第51回午後、視能訓練士国家試験の解答と解説➌

眼鏡作製技能士向けの問題

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今回は、問20~問29までの解答と解説です。

眼鏡作製技能士にとっては、普段、馴染みの少ない言葉が沢山でてきます。

変化は苦痛でしかありませんが、違和感があったら喜ぶことにしましょう。

成長したいと思った時の途中のプロセスは、今までやっていない事をやるからこその違和感です。

いつもの流れを断ち切らなければ、前の居心地の良い状態に戻ってしまいます。

違和感を受け入れて成長するから楽しくなります。

目的意識をしっかり固めて、継続できるように努めましょう。

人生は『トライ&エラー』の繰り返し。

人生の中で、上手くいかないと思っていることの殆どは、数ヶ月または数年の努力で克服できるものばかりです。

『今はできないだけ』、『今は上手くいかないだけ』と思うようにし、改善するように練習や経験を積めばできるようになります。

途中で諦めないことが大切です。

問20.自閉症スペクトラム障害でみられるのはどれか。

  1.  計算が苦手である。
  2.  整理整頓ができない。
  3.  アイコンタクトが苦手である。
  4.  順番を待てず、忘れ物が多い。
  5.  読み書き能力の習得が困難である。

正解・・3

⦿ 自閉スペクトラム症 / 自閉症スペクトラム障害(Autism Spectrum Disorder 、ASD)の特徴・・対人関係の難しさ、興味や行動・こだわりの問題、感覚の過敏や鈍麻などが挙げられます。

DSM-5(精神疾患の診断・統計マニュアル、第5版): 2013年発行』により、自閉症障害、アスペルガー障害、特定不能の広汎性発達障害、小児期崩壊性障害などを、1つのグループ『ASD』としてまとめられました。

これらの障害は、年齢や状況などにより変化することもあり、程度差もあり、障害の境界を明確に区別することが出来ない、あいまいな連続した(スペクトラムな)1つの障害として考えられるようになりました。

⦿ 注意欠如・多動症Attention-Deficit / Hyperactivity Disorder:ADHD)の特徴・・『整理整頓ができない』、『順番を待てず、忘れ物が多い』などの、『不注意』、『多動性』、『衝動性』がみられます。

⦿ 限局性学習症/限局性学習障害(Specific Learning Disorder:SLD)の特徴・・『計算が苦手』、『読み書き能力の習得が困難である』などがみられます。

問21.Hirschberg 試験の結果(別冊No. 3)を別に示す。Krimsky 試験で左眼に基底外方のプリズムをあてて定量するのはどれか。2つ選べ。

  1.  ①
  2.  ②
  3.  ③
  4.  ④
  5.  ⑤

正解・・1、5

左眼に基底外方のプリズムを入れて定量という事は、
『内斜視』を選べば良いという事です。

⦿ Krimsky(クリムスキー)法・・眼前 33cm に置かれた光源を注視してもらい、角膜反射光が瞳孔中心にくるように、眼前にプリズムレンズを加えていく方法です。プリズム量から他覚的な斜視角[Δ]を求める事ができます。『1Δ≒0.57°』

⦿ Hirschberg(ヒルシュベルク)法・・眼前 33cm に置かれた光源を注視してもらい、角膜反射光と瞳孔中心からのズレの距離から偏位角を測る大まかな方法です。

『1mm のズレを、7°(又は、12°)を換算の目安』とします。

Hirschberg(ヒルシュベルク)法

反射光とのズレが瞳孔の縁にある場合には約15°
虹彩の中間にある場合には約30°
虹彩の縁までズレている場合には約45° ・・等とする事もできます。

問22.角膜内皮細胞検査の結果(別冊No. 4)を別に示す。細胞密度の数値はどれか。

  1.  2,220
  2.  1,264
  3.   791
  4.   336
  5.   32

正解・・3

スペキュラーマイクロスコープの評価は、以下の通りです。

  • CD・・細胞密度(cell/mm2
    • 平常値は2500~3000 個/mm2
  • SD・・標準偏差Standard deviation)
  • CV・・変動係数Coefficient of variation)
    • SD(細胞面積の標準偏差) / AVE(平均細胞面積)
  • 6A ・・六角形細胞出現率(%)
  • AVE・・平均細胞面積(μm2
  • MAX・・最大細胞面積(μm2
  • MIN・・最小細胞面積(μm2
  • NUM・・解析細胞数

問23.既往歴を尋ねる質問はどれか。

  1.  飲酒と喫煙について教えてください。
  2.  家族で病気にかかった方はおられますか。
  3.  今日はどのようなことでおいでになられましたか。
  4.  現在の症状を述べていただけますか。
  5.  これまで病気にかかったことがありますか。

正解・・5

既往歴(きおうれき)とは、過去の病歴および健康状態に関する記録のことです。

現病歴・・病気発生後から現在に至るまでの記録

生活歴・・嗜好品(飲酒、喫煙など)、生活習慣(食事、運動など)、社会歴(仕事、交友関係、居住地など)

家族歴・・家族の疾患歴、同居数、家族構成など

問24.輻湊近点の異常値の下限[cm]はどれか。

  1.   8
  2.   9
  3.  10
  4.  11
  5.  12

正解・・3

輻輳近点の期待値は鼻の付け根から約8㎝以内で分離が見られる事です。これ以上に測定値が大きくなった場合には、輻輳機能に何かしらの問題がある疑いがあります。

異常値の下限は10cmです。

問25.対光反射に関与する脳神経はどれか。

  1.  Ⅰ
  2.  Ⅲ
  3.  Ⅴ
  4.  Ⅶ
  5.  Ⅸ

正解・・2

⦿ 対光反応の求心路は、視覚を司る『(Ⅱ)視神経』、遠心路は瞳孔運動を司る『(Ⅲ)動眼神経』が主に関与します。

⦿ 12 対ある脳神経は、

(Ⅰ)嗅神経、(Ⅱ)視神経(Ⅲ)動眼神経、(Ⅳ)滑車神経、(Ⅴ)三叉神経、(Ⅵ)外転神経、(Ⅶ)顔面神経、(Ⅷ)内耳神経、(Ⅸ)舌咽神経、(Ⅹ)迷走神経、(Ⅺ)副神経、(Ⅻ)舌下神経

問26.医療面接において適切でないのはどれか。

  1.  共感的態度
  2.  高圧的態度
  3.  中立的質問
  4.  開かれた質問
  5.  閉じられた質問

正解・・2

医療面接における『態度』と『質問法』はおよそ以下の通りです。

  • 患者への態度
    • 共感的態度・・苦痛に共感する。
    • 理解的態度・・立場に立って理解するように努める。
    • 支持的態度・・考えや行動を認めて支持する。
    • 評価的態度・・訴えや行動について、医師の考えに基づき判断する。
    • 解釈的態度・・曖昧な話を、医師で勝手に解釈する。
    • 調査的態度・・配慮無しに、私的な事を根掘り葉掘り聞きだす。
    • 逃避的態度・・不安などを受け止める事を避ける。

  • 質問
    • 開かれた質問(open-ended question)
      • 例:『どうされました?』『気になる事などありますか?』など
      • 『はい/いいえ』で完結しない質問。
      • 相手が自由に話せ、終わりが決められていない質問。
    • 閉じられた質問(close-ended question)
      • 『はい/いいえ』で完結する質問。物事をはっきりさせる事が可能。
    • 焦点を絞った質問(focused question)
      • 分野を絞った『開かれた質問』。
    • 中立的質問(neutral question)
      • 医師の意見や考えを入れずに、中立的に話を促す質問。
      • 『それは、どういうことですか?』、『名前、生年月日は?』など
    • 多項目的質問(multiple choice question)
      • 選択肢を与える質問

問27.Hertel 眼球突出計検査について正しいのはどれか。2つ選べ。

  1.  定量的に評価できない。
  2.  眼窩内腫瘍は検査の対象である。
  3.  左右差が 4mm なら正常範囲である。
  4.  鏡に映った角膜頂点の位置を測定する。
  5.  両側眼窩外縁間距離は一定でなくてもよい。

正解・・2、4

⦿ Hertel(ヘルテル)眼球突出計検査測定時では、両側眼窩外縁間距離を毎回一定にすることで定量的な評価ができます。

眼球突出の正常範囲は18mm未満(正常値上限は16mm)、左右差は2mm未満です。

問28.細隙灯顕微鏡検査について正しいのはどれか。

  1.  眼底検査はできない。
  2.  鏡面反射法は角膜上皮の観察に適する。
  3.  青色フィルタは虹彩表面の観察に適する。
  4.  van Herick 法で隅角の深さを推測できる。
  5.  広汎照明法は前房の炎症細胞の観察に適する。

正解・・4

⦿ 鏡面反射法(角膜内皮観察法)は、角膜内皮の観察に適します。

⦿ 青色フィルタは、フルオレセイン染色により、角膜表面や結膜の観察に適します。

⦿ van Herick(バンヘリック)法では、角膜幅と前房幅から隅角の深さを推測できます。

⦿ 広汎照明法は、全体に光を当てることで外眼部の評価ができますが、前房の炎症細胞は、逆にスリット光を細めた方が観察しやすくなります。

問29.疾患と瞳孔の所見の組合せで正しいのはどれか。

  1.  Adie 症候群 ー 縮瞳
  2.  動眼神経麻痺 ー 縮瞳
  3.  Fisher 症候群 ー 縮瞳
  4.  Horner 症候群 ー 縮瞳
  5.  Argyll Robertson 瞳孔 ー 散瞳

正解・・4

瞳孔異常

⦿ Adie(アディー)症候群・・瞳孔緊張症、片眼性の散瞳を伴う

⦿ 動眼神経麻痺・・片眼、又は両眼性の散瞳を伴う

⦿ Fisher(フィッシャー)症候群・・外眼筋麻痺、運動失調、腱反射消失の3主徴の他、散瞳、顔面神経麻痺、球麻痺を伴うことがあります。

⦿ Horner(ホルネル)症候群・・片眼性の縮瞳、瞼板筋麻痺による瞼裂狭小、眼球陥凹を3主徴とします。

⦿ Argyll Robertson(アーガイル ロバートソン)瞳孔・・反射性瞳孔強直であり、両眼性の縮瞳を伴います。

問30~問75は、後半に続く

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