遠近両用レンズの値段の違いとは

一般消費者、眼鏡作製技能士を志す方に向けて

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単純に、レンズ設計(内面累進、外面累進、両面複合累進)、レンズ基材(屈折率、ガラス、プラスチック)、表面コーティング・・などの違いと思われている方も多いのではないかと思います。

累進レンズの場合には単焦点レンズよりも種類が豊富で複雑です。

例えば、「性能・満足度を高める機能」の違いで値段が変わります。

レンズに盛り込んでいる内容と見える幅の違いでグレードや価格が変わり、加入度数が強いほど効果の違いがでます。

よって、お勧めのレンズグレードは高加入度数であるほどに、「Economy < Basic < High < Premiumのグレード」となります。

逆にいえば、初期の低加入ではご自身の調節力もありますので変化を感じる方は少ないようです。

はっきり見える視野のイメージ(遠近両用の高いグレードと高い加入度)

SEIKOブランドの「性能・満足度を高める機能」を以下の①~③にまとめます。

① 自動設計(クロスサーフェス設計、乱視補正、プリズム収差補正、カーブペアリングシステム)

② 条件指定(フレーム装用状態考慮、最低内寄せ設計、レンズキャリア考慮)

③ お客様に合わせた選択(選べる設計タイプ、累進帯長、選べる機能)などです。

因みに、「SEIKO OPTICAL PRODUCTS」は100年以上の歴史があり、実は「HOYA」や「Nikon」よりも老舗なんです。

国産初で、1964年:本格的ラボラトリーシステムを導入し眼鏡レンズの研磨・加工を開始したり、1975年:眼鏡プラスチックレンズ「ビスタ プラックス65」発売、1980年:眼鏡プラスチック累進屈折力レンズ「ビスタ プラックスP-1」発売・・など。

世界初で、1989年:マイナスレンズ度数 非球面単焦点レンズ「セイコー スーパーMX」発売、1997年:内面累進屈折力レンズ「セイコー スーパーP-1」発売、2013年:クロスサーフェス設計を採用したテイラーメイド遠近両用レンズ「セイコー スペリオールPX」発売・・など。

セイコーオプティカルでは、多くの「国産初」や「世界初」があり、開発者の技術力などの凄さがうかがえます。

※ 価格の違いは、眼鏡店側のサービス料金(接客スキル、調整技術、加工技術、測定技術、保証、アフターサービスなど)も含まれた金額であり、眼鏡店により値段が異なります。

性能・満足度を高める機能

SEIKOを例にした累進屈折力レンズの主な機能は、「自動設計」「条件指定」「お客様に合わせた選択」です。

  • 自動設計
    • クロスサーフェス設計
      • 両面制御の効果により、手元の見え方が自然。近視系の小さく潰れて見えたり、遠視系の大きく伸びて見えることが少なく実物大や形に近く見えます。従来の内面累進や内面非球面設計よりもユレ・歪みがさらに低減される
    • 乱視補正
      • 乱視度数がある場合、リスティング則を考慮した360°方向での収差補正
    • プリズム収差補正
      • プリズム度数がある場合、プリズム収差補正
    • カーブペアリングシステム
      • 左右の度数差がある場合、光学性能を維持しつつ自動的にベースカーブ合わせを行い外観を良くする
  • 条件指定
    • フレーム装用状態考慮
      • 装用状態に合わせて三次元補正「前傾角(0°~20°)、そり角(0°~20°)、頂点間距離(10mm~20mm)の指定が可能」により設計。デフォルトでは、前傾角10°、そり角0°、頂点間距離12mmで設計します。※そり角の指定では玉幅、鼻幅、PDの情報が必要。
    • 最低内寄せ設計
      • 度数やPDなどから、最適な内寄せ量を設定することで両眼視野を広くできる(0.0mm~5.0mmで0.1mmピッチ)
    • レンズキャリア考慮
      • 旧使用レンズの特徴(約130種)を考慮して設計することで違和感を少なくする
  • お客様に合わせた(ライフスタイル別)選択
    • 選べる設計タイプ(見える幅と遠点距離の違い)
      • ALL ROUND(基本となる遠近両用)・・FPはAdd0%、運転可能
      • TOWN(中間重視の遠近両用)・・FPでAdd17%(サーパスは19%)、運転不可
      • OFFICE(室内用の中近両用)・・FPでAdd27%
      • ROOM(近方重視の中近両用)・・FPでAdd40%
    • 累進帯長
      • 眼の回旋量に合わせることで近方視が楽
    • 選べる機能
      • POLARTHIN:ポーラーシン(偏光)、SOLAIRE:ソレール(調光)、カーブ選択(1~8カーブ)など
タイプ別、加入度によるFP上の遠点距離
ユレ・歪みを重視するか、視野を重視するか

おまけ

遠近両用屈折力レンズの主な不満理由・・月間眼鏡2017年8月号の45歳以上ユーザー意識調査結果です。

1位:手元が見えづらい(25.7%)
2位:高い・品質に見合った価格でない(14.3%)
3位:焦点が合わせにくい(12.4%)
4位:遠くが見えにくい(10.6%)
5位:度が合っていない(8.6%)

見え方が合わない場合には、度数を変更する前にFP、前傾角、頂点間距離が合っているかの確認をしましょう。

目線を下げないと近方視ができないことなどの説明もしましょう。測定者や販売者は必ず説明している筈なのですが、話を聞いていなかったり、理解できていないのに「分かった」と言っていることもあります。

大型自動車の高い位置から遠近両用でご使用されるということで、FPを通常よりも下げて作製し改善したこともあります。

ずっと遠くを見たいとのことで遠近両用で作製されましたが、正面のPC画面が見えない(第1眼位にて)とか・・嘘でしょ!?と思うこともあります。

時間をかけて問診した結果、累進で作製しても、使用用途をあとで勝手に変えてくるのもたまに遭遇。不可避!!

それでも「やっぱり合わない」という場合には、加入度数、遠用度数、レイアウト変更により殆どが改善されます。

視野が狭い、ユレ・歪みが気になるなどの場合には加入度数を下げる必要もでてきます。

Minkwitz(ミンクヴィッツ)の法則では、中間累進帯の側方部に発生する非点収差は加入度数の2倍になるとされています。

下方回旋が上手く出来ない方(近方度数は問題ない場合)には、累進帯長を短くする必要があるかもしれません。逆に短くして視野が狭くなり見えづらくなっている事もあります。

遠近両用レンズから中近両用レンズに変更して良くなることもあります。お客様が中近両用レンズの存在を知らないということも未だに経験します。

累進レンズのグレードが旧眼鏡と異なり見えづらいという可能性も考えられます。

個人的には、遠近両用レンズを1本のみで全て補おうとすること自体がナンセンスと考えます。

高加入度数が必要な場合には、中近両用レンズ(加入度40%)か近々両用レンズの2本持ちがお勧めです。

もし、調査結果の「1位:手元が見えづらい」という対象者が、高加入の遠近両用で近方が見えづらいという理由であるのならば、それこそナンセンスです。

そういう方は、20万円前後のプレミアムグレードの累進屈折力レンズを使用するしかないと感じますが、「2位:高い・品質に見合った価格でない」の方は本当にかわいそうです。

販売員の技術力が足りなかったのでしょう。。。

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