Last Updated on 3年 by 管理者
例えば、近用加入度などの測定をする為に、クロスシリンダーを使用して次の視標を呈示したとします。
そして、『縦線と横線は、どちらが濃く見えますか』と尋ねます。
米国式21項目検査での#14テスト(近方クロスシリンダーテスト)です。
そうすると、『色が着いて見える』という返答がかえってくることがあります。
『そういう事は聞いていない・・』と言うと大変な事になりますので言いませんが、
『色が付いて見える』理由を考えてみましょう。
眼の状態
近方測定では、#7後の完全矯正値に、以下の様なクロスシリンダーを装用され直乱視の状態にします。
近方の測定距離は40cmですので、前焦線と後焦線が共に網膜後方に移動します。
この状態では、網膜に近いのは『横線』ですので、『縦線』よりも『横線』が濃く見えます。
この状態で、無理やり『調節』をすると『縦線』と『横線』は同じ濃さに見えるかもしれません。
次の測定手順としては、プラス球面度数を徐々に付加していきます。
そうすると、『縦線』と『横線』の濃さが同じになる度数があります。最小錯乱円が網膜上にある状態です。
この時に、線に色が付いて見えることがあります。
その理由は『色収差』なのですが、適正な加入度数になる時に起こります。
可視光線の波長は大体380nm~780nmとされております。
短波長は青色に見え、長波長は赤色に見えます。
短波長は網膜前方側にあり、長波長は網膜の後方側にあります。
つまり、『横線が青く』『縦線が赤く』見えます。
もしも、被検者から、『色が付いて見えます』という返答がありましたら、適正な加入度であり、
『縦が赤いですかね』『横が青いですかね』など、気にしなくて良いことを伝えると、安心して測定できます。
その際には、色の濃淡のみで判別してもらいましょう。
測定中の調節反応
このテストでは、ある一定の『調節刺激』で調節ラグを測定します。
つまり、なるべく『調節反応』を起こさないような『調節刺激』で測定することが望ましいです。
『調節反応』を少なくする為の、いくつかの工夫を以下に挙げます。
このテストで使用される『クロスグリッド』は、繊細なピント合わせを要求しないため、さほど『調節反応』が起こらなくても明視できる視標となります。
他には、クロスシリンダーを装用させることで、人工的に乱視状態を作り出します。そうすることで、焦点合わせがしづらくなりますので、『調節反応』の量が少なくなります。
他の理由として、測定中の低照度は『調節反応』の抑制につながりますし、プラス球面の雲霧を掛けられること、片眼遮蔽することで、両眼視状態で生じる調節性輻輳の介入を防ぐ・・などがあります。
近方にて、クロスシリンダーを装用させますと、初めは『横線』が濃く見え、プラス球面を付加していくと『縦線』と『横線』が同じ濃さに見えます。
更に、プラス球面を付加しますと『縦線』と『横線』が変わらないという状態も起こります。
この状態になる理由は、被検者の調節が介入している状態です。
プラスレンズを付加した分、調節緩解が起き、度数としてはそうさいされる為に、『縦線』と『横線』の濃さが変わりません。
調節緩解が出来ない状態で、更にプラスレンズを付加すると『縦線』が濃く見えます。
コメント メールアドレスが公開されることはありません。*が付いている欄は必須項目です。