レンズコーティングの役割

一般消費者、眼鏡作製技能士を志す方に向けて

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眼鏡のプラスチック素材レンズには、様々なコーティングが表面に施されております。

その役割と効果、更にはレンズの取り扱い方法など説明していきますね。

プラスチックレンズのコーティング種類

  • コートの種類
    • 撥水コート
      • 水ヤケからレンズを面を保護します。
      • 拭き取り易さが増します。
    • 反射防止コート(裏面反射防止のタイプもあります)
      • 反射によるチラつきを抑え、鮮明な視界を与えます。
    • ハードコート
      • キズからプラスチック基材を保護します。
    • 帯電防止コート
      • 静電気防止により、埃を付き難くします。
    • 防曇コート
      • 曇り難くします。

反射防止コート

光がレンズを透過する時には、屈折すると同時に反射もします。

レンズ面での反射は、印象を損なうだけではなく、ゴーストと呼ばれる二重像やチラつきが発生します。

  • 反射の種類
    • 前面から入射した光が、レンズ表面で反射
    • 角膜像がレンズ後面で反射して見えるゴースト
    • 前面から入射した光がレンズ後面で反射し、更にレンズ前面で反射するゴーストイメージ
    • レンズ後面から入射した光が、レンズ裏面で反射

それは、鮮明な視界を遮ってしまいます。

コートなしのレンズ面での反射率は、レンズの屈折率を1.5とすると、約4%となります。

垂直入射の場合(入射角0°)の反射率と透過率は、以下の計算式となります。

  • R[%]={ (n1−n2)/(n1+n2) }2×100
    • R:反射率
    • n1:空気中の屈折率(およそ1)
    • n2:レンズの屈折率

屈折率が高いと、より反射が強くなります

因みに、高屈折率でお馴染みのダイヤモンドの屈折率は2.42であり、計算すると単純な反射率は約17.24%となります。

ダイヤモンドの輝きは最高ですね。

レンズの反射防止コートは、目元をすっきりした好印象にさせます。

透過率も上がる為、視界がくっきりとします。

反射防止コートの原理とは

反射を抑える為に『光の干渉』という性質を応用しています。

光を横波として見た時の位相が、ずれずに反射する(大気中の方が屈折率が高い場合)と打ち消し合い反射が無くなります。

逆に、位相が半波長分(π)ずれる(大気中の方が屈折率が低い場合)と、合成され最も強くなります。

反射防止コートの理想

  • レンズの屈折率nに対して、
    • 薄膜の屈折率は、√n
    • 膜の厚さは、1/√n×λ/4
      • λは波長

となる物質が、逆位相となり山と谷が打ち消し合う理想となります。

実際のレンズは単層膜ではなく、多層膜コートですし、√nの物質も存在しません。

  • 主なレンズ屈折率と平方根の値
    • √1.55=1.225
    • √1.60=1.265
    • √1.67=1.292
    • √1.74=1.319
    • √1.76=1.327

以上のような物質を、真空蒸着やスパッタ法などで薄く付けます。

例えば、MgF2(n=1.38)や、SiO2(n=1.46)などです。

機械強度などの物性も考慮し、反射防止効果が最大限に得られるような蒸着物質を選択してます。

ハードコート

シリコーン系ハードコートは、加熱によるシラノール同士の脱水縮合反応により硬化し、ガラスに似たシロキサン骨格からなる強靭な被膜を形成します。

基本的に、水晶やガラスと同様な骨格を持つ為、紫外線や熱などの影響で色や硬さの変化量が少ないのが大きな特徴です。

その反面、ガラスに類似した被膜は脆く、プラスチックとの熱膨張係数の差が大きいこともあり、被膜にクラックが入ったりもします。

ハードコートの干渉縞

レンズ基材とハードコート素材の屈折率に差がある場合や、膜厚が不均一であると干渉縞が生じます。

屈折率が低いSio2微粒子を用いたハードコート膜の屈折率は1.50が限界であり、1.60を超える場合にはTio2を主成分とした微粒子(コロイダルチタン)を用います。

しかし、このTio2は、光活性が強い物質であるため、他の金属酸化物(酸化セリウム、酸化ジルコニウム、酸化珪素など)と複合化させて光耐性を上げています。

屈折率1.70を超えるレンズの場合には、複合コロイダルチタンとシランカップリング剤をベースとした場合、他品質とのバランスを考慮すると、十分な屈折率を確保するのは難しいようです。

ハイインパクト加工

反射防止膜コートを設けると、耐衝撃性は低下します。

つまり、脆くなります。

1995年のPL法の施工に伴い、この耐衝撃性を向上させる為に、ハイインパクト加工レンズが発売されました。

一般的に、ハイインパクト化する為に、レンズ生地とハードコート層の間に、プライマー層というのを設けています。

密着力を助け、衝撃吸収としての役割もあります。

  • プライマー層の例
    • ポリウレタン系樹脂
    • ポリビニルアセタール系樹脂
    • アクリル酸系樹脂
    • 酢酸ビニル系樹脂
    • アミノ系樹脂
    • シリコーン系樹脂
    • エポキシ系樹脂
    • ポリエステル系樹脂
    • ポリアミド系樹脂
    • ビニルアルコール系樹脂
    • スチレン系樹脂
    • メラニン系樹脂

レンズの正しい取り扱い

ゴミや埃が付着している時は、キズに強いコート加工のレンズでも、まず水洗いしましょう。ティッシュペーパーで水気をとり、眼鏡専用クロスで軽く拭きましょう。空拭きしますとキズが入ります。

汚れがひどい時は、中性洗剤を薄めた液で洗いましょう。その後は水洗いをしましょう。その後、水気をとり軽く拭きましょう。石鹸やハンドソープ、ボディソープ等のアルカリ系や酸性洗剤は使用しないでください。コート膜がはがれる原因となります。

水やお湯に漬け置きするのはやめましょう。コート膜が弱くなり、はがれの原因となります。

眼鏡が濡れた時は、すぐに眼鏡拭きで拭きましょう。そのまま放置しますと、レンズに水跡がシミのようになって取れなくなります

保管する時は、防虫剤や洗剤、化粧品、整髪料、薬品等と一緒にしないでください。劣化の原因となります。

60℃以上にさらされたり、急激な温度差に合うと、表面のコート膜がひび割れします。熱により、レンズの変形や枠から外れたりします。例えば、サウナやドライヤー、煙草の火、焼肉屋さん、炎天下の砂浜、炎天下の車庫は70℃以上にもなります。

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