視機能系の練習問題、其の3

眼鏡作製技能士向けの問題

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『眼鏡作製技能士の試験に合格する事』を目的にしてはいけません。目的達成の為の手段としての単なる目標であって欲しいと考えます。

試験合格したその後、実際に現場で活かす事ができ、自ら考え実行し、新しい情報を常に求め、能動的に成長し続ける事が大切だと考えます。

屈折状態の種類と特徴

【問1】調節状態による屈折の分類で、調節休止状態を静的屈折といいますが、調節が働いている屈折は何といいますか?

  • 動的屈折

【解説】

眼球内に入射する光線は、主に角膜(等質角膜面の屈折力43.08D)と水晶体非調節時19.11D、最大調節時33.06D)で屈折し、網膜の視細胞上に結像されます。

その眼の機能を『屈折』といいます。

屈折状態により、正視(emmetropia)、近視(myopia)、遠視(hyperopia、hypermetropia)、乱視(astigmatism)・・と分類されますが、通常は静的屈折での状態で分類されます。

【問2】学童期に発生進行する学校近視の大部分は、視機能障害を伴わない単純近視ですが、眼軸長が26.0~26.5mm以上ある強度近視に多い、何らかの視機能障害を伴う近視は?

  • 病的近視(pathological myopia)又は、悪性近視(malignant myopia)

【解説】

強度近視(high myopia)の多くは軸性近視(axial myopia)であり、良性なものもありますが、多くは網膜や硝子体に変性があります

その為、変性近視(degenerative myopia)ともいわれます。

単純近視(simple myopia)又は、良性近視(benign myopia)の発生原因を、近業時の毛様体筋や脈絡膜の萎縮による眼軸長の伸長とする説が有力となります。

遺伝や生活環境などの因子が影響を及ぼすとも考えられております。

遠方視による調節緩和や、太陽光によるドーパミン分泌の増加による眼軸長の過伸長抑制、縮瞳による焦点深度の深さが眼軸長の伸長を抑制する・・とする考えもあります。

【問3】暗所で、眼の屈折状態が近視よりになる現象は何近視?

  • 夜間近視

【解説】

明所にて調節する際の手掛かりは、網膜像のボケとなります。

色収差や球面収差、みかけの大きさや距離などを手掛かりとします。

しかし、暗所では調節刺激に対して多くの調節反応が起こります。

この状態は、調節緊張の状態であり、調節安静位夜間近視とよばれます。

パソコン画面などのVDT作業でもこの現象に似た現象が起きています。

パソコン画面は電気的に作られた画素によるもので、文字のエネルギー分布が一様ではないために、Dark focus(完全暗室での調節状態)という過度な調節(約1.00D)の誘発があると報告されております。

エネルギー分布

【問4】核白内障などでみられる近視で、水晶体核の屈折率が皮質に比べて高くなり生じる近視は?

  • 核近視

【解説】

老人性白内障の中で最も頻度が高いタイプは皮質型白内障です。

皮質型白内障は、水晶体の端から中心部に向かい徐々に混濁が生じ、屈折度数が遠視方向に変化する特徴があります。

一方で、水晶体核が凝縮し、硬くなり色がつき混濁を増すタイプを核白内障といいます。

核白内障は、屈折度数が近視方向に変化します。

【問5】斜位角が大きい外斜位でみられる、輻輳により起こる近視は?

  • 斜位近視

【解説】

近見三反応として、輻輳と調節と縮瞳があります。

例えば、輻輳すると調節と縮瞳が同時に起こります。

調節の変化に伴い生じる輻輳を、調節性輻輳Accommodative convergence:AC)といいます。

調節性輻輳(AC)を調節の変化(A)で割った値は個々でほぼ一定(平均値3.5△/D)であり、調節の変化であるAC/A比は臨床で良く利用されます。

実際に利用されるAC/A比は、一定の調節刺激の変化を基にしたStimulus AC/A比です。

調節反応は臨床時に直接測定ができない為、調節反応を基にしたResponce AC/A比とは異なる事を留意して利用しなくてはなりません。

つまり、一定の調節刺激に対して生じる調節反応は一定ではないという事です。

※ 加齢に伴いAC/A比は、若干、増加する傾向にはありますが、ビジュアルトレーニング(Visual training:VT)による変化も無いとされるのが一般的となります。

【問6】遠視眼の調節状態による分類で、潜伏遠視と顕性遠視を合わせた遠視は?

  • 全遠視

【解説】

顕性遠視とは、通常の非調節麻痺状態での一般屈折測定で検出される遠視をいいます。

完全な調節麻痺状態で測定される場合には潜伏遠視が無くなり、屈折測定で全遠視を測定する事ができます。

更に、調節力で遠視度数を打ち消し、良好な遠方視力や近方視力が得られる遠視を随意遠視といいます。

良好な遠方視力は出るが、調節性輻輳による内斜位や内斜視になり、良好な近方視力が出ないような遠視を相対遠視といいます。

遠方も近方も視力不良で、調節力で代償できない遠視を絶対遠視といいます。

【問7】外界の一点から発せられる光線がどこにも結像しない屈折状態は?

  • 乱視

【解説】

点として結像せずとも、直交する二つの焦線を成すものは正乱視であり、直交しなかったり、屈折度が不規則な為に結像が乱れ焦線とならないものなど、正乱視以外は不正乱視となります。

正乱視は眼鏡での乱視補正が可能ですが、不正乱視では難しくなります。

もし、不正乱視を眼鏡で視力補正する場合には、測定時に乱視度数が強く測定され易い事を留意する必要があります。

強度数になる程、軸度方向のズレによる残余乱視の発生がある事も留意する必要があります。

眼疾患が考えられますので、基本的には眼科さんの指示を仰ぐのが良いでしょう。

【問8】眼の強主経線が20°方向にある乱視は?

  • 倒乱視

【解説】

乱視の強主経線方向による分類として、一般的には90°±30°(60°~120°)を直乱視、180°±30°(0°~30°と150°~180°)を倒乱視、45°±15°と135°±15°(30°~60°と120°~150°)を斜乱視といいます。

強主経線方向による乱視の種類

正乱視を眼鏡レンズで補正する場合には、マイナス円柱レンズでは軸方向を弱主経線に合わせて補正します。

プラス円柱レンズで補正する場合には、軸方向を強主経線に合わせて補正します。

倒乱視の屈折状態

上図のような倒乱視で、例えば、1.00Dの乱視がある場合には以下の様に乱視補正できます。

C−1.00D Ax90°、C−1.00D Ax180°のスコア表記

凹円柱レンズと凸円柱レンズは共に、スコア表記の±0.00Dの方向が軸度方向となります。

マイナス円柱レンズでは軸方向が弱主経線であり、プラス円柱レンズでは強主経線方向に合わせて補正できるという事がわかります。

【問9】プラス円柱レンズで補正され、前焦線が網膜上にあり、後焦線が横方向にある乱視の種類は?

  • 遠視性単性倒乱視

【解説】

プラス円柱レンズで補正され、前焦線と後焦線の位置(網膜後方の位置)から、遠視性乱視となります。

また、一方の焦線が網膜上にあるという事は、単性乱視となります。

後焦線が横方向にあるという事は、弱主経線方向の屈折が後焦線として結像しており、弱主経線の方向は縦となります。強主経線の方向は横となりますので、倒乱視となります。

焦線の位置による乱視の種類

【問10】強度近視の度数範囲は?

  • −6.00D超~−10.00D以下

【解説】

屈折異常の程度による分類としては、弱度は±3.00D以下、中等度は±3.00D超~±6.00D以下、強度は±6.00D超~±10.00D以下、最強度は±10.00D超~±15.00D以下、極度は±15.00D超となります。

しかし、『日本眼鏡学会の眼鏡学ハンドブック』や『日本学術振興会、昭和17年』などの古い資料では、遠視度数の範囲が異なります。

中等度を+3.00D以上~5.00D未満としたり、弱度を+2.00以下としたりもします。

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