第51回午前、視能訓練士国家試験の解答と解説①

眼鏡作製技能士向けの問題

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認定眼鏡士の資格制度が2022年3月に終了し、眼鏡作製技能士という国家資格が始まりました。

眼疾患などは『眼科医』が、眼鏡処方は『視能訓練士』が、眼鏡作製は『眼鏡作製技能士』が専門として行うとする意味合いが強い資格制度であるように感じます。

しかしながら、現状として、眼鏡店では眼鏡処方が当たり前のように行われ、『近視です』『遠視です』という医行為とされる診断がなされているところが多く感じます。

それらが悪いとは思いませんが、眼鏡店に勤務される方が眼鏡処方箋通りに眼鏡を作製するだけの国家資格保有者になってしまう事は『悪である』と感じます。

眼鏡業界のレベルが低下していくのではないかと危惧されます。

多くが眼鏡店で眼鏡処方をしているため、『視能訓練士』のレベルは有しておく必要があります。

10年後、20年後にどうなっているのかは分かりません。

私は自分が正しいと思う事はこれからも継続して行うつもりです。

誰の言葉かは忘れましたが、『過去の失敗は笑い話にできますが、やらずに失敗した事には後悔が付きまといます』・・・と。

それでは、

第51回午前(2021年)の視能訓練士国家試験の解答と解説をしていきます。

認定眼鏡士SSS級の試験問題と類似する部分もあります。

問1.視神経線維の発生起源はどれか。

  1.  神経外胚葉
  2.  神経堤細胞
  3.  中胚葉
  4.  内胚葉
  5.  表層外胚葉

正解・・1

神経系の発生起源の殆どが『神経外胚葉』となります。

眼球の発生に『内胚葉』は関与しません。

眼の発生起源

問2.副交感神経支配はどれか。

  1.  外眼筋
  2.  眼輪筋
  3.  瞼板筋
  4.  上眼瞼挙筋
  5.  瞳孔括約筋

正解・・5

『交感神経支配』や『副交感神経支配』は不随意的な筋です。

そのため、瞳孔を縮小させる『瞳孔括約筋』が、副交感神経支配となる事がわかると思います。

  • 外眼筋
    • 外直筋・・外転神経支配
    • 内直筋、上直筋、下直筋、下斜筋・・動眼神経支配
    • 上斜筋・・滑車神経支配
  • 眼輪筋・・眼瞼を閉じる。横紋筋、顔面神経支配
  • 瞼板筋・・眼裂を開大する。平滑筋、交感神経支配
  • 上眼瞼挙筋・・上眼瞼を挙上する。横紋筋、動眼神経支配

問3.遺伝性疾患はどれか。

  1.  Alzheimer 病
  2.  Basedow 病
  3.  Coats 病
  4.  Leber 病
  5.  Parkinson 病

正解・・4

Leber 病(レーベル遺伝性視神経症)は、遺伝性、家族性でミトコンドリア遺伝子病です。

思春期の男子に多く発症します。両眼性であり、比較的急激な高度の視覚障害が起こります。

『Basedow病(バセドウ病)』は甲状腺機能亢進症であり、眼球突出、甲状腺腫、頻脈の3つは『Merseburg(メルセブルグ)の三主徴』とされます。

『Coats病(コーツ病)』は、滲出(しんしゅつ)性網膜症ともいい、若年男子に多く片眼性です。白色の滲出斑、出血、血管瘤、血管新生を伴います。

問4.涙液に含まれないのはどれか。

  1.  分泌型 IgA
  2.  アルブミン
  3.  リゾチーム
  4.  ヒアルロン酸
  5.  ラクトフェリン

正解・・4

『ヒアルロン酸』は、硝子体の主成分ですが、涙液には含まれません。

『分泌型IgA』は、免疫グロブリンです。
『アルブミン』は、栄養素です。
『リゾチーム』や『ラクトフェリン』は、抗菌物質です。

問5.右視索を構成する神経線維はどれか。

  1.  右網膜耳側と右網膜鼻側
  2.  右網膜耳側と左網膜鼻側
  3.  右網膜耳側と左網膜耳側
  4.  右網膜鼻側と左網膜鼻側
  5.  右網膜鼻側と左網膜耳側

正解・・2

求心路は、『網膜-視神経-視交叉-視索-外側膝状体-視放線-後頭葉有線領(Brodmann17野)』です。

網膜耳側からの神経は『視交叉』で交叉せず、網膜鼻側からの神経は交叉します。

例えば、右視索より上方の視路に病変がある場合には、視野の左半分が欠損する『左側同名半盲』となります。

問6.障害者総合支援法に基づく補装具に該当しないのはどれか。

  1.  義眼
  2.  弱視眼鏡
  3.  遮光眼鏡
  4.  拡大読書器
  5.  盲人安全つえ

正解・・4

補装具とは、『失われた身体の一部、あるいは機能を補完するものの総称』です。

拡大読書器は、補装具とまではいきません。
点字器は『補装具』に該当します。

問7.遮光眼鏡が補装具として適用される要件で誤っているのはどれか。

  1.  羞明をきたしていること。
  2.  限定された対象疾患であること。
  3.  分光透過率曲線が公表されている眼鏡であること。
  4.  視覚障害による身体障害者手帳を取得していること。
  5.  補装具費支給事務取扱指針に定める眼科医による選定、処方であること。

正解・・2

上記の他に、『羞明の軽減に遮光眼鏡の装用により優先される治療法がないこと』があります。

問8.橋から出る脳神経はどれか。

  1.  外転神経
  2.  滑車神経
  3.  視神経
  4.  動眼神経
  5.  迷走神経

正解・・1

  • 12対ある脳神経の分布
    1.  嗅神経・・脳幹からの分岐なし
    2.  視神経・・脳幹からの分岐なし
    3.  動眼神経・・中脳
    4.  滑車神経・・中脳
    5.  三叉神経・・橋
    6.  外転神経・・橋
    7.  顔面神経・・橋
    8.  内耳神経・・橋
    9.  舌咽神経・・延髄
    10.  迷走神経・・延髄
    11.  副神経・・延髄
    12.  舌下神経・・延髄

問9.眼心臓反射と関係がないのはどれか。

  1.  眼神経
  2.  散瞳
  3.  徐脈
  4.  副交感神経
  5.  迷走神経

正解・・2

眼心臓反射とは、眼球付近の手術をする際、眼球付近を走る三叉神経(眼神経、顎神経、下顎神経)への刺激から迷走神経副交感神経)への影響により、心臓への徐脈や不整脈、場合により心停止を起こす反射です。

眼心臓反射の治療薬として、副交感神経の活動を抑える『アトロピン硫酸塩』がありますが、『散瞳』は眼心臓反射との直接的な関係はありません。

問10.健常成人における正常値の組合せで誤っているのはどれか。

  1.  角膜内皮細胞密度 500 個/mm2
  2.  眼軸長 24 mm
  3.  杆体細胞数 1 億 3000 万個/眼
  4.  視神経線維数 100 万本/眼
  5.  前房深度 3 mm

正解・・1

角膜内皮細胞密度正常値は 3000 個/mm2 程度です。

問11.対側の神経核から支配を受けるのはどれか。

  1.  外直筋
  2.  下斜筋
  3.  下直筋
  4.  上斜筋
  5.  内直筋

正解・・4

対側支配は、上斜筋と上直筋です。

問12.立体視差の単位はどれか。

  1.  msec
  2.  diopter
  3.  second of arc
  4.  prism diopter
  5.  degree per second

正解・・3

『msec』は、〇ミリ秒
『second of arc』は、弧度〇秒
『degree per second』は、〇度/秒

問13.第1眼位を変動させないのはどれか。

  1.  ボツリヌス毒素
  2.  アトロピン硫酸塩
  3.  ジスチグミン臭化物
  4.  エドロホニウム塩化物
  5.  フェニレフリン塩酸塩

正解・・5

『フェニレフリン塩酸塩』は、瞳孔散大筋の収縮により散瞳作用があります。調節麻痺の効果はありません

『ボツリヌス毒素』は、筋弛緩作用があり、斜視治療などに用います。
『アトロピン硫酸塩』は、散瞳や調節麻痺の効果があります。AC/A比が高くなります。
『ジスチグミン臭化物』は、重症筋無力症における眼の筋力低下や緑内障における眼圧を改善する薬です。AC/A比は低くなります。
『エドロホニウム塩化物』は、重症筋無力症を鑑別診断するために投与される即効性の薬です。AC/A比は低くなります。

問14.Panum の融像感覚圏で誤っているのはどれか。

  1.  ホロプタを挟む。
  2.  立体視に関与する。
  3.  水平と垂直で幅は等しい。
  4.  前後の幅は固視点で最小となる。
  5.  感覚圏より近方では交差性複視を生じる。

正解・・3

融像される視物は、ホロプター上、もしくはパーヌム融像感覚圏にある必要があります。それ以外では複視になります。

パーヌム融像圏に対応する網膜域は、『パーヌム圏( Panum’s area) 』といいます。中心窩は狭く、周辺部は広くなります。

問15.調節障害をきたさない疾患はどれか。

  1.  糖尿病
  2.  Adie 症候群
  3.  重症筋無力症
  4.  動眼神経麻痺
  5.  Fisher 症候群

正解・・3

『重症筋無力症』とは、神経筋接合部における刺激伝達の障害で起こる筋性障害です

眼筋のみが侵される『眼筋型』と、全身が侵されその一部として眼筋が侵される『全身型』があります。

眼瞼下垂、眼球運動障害が不規則に表れます。夕方や、疲れにより増悪するという疲労現象があります。女性では20~40歳代に多く男性では50~60歳代に多くみられます。

『Adie 症候群』は、瞳孔緊張症ともいいます。対光反応微弱、近見反応(+)、片眼性、散瞳を伴います。

『Fisher 症候群』は、外眼筋麻痺、運動失調、腱反射消失を三主徴とする疾患です。

問16~問75は、後半に続く・・

問題を解く事で、必要とされる知識を効率良く学び、吸収する事が出来ます。

眼鏡作製技能士が、視能訓練士、眼科医と連携していく為には必要な事だと考えます。頑張りましょう。

来月にはIOFTも開催されます。今年は誰と行こうかまだ決まってませんが、楽しみが尽きません。

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