第51回午前、視能訓練士国家試験の解答と解説②

眼鏡作製技能士向けの問題

Last Updated on 1年 by 管理者

現在のUSD/JPYの為替レートは142円35銭と24年ぶりの円安が続いております。

利上げをしたいアメリカと、マイナス金利政策をしている日本による金利差が原因です。

政府の為替介入も2国間の合意が無ければ行われない筈ですので、更なる一段上の円安が予想されます。

2023年の3月頃には1ドル135円、9月には125円になっているという投機筋の話もありますが、中・長期では逆に160円や180円まで円安が進んでいるかもしれません。

一時的に145円を付け、少し円高に戻してはおりますが、急に上がり過ぎたUSD/JPYの調整中といった所でしょうか。

日本がダメで円が売られている訳ではないにしろ、海外に拠点を持たない日本企業にとっては、胸が痛い話です。

頑張れ『鯖江』

問16.50 cm の距離で4cm 光線を偏向させるプリズムの偏角[° ]はどれか。

  1.  2
  2.  3
  3.  4
  4.  5
  5.  6

正解・・3

1mの距離で1cm光線を偏向させるプリズム量を1Δと定義しますので、50cmの距離にて4cm偏向するプリズム量である8Δの偏角[ ° ]を求めれば良いという事になります。

100cm先の距離で8cm偏向しますので、偏角をθとして
tan−1θ=8/100 を計算しますと、
θ≒4.57° となります。

近い解答は、3番の4°、もしくは4番の5° となります。

【別の計算方法】を以下に示します。

1Δの偏角(フレ角)を以下のように近似として考える事もできます。

1Δの偏角≒0.573°

上図から、『1Δ≒0.57°』となります。

よって、8Δ=0.57×8≒4.56°

厚生労働省発表の公式解答は、『3番の 4° 』となっておりますが、『1Δを0.5°』としているようです。

問17.眼の屈折値がプラス側に移行するのはどれか。

  1.  眼軸長が伸びる。
  2.  涙液層が厚くなる。
  3.  角膜曲率半径が小さくなる。
  4.  水晶体の屈折率が低下する。
  5.  網膜の曲率半径が大きくなる。

正解・・4

眼軸1mmの伸展で、およそ3.00Dの近視化が起こります。

涙液層が厚くなりますと、屈折力は凸方向に強くなります。

角膜曲率半径が小さくなりますと、角膜前面カーブは強くなりますので、屈折力は凸方向になります。

水晶体の屈折率が低下しますと、屈折力も低下し凹方向になります。

網膜の曲率半径が変化した場合でも、眼軸長が変化しなければ屈折力は変化しません。

眼の屈折力(眼の要素)が凸方向になる選択肢は、1番、2番、3番
眼の屈折力(眼の要素)が凹方向になる選択肢は、4番 となります。

問)では、『眼の屈折値がプラス側へ移行するのはどれか』とありますがこれでは正解が3つ存在することになります。

『眼の屈折値』ではなく、『焦点の位置』がプラス側へ移行する選択肢であれば、4番が正解となります。符号規約では、左方向をマイナス側、右方向をプラス側とする為です。

問18.Gullstrand 模型眼について最大調節時の全屈折系屈折力[D]で正しいのはどれか。

  1.  20
  2.  40
  3.  50
  4.  60
  5.  70

正解・・4

Gullstrandの模型眼での全屈折系は、
非調節時・・58.64[D]、最大調節時・・70.57[D]としています。

  • 角膜屈折系では、
    • 非調節時・・43.05[D]
    • 最大調節時・・43.05[D]
  • 水晶体系では、
    • 非調節時・・19.11[D]
    • 最大調節時・・33.06[D]

他の模型眼では、Listing や Helmholtz などがあります。

問19.−6.50D の眼鏡装用している患者がコンタクトレンズに変更する場合、コンタクトレンズの度数[D]として最も近いのはどれか。

  1.  −6.00
  2.  −6.50
  3.  −7.00
  4.  −7.50
  5.  −8.00

正解・・1

装用距離の違いによる度数変化を以下のように計算しますと、

Dコンタクト=D眼鏡(1−0.012×D眼鏡) から、
Dコンタクト=−6.03[D] となります。

コンタクトレンズ度数からの眼鏡度数

問20.内斜視患者の中心窩と道づれ領の関係(別冊No. 10)を別に示す。斜視手術の既往はない。 固視眼の中心窩(F)と斜視眼の道づれ領(Z)が対応しているとき、正しいのはどれか。

別冊No.10
  1.  交差性複視を自覚する。
  2.  混乱視を自覚する。
  3.  同側性複視を自覚する。
  4.  背理性複視を自覚する。
  5.  複視は自覚しない。

正解・・5

左眼(F)と右眼(Z)が対応している場合、
網膜異常対応となる偏心固視ですが、中心窩では非対応ですが、抑制などにより複視の自覚はありません

左眼(F)と右眼(F)が中心窩対応している場合には、
右眼では視物体が右側にズレて見えますので、同側性の複視となります(但し、パームヌエリアにある場合には複視は起こりません)

問21.外眼筋の作用方向の組合せで正しいのはどれか。

  1.  外直筋 ー 内転
  2.  上直筋 ー 外転
  3.  下直筋 ー 外転
  4.  上斜筋 ー 内転
  5.  下斜筋 ー 外転

正解・・5

作用方向の種類には
上転、下転、外転、内転、外方回旋、内方回旋があります。

外直筋は、外転
上直筋は、上転、内方回旋、内転
下直筋は、下転、外方回旋、内転
上斜筋は、内方回旋、下転、外転
下斜筋は、外方回旋、上転、外転 となります。

『第一眼位での右眼の働き』を図に示します。

第一眼位での働き

『向き運動での働き』の図も以下に示します。

眼球の向き運動

問22.調和性異常対応の顕性偏位を定量するのに最も適しているのはどれか。

  1.  Krimsky 試験
  2.  Hirschberg 試験
  3.  交代プリズム遮閉試験
  4.  同時プリズム遮閉試験
  5.  大型弱視鏡による交代点滅法

正解・・4

調和性異常対応とは、他覚的斜視角と自覚的斜視角が一致するものです。偏位には顕性偏位と潜伏偏位があります。

Krimsky(クリムスキー)法とは、眼前33cmに置かれた光源を注視してもらい、角膜反射光が瞳孔中心にくるように、眼前にプリズムレンズを加えていく方法です。プリズム量から他覚的な斜視角[Δ]を求める事ができます。『1Δ≒0.57°』

Hirschberg(ヒルシュベルク)法とは、眼前33cmに置かれた光源を注視してもらい、角膜反射光と瞳孔中心からのズレの距離から偏位角を測る大まかな方法です。

1mmのズレを、7°(又は、12°)を換算の目安』とします。

反射光とのズレが瞳孔の縁にある場合には約15°、虹彩の中間にある場合には約30°、虹彩の縁までズレている場合には約45°、とする事もできます。

Hirschberg(ヒルシュベルク)法

大型弱視鏡による他覚的斜視角検査法では、角膜反射を見る方法(顕性他覚的斜視角)と、固視点を点滅する方法(顕性他覚的斜視角)、交代点滅する方法(全偏位量)があります。

問23.視覚障害に関する身体障害者手帳の認定で誤っているのはどれか。

  1.  自動視野計で視野検査ができる。
  2.  良い方の眼の視力で視力障害を認定する。
  3.  視覚障害の等級は視力障害のみで判定する。
  4.  Goldmann 視野計ではⅠ/4 とⅠ/2 の視標を使う。
  5.  両眼開放エスターマンテストでは視認点数を数える。

正解・・3

令和4年1月から、視力障害の認定基準が改正され、
『両眼の視力の和』から『良い方の眼の視力』へ変更され、自動視野計に基づく認定基準も創設されました。

令和4年改正後、視野計に基づく認定基準

Goldmann 視野計での、Ⅰ/4(いちのよん) 、Ⅰ/2(いちのに) の意味は以下の通りです。

  • Ⅰ ~ Ⅴ・・光源の大きさ(Ⅰが小さい、Ⅴが大きい)
  • 1 ~ 4・・光源の明るさ(1が暗い、4が明るい)

周辺視野はⅠ/4の視標、中心視野はⅠ/2の視標で測定され等級判定が行われます。

両眼開放エスターマンテストとは、日常生活に重要となる視野(中心30°と下方)を中心に、120点ある視認点の数を判定する検査です。

両眼開放エスターマンテスト(120点)

問24.乳幼児の視力検査として用いないのはどれか。

  1.  VEP
  2.  PL 法
  3.  コントラスト視力
  4.  Teller acuity card
  5.  森実式ドットカード

正解・・3

VEPVisual evoked potentials)とは、『視覚誘発電位』の事です。
視覚刺激を与えることで大脳皮質視覚野に生じる電位(脳波)を計測する検査です。

PLPreferential Looking)法とは、『選択視法』の事です。
均一無構造の円と、白黒の縞模様がある円を同時に提示し、注視可能な縞模様の幅により視力を求める方法です。

コントラスト視力とは、低コントラスト視標で測定された視力のことで、明暗の区別をする能力を検査します。
コントラスト視力が通常視力と比べ低下する場合には、透光体の混濁などが考えられます。

Teller acuity card(テラー アキュイティー カード)とは、片側半分に白黒の縞模様が描かれたカードで、中心部に開けられた穴から被検者の眼を観察します。PL法の簡易版です。

森実式ドットカードとは、『うさぎさん』や『くまさん』の絵が描かれたカードで、位置や大きさが異なる目の位置を指で当ててもらう検査です。

問25.輻湊近点検査について誤っているのはどれか。

  1.  抑制の有無を確認できる。
  2.  正常値は 8cm 以内である。
  3.  近接性輻湊のみを検査する。
  4.  外眼角縁から輻湊が限界になった点までの距離を測定する。
  5.  輻湊機能に障害があると調節視標を使用した距離より光視標の方が延長する。

正解・・3

輻輳の要素は4つあります。
緊張性輻輳、融像性輻輳、調節性輻輳、近接性輻輳です。

輻輳近点テスト(Near Point of Convergence test:NPCテスト)は、近接性輻輳のみを測るものではありません。

水平方向の『プリズムよせ運動テスト』への予備テストであり、輻輳力の大まかな把握が目的となります。

NPCテストにて視物を近づけていく際には、融像性輻輳の限界で『ボヤケ』、調節性輻輳の限界で『分離』となります。

臨床的には、鼻の付け根から約7~8cm以内でのダブりを期待値とします。

問26.アノマロスコープについて誤っているのはどれか。

  1.  混色と混色の色合わせをする。
  2.  Rayleigh 等色を利用している。
  3.  正常色覚と色覚異常の判定が可能である。
  4.  先天赤緑色覚異常の確定診断に使用する。
  5.  明順応野を注視して色順応を取り除きながら検査をする。

正解・・1

アノマロスコープは、赤色光(670nm)と緑色光(545nm)を混色し、黄色(588nm)と等色してもらう事で、先天性色覚異常を診断する検査器です。

光色が薄く見えていく『色順応』が起こりますので、白色順応板を5秒間注視させた後、3秒以内に均等が成立しているかを判定してもらいます。

明順応板を見ずに均衡を判断する場合には『比較均等』であり、色疲労などを調べる事もできます。

順応板を見ながら『絶対均等』を判定するのが『アノマロスコープ』であり、『比較均等』≠『絶対均等』となります。

問27.蛍光眼底造影検査について誤っているのはどれか。

  1.  検査中、1個の蕁麻疹が出た場合でも医師に報告する。
  2.  インドシアニングリーンは脈絡膜血管の描出に優れている。
  3.  検査前に副作用で数万人に1人死亡することがあることを説明する。
  4.  フルオレセインナトリウムの撮影は静注開始後 20 秒以降から撮影する。
  5.  フルオレセインナトリウムの撮影で window defect とは過蛍光所見のひとつである。

正解・・4

蛍光眼底造影検査で用いられる蛍光色素を含む造影剤には、

『フルオレセイン蛍光眼底造影検査(fluorescein angiography:FA)』と『インドシアニングリーン蛍光眼底造影検査(indocyanine green angiography ICGA)』の2種類があります。

フルオレセインは、主に網膜での血流を見ます。

インドシニアグリーンは、使用波長が近赤外領域にある為、蛍光透化性がフルオレセインよりも高く、脈絡膜の評価に有効となります。

フルオレサイト静注開始後は、素早く撮影を行う必要があります。時間が経つ程に流れ出てしまい、鮮明な画像が得られなくなります。

問28.インシデントレポートの目的はどれか。

  1.  相手への謝罪
  2.  警察への届出
  3.  再発の防止
  4.  処分の決定材料
  5.  責任の追求

正解・・3

『incident』の直訳は、『出来事』、『事件』などです。

医療機関では『インシデントレポート』による報告制度が導入されております。

インシデントレポートは、事実や背景を客観的に分析し、原因や対策を明確にするものであり、それらを共有することで『再発防止に繋げる』事が出来ます。

問29.色覚検査方法の説明で正しいのはどれか。2つ選べ。

  1.  SPP(標準色覚検査表)は色相配列検査である。
  2.  アノマロスコープの応答は3秒以内に得る。
  3.  仮性同色表の検査は屈折矯正をする必要がない。
  4.  パネル D-15 の結果は pass または fail と表記される。
  5.  100 ヒューテストの色相は 95 個である。

正解・・2、4

SPP標準色覚検査表の第1部では『先天色覚異常』を検出する事ができます。第2部では『後天色覚異常』第3部は検診用として用いられ、『先天異常と後天異常の両方』を短時間でスクリーニングする事が出来ます。

『アノマロスコープ』では、応答に時間を掛けますと『色順応』してしまい『絶対均等』の判定ができません。

『仮性同色表の検査』での必要となる視力は0.1ですが、眼鏡装用でも問題ありません。

『パネルD-15テスト』では、15個の色票を色順に並べてもらう事で『強度色覚異常』と『中等度以下の異常』とを区別する事ができます。

『100ヒューテスト』の『hue』とは色相の事です。
因みに、明度は『brightness』、彩度は『saturation』です。

FM100ヒューテスト(Farnsworth Munsell(ファンズワース・マンセル)100 Hue Test)では、85個の色票を4個の箱に分け、各箱の両端にある基準を参考に並べる事で、『色彩弁別能』を検査することが出来ます。

問30.手動レンズメータのターゲットが+1.25D と−1.75D で鮮明になった。+1.25Dは 75°方向である。レンズ度数はどれか。

  1.  +3.00D cyl−1.75D 75°
  2.  +1.75D cyl−0.50D 165°
  3.  +1.25D cyl−0.50D 175°
  4.  +1.25D cyl−3.00D 165°
  5.  +0.50D cyl−3.00D 75°

正解・・4

手動レンズメータでは、プラス側度数を球面度数とし、差を円柱度数としその方向を円柱軸とします。

つまり、S+1.25(←プラス側度数) C−3.00(←+1.25−(−1.75)) Ax165°(←75°+90°) となります。

問31~問75は、後半に続く・・

コメント

タイトルとURLをコピーしました