでご紹介いたしました。

少しでも、皆さまのご参考になればと思います。

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