視機能系の練習問題、其の1

眼鏡作製技能士向けの問題

Last Updated on 3年 by 管理者

臨床上は、以下の内容を知らなくても特に不都合を感じる事はないかもしれません。

精度の良い『オートレフラクトメーター』で度数は測れてしまいますし、『仮枠で見え方の確認』もその場ですぐに簡単にできてしまいます。

ただ、このまま『考えて理解する事なく、そのまま測定するだけ』で良いのでしょうか。

必要ないと思える事も、いざ理解できると、そこで初めて大切さを知るものです。

【問1】角膜と水晶体の屈折力、眼軸長、回旋点は?

Gullstrand(グルストランド)氏の要式眼に従った眼球の光学的数値は以下の通りです。

  • 角膜の屈折力・・43.05D(垂直方向43.8D、水平方向43.2D)
  • 水晶体の屈折力・・19.11D(最大調節力33.06D)
  • 眼球全体の屈折力・・58.64D(最大調節力70.57D)
  • 眼軸長・・24mm(出生時17.5mm)
  • 眼球回旋点・・13.5~14.0mm

【解説】

例えば、大気に取り出した状態での、角膜の屈折力は−7.00D位にもなり、水晶体の屈折力は+101.82D~+108.93Dにもなります。

凄過ぎます。

この大きな屈折力の理由としては、水晶体前面は房水に接し、後面は硝子体に接しているからです。この屈折率の違いによるものです。

水中で目を開けると見え方が変わる理由と同じです。角膜前面の空気(屈折率は約1.00)から水(屈折率は約1.33)に変わる結果、角膜の屈折力が弱くなるからです。

また、隅角を観察する時に、メチルセルロース(スコピゾル)(眼科診断や手術時に特殊コンタクトレンズなどの装着を容易にし、密着させる)を使用し、観察用のコンタクトレンズ(角膜の屈折率に近い)を角膜上に密着させる理由である、境界面での全反射を無くす事とも類似していますね。

【問2】S+1.50Dの遠視の人が、測定中に1.75Dの調節介入した時の測定結果は?

  • +1.50D+(−1.75D) から、S−0.25D

【解説】

測定中の調節介入は、避けられません。調節緩解する為に、近視眼では雲霧が有効であり、遠視眼では調節麻痺剤が有効です。

潜伏性遠視を眼鏡店で発見するのは難しいです。なぜなら、調節麻痺剤の点眼で初めてわかるからです。

偽近視はその存在自体に賛否両論あります。

【問3】S+2.50Dの遠視眼の人が、仮に眼軸長が1㎜伸び、眼の屈折力が0.50D弱くなった時に、屈折補正度数はどのように変化すると予測されますか?

  • 眼軸長が1㎜伸展すると、補正度数は約3. 00Dマイナス寄りになります。屈折力が弱くなるという事は、補正度数がプラス寄りになるという事です。よって、S±0.00D

【解説】

眼軸長が1mmで3.00Dとは良く言われますが、実際にはそこまでの変化はなく、1mmの伸長での近視化は2.32D位ではないかという話もあります。

【問4】水晶体の厚みと屈折率は?

  • 水晶体の厚み・・無調節時は約3.6mm(最大調節時は約4.0mm)
  • 水晶体の屈折率・・約1.41
  • 房水、硝子体の屈折率・・約1.31

【解説】

水晶体の屈折力20Dを、眼鏡レンズで考えるとかなり強めの度数ですよね。

水晶体の屈折力は、大気中では100Dを超えますよね。

それを、眼鏡レンズの屈折率1.5よりも低い屈折率1.41でその屈折力を出せるって凄いです、しかも厚さがたった4mmの水晶体。

【問5】S−3.00 C−1.00 Ax180で補正される眼の、角膜の垂直方向の屈折力が0.50D弱くなり、水晶体の屈折力が1.50D弱くなった時の屈折補正度数は?

  • S−3.00 C−1.00 Ax180の垂直方向が0.50D弱くなった時は
    • S−3.00 C−0.50 Ax180になります。
  • 更に、水晶体の屈折力が1.50D弱くなった時は
    • S−1.50 C−0.50 Ax180になります。

【解説】

実際に起こり得る、加齢性遠視倒乱視化による度数変化の例となります。

【問6】オフサルモメーター(ケラトメーター)で測定した角膜の屈折力43.00D@90°、44.00D@180°の場合、Javal’s Rule(ジャバルの式)から全乱視を予測すると?

  • 43.00D@90°、44.00D@180°から、C−1.00AX90
  • ジャバルの式から全乱視は、
    • 1.25×(−1.00AX90) −0.50Ax90=−1.75Ax90

【解説】

全乱視=角膜乱視+水晶体乱視です。

ハードコンタクトレンズでは、涙液レンズやな何やらで角膜乱視の補正は出来ても、水晶体乱視は補正できません。その時にジャバルの式を使い全乱視を推測したりします。

【問7】ドンダーズのプッシュアップ法で調節力を測定した時、遠点が眼前50cm、近点が20cmの時の調節力は?

  • 屈折度数D=1/焦点距離fより
  • 遠点50cmは2D、近点20cmは5D
  • よって、調節力はその差である3.00D

【解説】

プッシュアップ法は、相対距離拡大により調節力が若干大きく測定されます。更に、距離の違いは、輻輳刺激が一定ではなく、また近接効果の介入にも影響が出ます。

マイナスレンズを付加する調節力測定(米国式21項目検査の#19)では、これらが改善されます。

【問8】S+2.50Dの補正が必要な眼の調節力が6.50Dである時の遠点と近点は?

  • S+2.50Dの遠視という事は、f=1/Dから遠点は眼前40cm
  • 更に、6.50Dの調節をしますので、遠視の2.50Dを打ち消して残った4.00Dの度数が近点になります。つまり、近点は1÷4.00から、眼前25cmとなります。

【解説】

遠くも近くも明視できる遠視を、随意遠視といいます。遠くしか明視出来ない遠視を相対遠視といい、遠くも近くも明視出来ない遠視を絶対遠視といいます。

このケースでは、随意遠視であり、年齢による調節力の関係から30代と思われます。

【問9】はS+1.00D C−1.00 Ax90°の補正が必要な眼は、遠視性単性直乱視の屈折異常に属しているか否か?

  • 度数変換をするとC+1.00 AX180ですので否です
  • 遠視性の単性倒乱視です。

【解説】

この場合は、強主径線が横方向ですので、倒乱視となります。

前焦線と後焦線の位置で近視性遠視性が決まり、更に、単性複性混合性が決まります。強主経線の方向で直乱視倒乱視が決まります。

【問10】S+1.00 C+1.00 AX180°の補正が必要な人が、眼前40cmを見る時に、最小錯乱円視する為に必要となる調節力は?

  • 等価球面度数(球面度数+乱視度数の半分)の+1.50Dと、近方40cmの度数2.50Dを足した度数4Dが必要調節力です。

【解説】

最小錯乱円の位置は等価球面度数SE(spherical equivalent)で考えます。スタームのコノイドを頭で考えられると良いですね。

【問11】S−1.00Dの近視眼の裸眼での遠点と、S+1.00Dのレンズを装用した時の遠点は?

  • 裸眼での遠点は眼前1m
  • 装用での遠点はおよそ眼前50cm

【解説】

実際には、頂点間距離の違いで度数が変わるように、装用レンズ度数が強くなる程、頂点間距離12mmでの度数と実際の補正度数とは異なります。これを、調節効果といいます。遠視眼ではより多くの調節が必要となり、近視眼では少なく済みます。

【問12】調節域が眼後50cm~眼前25cmの明視域は?

  • 明視できる距離は、無限遠方~眼前25cmです

【解説】

調節域は眼後の距離でも表せますが、明視域を眼後で表したりはしません。

因みに、この人の遠視度数はS+2.00Dであり、調節力は6.00Dですね。

【問13】調節麻痺剤の使用で検出される潜伏遠視とは別で、通常の屈折測定で検出される遠視を何という?

  • 顕性遠視といいます。

【解説】

潜伏遠視と顕性遠視を足した遠視が、全遠視といいます。

顕性遠視を調節力によって、絶対遠視や随意遠視と分類することも出来ます。

【問14】小数視力1.0を、視角の常用対数のlogMARであらわすと?

  • 小数視力1.0の最小視角は1分です。
  • log101.0=log10100=0.0です。

【解説】

例えば、小数視力0.1をlogMARで表す場合には、視角は小数視力の逆数ですので、1/0.1から視角は10分となります。

よって小数視力0.1は、log1010=1.0となります。

小数視力1.0をlogMARでは0.0とあらわしますし、小数視力が1.0を超えますとlogMARではマイナスの値になります。

例えば、小数視力2.0ではlogMARは−0.30です。

ログマーは、視力を統計処理するのに適しています

【問15】「5m用」の0.1のランドルト環が4mの距離で判別できた時の視力は?

  • 5分の4の距離ですので、0.1×4/5=0.08となります。

【解説】

1mの距離で判別できた時の視力は0.02となります。更に近い距離50cmで判別ができれば視力0.01です。

それでも判別できない場合には、

指の数が何㎝の距離で見えるのかの『指数弁(例:30cm指数、30cm/n.d.)』、指の動きが分かるかの『手動弁(m.m.)』、光を感じるかどうかの『明暗弁、光覚弁(s.l.)』となります。光を感じなければ『全盲』となります。

【問16】「5m用」の0.1のランドルト環と「3m用」の0.1のランドルト環の、それぞれの視角は?

  • 視角は視力の逆数ですので、1/0.1=10’となります
  • どちらも視角は10分です。

【解説】

視力の定義は『視角の逆数』というのは変わりません。

因みに、視角の1分は1/60度です。1秒は1/60分です。

小数視力1.0のランドルト環の大きさは、直径7.5mmで太さ1.5mmです。

【問17】5m用の視力表を誤って4mの距離で測定してしまい、視力が1.0でした。5mの距離で改めて測定すると視力はいくつ?

  • 距離が5分の4なので視力は0.8と予測されます。

【解説】

4mでの視力よりも5mでは下がる筈ですね。実際にはこんな失敗例は無いですけどね。

【問18】海外で測定された視力が分数視力6/30とありました。小数視力ではいくつ?

  • そのまま6÷30で計算して、小数視力は0.2となります。

【解説】

主にイギリスでの表記方法です。6は測定距離[m]で、判別できる距離が30cmとなります。

アメリカでは、フィート(1フィートは30.48cm)で表します。20/100のように表します。この場合は、20フィートで測定してますという事です。つまり、609.6cmの測定距離です。小数視力で表す時にはそのまま20を100で割って0.2となります。

コメント

タイトルとURLをコピーしました