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眼鏡を作る時など、眼鏡屋さんで測定してもらう事ありますよね。
その眼鏡の処方度数は、決まった1つのモノではなく、決める検者によってバラバラなんです。
いわゆる、処方の『上手』や『下手』がある訳です。
それは、年齢とか役職とかは関係無いように感じます。知識量と経験、処方のセンスが重要です。
日本では現在、認定眼鏡士という民間資格はありますが、国家資格ではありません。
2022年の春にどうなるかですが…。
要するに、誰でも眼鏡処方を決める事が出来てしまいます。
これからお伝えする『処方に関しての内容』は、実績がありますので、役立つ内容となる事でしょう。
その根拠とは、
以前、一定期間に測定した被検者(数千人)の、再検査となった処方の割合を出した事がありました。
数字を詳しくはお伝え出来ませんが、自分の再検率は他スタッフの約6割程でした。
そのテクニックなどの一部を、簡単にお伝えしていきますのでよろしくお願いします。
処方するまでの簡単な流れ(問診)
データが無いまま、眼鏡処方は出来ません。処方の根拠となるデータを集めるところから始めます。
つまり、問診によりお客様の眼の状態を大まかに把握し、処方値をどのようにするかの方向付けをします。
例えば、何に困り、何に不便を感じ、眼鏡でどうしたいのか、どういった時に使用されるのか・・等です。
データは多い程、良いです。それが処方の手助けとなります。
問診する時には、想像力を膨らませ、お客様からより多くの情報を聞き出すコミュニケーション能力も必要となります。
- データとなる例(問診)
- 今まで使用していた眼鏡について
- 眼鏡度数とその視力
- 見え方や疲労感の有無
- 見え方と使いやすさは一致しません
- レンズ表面の傷の有無
- 性格やライフスタイル、職業などを想像する
- レンズの設計(非球面設計など)
- 度数以外に、設計やコート
- コンタクトレンズについて
- 度数が左右同じかどうか、乱視の有無
- 主に眼鏡を室内で使用するのかどうか
- オートレフラクトメーター(他覚測定値)
- 他覚測定値の信頼度
- マイヤーリングの乱れ
- 瞳孔径や反応
- 眼振の有無
- 自覚測定値
- 受け答えの反応スピード
- 自信を持って答えているかどうか
- 受け答えの反応スピード
- その他
- 年齢(授業中、運転用、職業、主婦)
- 眼鏡使用期間とその調子
- どの位の期間で度数を交換したのか
- 特別な視機能欲求(趣味や職業)
- 健康状態(白内障、糖尿病、手術後)
- 家族歴(遺伝による斜視や近視)
- 容姿や性格(眼の大きさ、レンズの厚み)
- 今まで使用していた眼鏡について
問診により、両眼視機能低下の問題なのか、調節機能低下の問題なのかを振るい分ける事もできますね。
予備検査により、斜位の有無や輻輳近点が正常かどうか、眼球運動や瞳孔反応、外眼部の状態や視野テスト、色覚テストなどにより、疑問が疑われるところを重点的に測定していく流れとなります。
処方決定までの大まかな流れは以上となります。
では、続いて実際に起こり得る、
『一度眼鏡を作成して頂いたものの、不具合を感じ、再作成』となる例を挙げていきます。
問診による主訴と副訴が最初と後で変わる
受付の段階で、『現在使用中の眼鏡が遠くが見えない』という事で測定する事になった筈だったのが、
近い距離が見えづらくなるからとか、視力が1.2も見えているからなどの理由で、
気付いたら、弱い処方や同じ度数での作成に決まり、『今までの眼鏡より遠くが見えやすくなっていない』場合には、
現在の眼鏡と何ら変わらないものになってしまいます。
主訴が『遠くが見えない』、副訴が『近くも見えない』場合には、優先順位をしっかりお伝えしないといけません。
この場合には、実際に新しい眼鏡を使用してみたら、やっぱり『遠くが見えづらくて使いづらい』という訴えが起こり得ます。
それで良いのかをしっかりとご説明しましょう。
被検者に言われるがままの、根拠が無い処方
弱く処方する場合には、『強いと慣れづらい』や、『近くが疲れやすい』などの理由が必ずあります。
極論、違和感が無ければ、一番良く見える『完全補正のままの度数』で問題ありません。
再検査となる場合に、『何となく、お客様が弱くしたい』と言ったからなどは処方は理由になりません。
『弱く処方する利点が無い』処方は良くありません。
逆に『強く処方する利点が無い』処方も良くありません。『視力が0.5しか見えていないから強くしました』なども、理由とはなりません。
『遠くが見えづらかったので強くしました』であれば理由となりますが、視力が0.5であっても、見え方に問題が無いのであれば変えない方が良いですね。
何故なら、その人の生活には視力0.5で十分であると考えられるからです。それ以上求めていない事が多いからです。
年齢による調節力低下や適応力、使用状況などの理由があっての処方を心掛けましょう。
現在使用中の眼鏡度数を無視
過補正の場合に、度数を弱くし今までよりも見えなくなり使いづらくなる処方は良くありません。
一般的に、日本では5mの距離での測定ですので、5m先が一番良く見える度数の測定となります。
つまり、5mよりも遠い距離の場合には計算上では0.2D過補正となっていた方がより見えやすい度数となります。
何でもかんでも『過補正は必要以上の強さ』だから『弱く処方する』という親切心は、逆に見えづらい眼鏡になってしまいます。
問診により、『疲れやすい』などの訴えがある場合には良いですが、その旨はお客様にご説明するべきです。説明無しでの弱補正は独り善がりの処方です。
他には、
今までの眼鏡が良好であれば、視力が出ていなくても変えると慣れが必要となります。変える事で、新しい問題が出る可能性はある事を伝えましょう。
更には、片眼だけ変える事は、両眼共に変える事よりも慣れが必要となりやすいです。但し、元々気になっていたのであれば問題はありません。
多少、モノビジョンとなっていて両眼視が出来ていなくとも、今まで問題が無かったのであれが、変えるという事は『小さな親切』『大きなお世話』となってしまいます。
累進多焦点レンズの処方は、単焦点レンズの処方の仕方とは異なりますので、『累進多焦点の遠くの見え方と同じ度数で作って欲しい』という場合には、累進レンズの見え方が問題無くても、お客様の言われるがままの作成はお勧め致しません。
また、その逆の事も言えます。
遠用単焦点レンズが良好だからといって、そのままの遠用度数での遠近両用レンズもお勧め致しません。累進レンズは視野が狭くもなりますし、乱視は強めに補正した方が設計上良いですし、累進レンズのメリットとデメリットをしっかりお伝え致しましょう。
遠近両用レンズの場合に、近くを楽にする目的での遠用度数の弱補正もお勧め致しません。近くを楽にしたいのであれば中近両用レンズなどにするべきです。
加入度数を強くしても、近点が近くなるだけであり、累進帯長を短くするか中近にした方が楽になる筈です。
処方度数の良い点しか伝えない、その場限りの処方
例えば、今までの眼鏡が『近くが見えづらい』という事で、『弱くした度数(プラスよりの度数)』の場合には、『遠くが見えづらくなる』違いもお伝えしましょう。
近くが見えやすくなっても、遠くが見えづらくなり『使いづらくなる』という事は、測定者も被検者も本望ではありません。
場合によっては、累進多焦点レンズをお勧めすることが重要となります。単焦点レンズで、遠くと近くの両方とも見えやすくする事は難しい場合が殆どです。
遠視の方であれば可能性としてはあり得ますが、日本では殆どが近視となります。
度数を変える場合には、例えば、『乱視を強くしました』ので『ぶれが少なくなり、鮮明に見えるようにはなりますが、足元が浮く具合が強くなります』や『乱視の方向により、縦の動きが強くなります』『物が縦に縮小します』『強くした方の見え方が近づいて見えます』など、具体的な違いをお伝えするようにしましょう。
使い方の提案が無い
見たい距離や合わせる距離などにより、処方度数は変わります。見たい距離が違えば、その適している度数も変わります。
遠くが良く見える眼鏡で近くを見るという行為は、適した使い方とはいえません。
遠近両用眼鏡とは今まで知らずに使用されているお客様も見受けられます。
『最近、他のお店で眼鏡を作成したのですが、近くが見えづらいので遠近両用にしたいです』という訴えで、眼鏡度数を見ると既に遠近両用レンズになっている事もありました。
作成時に、使い方などは説明されている筈なのですが、
『上手く伝わっていない』のか、そもそも『遠近両用と教えられていない』のかは分かりませんが、どちらにせよ、
『そちらの眼鏡は遠近両用ですので、目線を下げてレンズの下で見て下さい』というと、
『見えやすくなった。知らなかった・・』という事で、
『スペアが必要とかでなければ、それでちょっと使ってみて下さいね。』とご案内することも、しばしばあります。
使い方の説明や、提案などは伝わるようにしましょう。話す事と伝える事とは異なります。
また、使う状況を想像しながら処方しましょう。
例えば、普段裸眼で生活されている方はどういう眼鏡の使い方になるのかを思い浮かべてみましょう。
必要時に使用するのであれば、遠くをしっかり見える状態に処方した方が良いですし、その場合、常に掛けるには目が疲れやすくなります。弱く処方するのは、裸眼とあまり変わりません。
ファッションとしての使い方であれば、度無しで良い事になります。しかし、紫外線のカットなどは出来ても、遠くが見えやすくはなりません。
これも使い方の提案です。
コンタクトレンズ中心の方は、主に自宅で使用することが多いので弱め(VDT作業が多いのかどうかや・・)でも大丈夫ですが、運転時などでも使うのであれば必要となる視力は少なくとも0.7以上ですし、夜間や高速道路での使用が多いのかどうかでも処方の提案方法は変わります。
年齢による調節力を考慮していない
10代の処方と45歳以上の方の処方では、勿論使い方が変わると処方も変わりますが、それ以外に『老視』の状態なのかどうかも考慮しないといけません。
10代は調節力が強いため、あまり近くを意識した処方にしなくても良いですが、
40代からは近くも考慮して処方しないといけません。
遠くを見えやすくした為に、近くは眼鏡を外さないといけなくなってしまう場合には、『その使い方で良いのかどうか』等の確認は必ず行いましょう。
その為には、大まかな明視域の計算は出来るように最低限ならないといけません。ざっくりの距離で良いです。
それによっての提案方法も変わってきます。
遠用眼鏡と近用眼鏡の使い分けがよいのか、遠近両用と近く用が良いのかどうか等の提案です。
被検者の話を聞かない、独り善がりの処方
数字的に正しい処方や、良く見える眼鏡、使いやすい眼鏡の処方はそれぞれ異なります。
生活仕様によっても処方は変わります。
測定時の主役は測定者ですが、処方決定時の主役はお客様です。この事を忘れてはいけません。
お客様の話は最後まで遮らずに聞きましょう。
確かに、同じことを何回も強調してくる方もいますし、『要するに・・でしょ(確認以外で)』と言いたくなる事もありますが、自分の中で答えが出てしまった時点で、それ以降の話は耳に入らなくなってしまいます。
話を遮って、優位に立ちたい感情は捨てましょう。
話を遮った時点で、お客様は話したく無くなります。こちらの意図とは裏腹に・・。やめましょう。
それは、同僚の間でも通じる大切なことです。余談ですが、正論はつまらない事が多いですね。
自分が測定した、自覚測定値を信頼し過ぎている
年齢を重ねる事で知識が増えてきます。そうすると価値観というのも固定化され、柔軟さが失われていく事が多いです。
そして、自分を過信する傾向にあります。
例えば、今までの眼鏡と測定した値の乱視軸が90°違う場合や、左右の度数差が違う場合には、
自分が間違っている可能性も考えましょう。今までの眼鏡の方が良い可能性も十分考えられます。
物事は柔軟に考えましょう。
不同視の左右差は2.00Dまでと決めつけないという事も必要ですし、最新の情報をどんどん吸収し、アップデートしていく事が必須不可欠となります。
まとめ
再検査による処方交換が多い方は、必ず何かしらの原因があります。
見え方に満足を与えられていないという事実を真摯に受け止めましょう。
『お客様が悪い』とか『・・だから言ったのに』とか『だって、たくさん測定してるし』という考えは、成長が止まります。成長したいのであれば、これを機会にやめましょう。
そして、誰かに処方の仕方を教えてもらいましょう。聞く人も選びましょう。近くにいる人や聞きやすい人ではなく、知識がある人に聞きましょう。
そして、訳の分からないくだらないプライドは捨てましょう。向上心は常に持ち続けましょう。
全ては、お客様の為です。
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