米国式21項目検査

一般消費者、眼鏡作製技能士を志す方に向けて

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アメリカ発祥の『米国式21項目検査』とは、アメリカの国家資格である『オプトメトリスト』により推奨される両眼視機能検査です。

一方で、ドイツのハーゼ理論による『ドイツ式両眼視機能検査』という、ドイツの国家資格である『マイスター』により推奨されるものもあります。

大まかな違いは『部分矯正』か『完全矯正』、『単眼測定』か『両眼開放測定』、『プリズム分離』か『偏光による分離』など・・です。

特に優劣はないと考えております。

以下に、米国式21項目検査を示しますが、全て行うと時間がかなりかかります。

被検者への負担を考えますと、問診や予備検査にて予測される必要な項目のみを選択的に実施するのが効率的だと考えます。

視機能検査のフロー

視機能検査とは、視機能の個々の機能状態を調べる検査です。

視機能検査では主に4つの視機能(視力、両眼視、輻輳・開散、調節)について調べられます。

その実施方法は問診と予備検査でまず検査の方向付けをします。更に、屈折検査の結果も参考にして視覚(両眼単一明視)に関する視機能状態を主に調べるテストを選択して行います。

数々のテストがあるが、全てのテストを全てのお客様に実施することは不可能でありあまり意味がないと考えます。個々の訴えの原因を発見する為に、必要なテストをより的確に正確な検査の方向付けがまず必要です。

問診で尋ねるべき内容

視機能低下で生じる症状の特色

予備検査

問診で推測された視機能問題を予備検査で確認するのが目的です。

視力検査

遠方と近方での視力測定。更に、単眼と両眼の視力測定を遠方と近方で実施することで眼鏡度調整後のクレーム対応がしやすくなります。

カバーテスト

両眼視の状態(斜視、又は斜位)、眼位の種類、程度を簡単に検査できるテストです。

「カバー・アンカバーテスト」と「交互カバーテスト」から成り立ち、カバーテストの結果から両眼視状態を間接的に把握します。

斜位の種類からも、ある程度、両眼視問題の推測が可能です。内斜位や上下斜位は両眼視問題が生じやすい。

【注意事項】 偏心固視などの固視異常のある被検者にカバーテストを行っても正確な結果は得られません。只、スクリーニング的に利用する目的であればカバーテスト前に固視状態を調べる必要はありません。

輻輳力テスト(NPCテスト)

お客様の輻輳力の把握をします。期待値は鼻の付け根から約8㎝内で分離が見られる事です。これ以上に測定値が大きくなった場合、輻輳機能に何かしらの問題があると疑い本検査で関連するテストの実施が必要です。

輻輳機能低下が全ての検査後確認されれば視機能訓練やプリズム補正が必要です。

【注意事項】

① 固視点を近づけていく間、何度も固視を促す事により輻輳力を最大限発揮してもらいます。

② 複視を訴えない場合があるので、お客様の両眼の動きに注意する。複視に気付かない原因は、外転した眼に抑制が生じたか、外転した眼に生じた像のずれに気が付かないかのどちらかである。

③ 固視点をお客様に近づけていくと、固視点がボヤケるという訴えがある場合がありますが、融像性輻輳を使い切って調節が介入しその結果ボヤケが生じたと考えられます。しかし、調節の介入があればそれによる調節性輻輳で固視点を固視できますので、複視の訴え、又は一眼の外転が観察されるまでそのまま近づけていけば良いです。

● 調節テスト

予備検査の中に調節を直接調べるテストは入っていません。近方での固視点を使う予備検査での他のテスト(カバーテストやNPCテスト)で指示通りボケずに固視できれば調節はほぼ問題なしと判定できます。

調節についてより詳しく調べる必要がある場合はフリッパーテストなどの実施をします。

眼球運動テスト

三種類の眼球運動が調べられます。

①単眼運動(ひき運動)、②両眼共同運動(むき運動)、③両眼離反運動(よせ運動)が調べられます。但し、よせ運動は本検査でプリズムよせ運動などで詳しく調べられるますので予備検査では一般的に行いません。

むき運動の検査はまず両眼状態で行われます。もし、この検査時に運動障害の疑いがあれば一眼ずつ検査(単眼ひき運動)が行われます。

両眼視野の広さは眼前30㎝に位置する固視点に対して、約30㎝の正方形に相当します。固視点をこの正方形内で左右上下に動かし、眼のみ動かすよう指示し、その眼球の動きを観察します。

【一般的ルーティン検査法】

① 固視の観察・・・第一眼位で単眼固視を促した後、安定した固視の有無及びその維持状態を観察します。その後、両眼でも同様に観察します。

② 滑動性眼球運動の検査・・・どの方向でもスムーズな動きが観察されるのが正常です。

③ 衝動性眼球運動の検査・・・両眼視野内で2つの離れた固視点を指示に従って交互に見てもらい、どの方向でもスムーズ、俊敏、そして正確な動きが見られるのが正常です。

米国式21項目検査

【予備検査】
視力測定
PDの測定
カバーテスト
輻輳近点テスト(NPCテスト)
利き目テスト
眼球運動テスト
瞳孔反応テスト
外眼部反応テスト
視野テスト
色覚テスト

【米国式21項目検査】
#1 直像鏡による外眼部、水晶体、眼底などの検査
#2 角膜曲率半径の測定
#3 裸眼、又は従来の装用度数を通しての遠方水平斜位
#4 静的検影法
#5 動的検影法(50㎝)
#6 動的検影法(1m)
#7 自覚屈折測定検査(バランステスト含む)
#8 #7における遠見水平斜位
#9-10 #7における遠見輻輳力(実性相対輻輳PRC)
#11 #7における遠見開散力(虚性相対輻輳NRC)
#12 A #7における遠見上下斜位
#12 B #7における遠見上下方向開散力
#13 A 裸眼、又は従来の装用度数を通しての近見斜位
#13 B #7における近見水平斜位(およびAC/A)測定
#14 A 単眼調節ラグ測定
#14 B 両眼調節ラグ測定
#15 A #14Aにおける近見水平斜位
#15 B #14Bにおける近見水平斜位
#16 A-B 近見輻輳力(実性相対輻輳PRC)
#17 A-B 近見開散力(虚性相対輻輳NRC)
#18 A 近見上下斜位
#18 B 近見上下方向開散力
#19 A 調節近点測定(プッシュアップ法)
#19 B マイナス球面レンズによる調節力測定
#20 近方実性相対調節力PRA
#21 近方虚性相対調節力NRA

#1・・直像鏡による外眼部、水晶体、眼底などの検査

#1の直像鏡ですが、像の反転がなく、確認できる範囲が狭いです。一方で、倒像鏡は、像の反転があり、一度に確認できる範囲が広いです。

角膜、虹彩、水晶体、眼底などを見ることが出来ます。

眼鏡店で何らかしらの判断はできても、診断は医療行為となりますので、一般の眼鏡店では省略されることが多いです。

やはり、専門は眼科さんです。

#2・・角膜曲率半径の測定

#2の角膜曲率半径の測定ですが、コンタクトレンズを作成する為には必要ですが、一般の眼鏡店では必須ではありません。

オートレフラクトメーターとオートケラトメーターが一緒になった測定機器の方が勿論良いのですが、ケラトメーター機能がないものでも、画像で角膜の状態を確認できますので必須ではありません。

角膜曲率半径を測定できると何が良いのかといいますと、角膜乱視がわかる事です。

全乱視と角膜乱視の差は、約3/4が1.0D未満であり、全乱視と角膜乱視がほぼ等しいか、角膜乱視の方が大きい割合は約95%となります。

また、経年変化を辿ることで、軸性か屈折性かを推測する事が可能となります。

#3・・裸眼、又は従来の装用度数を通しての遠方水平斜位

#3の裸眼または使用中の眼鏡装用度数での遠見水平斜位ですが、#13A近見水平斜位の測定もまとめて行います。

上下斜位測定は21項目には含まれませんが、#3や#13A同様に測定します。

#4・・静的検影法

#4の静的検影法は、自覚測定ではなく、他覚測定となります。

一般眼鏡店での多くは、オートレフラクトメーターで簡単に正確に測定できる為、高い技術が必要となる『レチノスコープ』での検影法を行うところは少ないです。

#5・・動的検影法(50㎝)、#6・・動的検影法(1m)

#5と#6の動的検影法では、検査距離が50cmと1mという事で、調節刺激による調節反応がわかります。

MEMテストや、読み物検影法などで測定される他覚的調節ラグ測定です。

左右の調節バランス、近見時の乱視度数や乱視軸などがわかります。

#7・・自覚屈折測定検査(バランステスト含む)

#7の自覚屈折測定は、両眼視力1.0を得られる度数を求める測定となります。

#7Mでは片眼での視力1.0を求め、#7aでは両眼での最高視力を得る最もプラス寄りの度数を求めます。

#8・・#7における遠見水平斜位

#8の遠見水平斜位測定では、米国式ではプリズム分離法が一般的です。

マドックスロッドによる斜位測定も出来ますが、毎回同じ方法で測定された遠方と近方斜位を比較するのが理想となります。

斜位の測定方法が異なると、視機能状態の把握をするためのデータ比較に違いがでるからです。

#9-#10・・#7における遠見輻輳力(実性相対輻輳PRC)

#9の遠方内寄せテストと、#10の(調節性)輻輳テストですが、両眼同時に基底外方のプリズムを付加していきます。

『ぼやけ』までが#9であり、『分離』までが#10となります。

#9は全実性融像性輻輳(期待値は約9△)であり、#10は調節性輻輳(期待値は約19△)となり、#10テストの『回復』は両眼視の質を推測することができます。

#9-10テストを行う場合には、先に#11の遠見開散力テストを行ってから#9-10をしましょう。

その理由は、輻輳した直後では、その影響があるからです。

#11・・#7における遠見開散力(虚性相対輻輳NRC)

#11の遠方外寄せテスト(期待値は約9△)では、両眼同時に基底内方のプリズムを付加していきます。

基本的には『ぼやけ』は無く、『分離』と『回復』があります。

『ぼやけ』がある場合には、調節緩解による開散が考えられます。つまり、#7がマイナス寄りに測定された事を意味します。

#12・・A #7における遠見上下斜位、B#7における遠見上下方向開散力

#12Aの遠見上下斜位と#12Bの遠見上下方向開散力ですが、特に、測定中はレンズの中心で見てもらいましょう。

顔が水平方向で傾くと、そのまま測定の値に大きく影響します。

眼鏡作製の時に、基本的には左右のレンズ光学中心の高さを同じにするのと一緒です。

PDは、基本的には、測定時のPDと同じにするので良いですが、上下はしっかり合わせた方が良いです。

ご自身の輻輳や開散で合わせる事が難しいからです。

#13・・A 裸眼、又は従来の装用度数を通しての近見斜位、B #7における近見水平斜位(およびAC/A)測定

#13Aの裸眼または使用中の眼鏡装用度数での近見水平斜位#13Bの#7での近見水平斜位ですが、#3や#7と同じ測定方法で統一させた方がデータ分析の点で良いです。

#7に+1.00Dを付加した状態で近見水平斜位を測定する事で、Gradient AC/A比を求める事もできます。

Heterophoria AC/A比の計算は、2.5(測定距離40cmの場合)で割ったり、PD[cm]を足したりと面倒です。

#14・・A 単眼調節ラグ測定、B 両眼調節ラグ測定

#14Aの単眼調節ラグ#14Bの両眼調節ラグでは、単眼では調節力によるラグを、両眼では輻輳による調節が介入したラグ測定となります。

調節ラグとは、調節刺激ASと調節反応ARの差です。

40cmの距離での調節刺激は2.5Dですが、調節反応が変動せずに毎回一定になるような工夫が為されております。

ピント合わせを要求しない(調節反応が起こらなくても明視できる)十字視標を用います。ひらがな視標では、『見る』と『読む』では調節反応が変動してしまいます。

かつ、クロスシリンダーにより焦点が合わないようにもします。

老視眼での、近用加入度数決定の為に測定される場合もありますが、基本的には非老視眼を対象としています。

#15・・A #14Aにおける近見水平斜位、B #14Bにおける近見水平斜位

#15Aと#15Bの近見水平斜位では、使用する視標が異なります。

#15Aでは、#14A後のクロスシリンダー装用のまま十字視標を用います。

#15Bでは、#14B後のクロスシリンダーを外した状態仮名視標を用います。

#16・・A-B 近見輻輳力(実性相対輻輳PRC)、#17・・A-B 近見開散力(虚性相対輻輳NRC)

#16の近見輻輳力と#17の近見開散力では、それぞれ#16A(期待値は10△以上)と#17A(期待値は10△以上)は『ぼやけ』まで、#16B(期待値は約21△)と#17B(期待値は約22△)は『分離』と『回復』となります。

#17Aの近見虚性相対輻輳測定テストでは『ぼやけ』があります。

遠方では、プリズム基底内方を加えても『ぼやけ』は基本的には生じませんが、近見では調節が介入した状態となりますので『ぼやけ』が生じます。

プリズム基底内方により、虚性融像性輻輳の限界に達した際に、調節を緩めることで虚性調節性輻輳を生じさせるためです。

#18・・A 近見上下斜位、B 近見上下方向開散力

#18Aは近見上下斜位で、#18Bは近見上下方向開散力です。

特に、調節は水平方向に比べ、垂直方向の眼球運動に対してあまり影響しません。

垂直斜位が『ほぼ正位』の場合には、斜位を補うべき垂直よせ運動力をあまり考慮する必要がないという考えから、垂直よせ運動テストは省略されることもあります。

水平と垂直方向の両方向の眼筋の不均衡状態が観察された場合には、垂直方向のみをプリズム補正することで、水平方向の不均衡が消失することもあります。

#19・・A 調節近点測定(プッシュアップ法)、B マイナス球面レンズによる調節力測定

#19Aの調節近点測定(ドンダーズのプッシュアップ法)では、指標が被検者に近づくほど、相対距離拡大法による倍率効果が増しますので網膜像が大きくなります。

その為、測定される調節力も若干大きめに測定されます。

OEP (Optometric Extension Program)の検眼標準化(Standard practice:21項目検査)では、#19テストには含まれません

#19Bの『マイナス球面レンズによる調節力測定』では、測定距離を40cmではなく、33cmとしています。

その理由としては、マイナス球面レンズ付加による視標の縮小があるからです。

調節力の過小評価を防ぐために、測定距離は33cmとしますが、計算上は40cmとして計算します。

1/0.33=3Dとはせずに、1/0.4=2.5Dとして計算します。

計算の例は以下の通りです。

  • マイナスレンズ付加法による調節力
    • 調節力[D]=−(マイナスレンズ付加量[D])+2.5[D]

因みに、『ドンダーズのプッシュアップ』による調節力は以下の計算で求められますが、『マイナスレンズ付加法』よりも若干大きくなります。

  • プッシュアップ法による調節力
    • 調節力[D]=1/眼鏡面からボケ点までの距離[m]

#20・・近方実性相対調節力PRA

#20の近方実性相対調節力(期待値は−2.00D以上)ですが、『ボケ』が生じるまで、両眼にマイナスレンズを付加していきます。

この『ボケ』が生じる理由ですが、

マイナスレンズを付加していくと、調節性輻輳の為、複視が生じようとします。

しかし、自己の虚性融像性輻輳(NFC)により調節性輻輳(AC)を打ち消すことで、単一視を保とうとします。

マイナスレンズの付加が、虚性融像性輻輳の限界に達した時に2つの選択を迫られます。

1つ目は、調節の反応による、調節性輻輳を許した『複視』です。

2つ目は、調節の反応をせずに、マイナスレンズによる『ボケ』です。

一般的に、視機能システムは『複視』よりも『ボケ』を選びます。

虚性融像性輻輳の限界で調節反応を止め『ボケ』が生じます。

『複視』が生じる場合には、調節と輻輳の相互関係が正常に機能していない可能性があります。

調節と輻輳の相互バランスを崩さない範囲内で許される調節の変化の程度を測定しているという解釈も出来ます。

#21・・近方虚性相対調節力NRA

#21近方虚性相対調節力(期待値は+2.00D以上)では、『ボケ』が生じるまで、両眼にプラスレンズを付加していきます。

この『ボケ』が生じる理由 ですが、調節を弛緩させることにより虚性調節性輻輳(NAC)が起こり複視が生じますので、自己の実性融像輻輳(PFC)でこのNACを打ち消すことが必要となります。

打ち消すことができる限り、プラスレンズを付加することが出来ます。

PFCの限界に達した時に#20と同じ理由で『ボケ』が生じます。

#21の測定値は、虚性相対調節というよりも実性融像性輻輳に影響を受けた調節弛緩量を示していると考えることができます。

#20と同様に、#16Aの測定値確認を目的として扱うことが出来ます。

相対調節

#20と#21での『相対調節』という言葉に対しては、適切ではありません。

輻輳を一定に保ちながら調節反応を変化させることは出来ないからです。

相対調節テストは、両眼単一視を維持した調節を測定しますが、テスト中は輻輳の変化も生じます。

ですので、『相対調節』という用語は、テスト内容を正確に表現していません。

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