コンタクトレンズ装用の角膜形状への影響

一般消費者、眼鏡作製技能士を志す方に向けて

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眼球全体の屈折力は約60Dであり、水晶体で約19D、角膜で約43Dとなります。

コンタクトレンズ装用による角膜形状の扁平化は、角膜の屈折力を変化させると考えられております。

つまり、角膜の屈折力が弱くなりますと、近視の屈折度数が弱くなり遠くが見えやすくなります。

コンタクトレンズ装用による、眼軸長の伸展は実証されておりませんので今回は考慮せずに話を進めていきます。

オルソケラトロジー

就寝中に専用の高酸素透過性ハードコンタクトレンズを装用する事により、角膜中心部を扁平化させ遠くを見えやすくする、手術のいらない視力矯正方法です。

コンタクトレンズを外した後でも、数時間は角膜形状が扁平された形状を保つため、裸眼でも遠方視ができます。

2009年に厚生労働省の承認を受け、2017年には対象年齢が改訂されました。

適応年齢は原則20歳以上としながらも、未成年者へは慎重処方となりました。

専用コンタクトレンズの形状は、角膜中心部がFlat(フラット)、中間周辺部がSteep(スティープ)、周辺部はParallel(パラレル)となります。

特殊な形状であり、睡眠時に装用するという点で、より入念なレンズ管理が必要となります。

コンタクトレンズ装用後

一般的に、コンタクトレンズ装用による角膜形状の乱れ(Corneal warpage)は可逆的となります。

つまり、コンタクトレンズ装用による角膜形状の変化(眼の屈折度数の変化)は、外してから、ある一定の時間が経てば元に戻ります。

『屈折矯正手術』や『白内障手術』の前には、ある一定のコンタクトレンズ装用中止期間を設けております。

手術後の屈折度数が変わってしまうからです。

ただ、そのコンタクトレンズ装用中止期間はさまざまです。

日本視能矯正学会の発表(2017年)によりますと、SCL装用眼での角膜形状変化は、『装用中止後3時間まで認められる』との事です。

そして、角膜乱視量、角膜全高次収差量、角膜厚には有意な変化が見られなかったそうです。

また、SCL装用期間と角膜屈折力の変化量にも相関は認められなかったそうです。

ただし、この実験での対象者をみると、『装用中止後の3時間』で良いのかどうかを考えると、全ての人には当てはまりません

研究対象とする件数がたったの13名で少なく、装用期間が5年しかありません。全員がSCLであり、HCLのデータは何もありませんし、矯正視力が1.5以上・・・等々。

明らかに、学生バイトでの実験ですね。

  • この研究での対象者13名(男性12眼、女性12眼)
    • SCL装用期間は平均5年の若年者
    • 屈折異常以外の眼疾患なし
    • 矯正視力1.5以上
    • SCLの装用時間が7時間以上
    • SCLは非着色で球面度数のみ
    • SCLのフィッテングが良好
    • 装用中止直後から21日後までの変化
    • 前眼部形状解析装置を用いての評価

以上の条件での研究となります。

特に、『角膜屈折力』が変化したのにも関わらず、『角膜乱視量』が変化しなかったという事から、角膜中央部が対照的に扁平化していることが推察できます。

『角膜形状の乱れ(Corneal warpage)』は、HCL装用者に多くみられる現象となります。

SCL装用歴が20年以上ある場合の、正乱視成分の安定には7~10日ほど要するなどの報告もあります。

『長期間の装用』や『低い酸素透過素材』の場合には、回復までにより長い期間を要します。

いずれにせよ、コンタクトレンズ装用者が眼鏡を作る際には、これらを考慮しないといけません。

1つの目安として、コンタクトレンズを外してから、3時間以上眼鏡で過ごすかどうかとなります。

寝る前に室内で使用するなど、外して3時間以内に就寝する方には、角膜形状の回復はあまり考慮せず、眼鏡処方しても良いことになります。

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