どういう眼鏡フレームが良いのか?

一般消費者、眼鏡作製技能士を志す方に向けて

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眼鏡はファッション的な要素もありますが、本来の眼鏡が果たすべき役割(屈折補正、調節補助など)も忘れてはなりません。

ファッション的には、洋服を選ぶように好き嫌いなどで自由に選べば良いと思います。

個人的には、『この形は似合わないとか、色がどうとか、大きさがどうとか、こんな眼鏡を選ぶのは素人・・・など』、お客様の好みを否定したくはありません。

ただ、本当にやめた方が良い場合には、全力で阻止することも稀にあります。

色や形での違いは、眼鏡を掛けた時の印象が違うだけなのかと思います。

例えば、洋服を選ぶときでも、大きめが好きな人もいますし、派手な格好が好きな人もいます。

それも個性だと感じます。

眼鏡が顔の正面にあるからなのか、急にシビアになる人が多くいらっしゃいます。

自由に選んでも良い・・とはいえ、

眼鏡は、薬機法にて『クラスⅠの一般医療機器』として厚生労働省から定められております。

『色や形、大きさ、素材をどうしようか・・』などと悩まれておられる方には、ファッション以外での専門的なアドバイスを参考に選んで欲しいです。

プロとしてやっていくのであれば、専門的知識は必須ですね。

構造的に眼鏡で求められるものとは?

⦿ 『フロント(枠)』は、眼前に適正な位置で、安定的に固定できる構造が良いです。

跳ね上げ式の構造などで、前傾角が中途半端になったりなど、安定しない構造は良くありません。

⦿ 『ブリッジ』は、左右レンズのねじれが発生しない剛性が必要です。

⦿ 『パッド足(クリングス)』は、可動域が広く調整可能な方が望ましいですが、簡単に変形してしまうものは良くありません。

⦿ 『パッド』は、交換可能でなくてはなりません。

⦿ 『智(鎧)』は、通常使用での変形がない剛性が必要ですが、調整可能でなくてはなりません。

⦿ 『丁番』は、基本的にネジで固定しますが、緩まないことが必須です。

⦿ 『テンプルチップ(先セル)』は、調整可能でなくてはなりませんが、ヒーターで温めなくとも簡単に曲がるものは良くありません。

眼鏡フレームの要求事項(JIS B 7285:2008)は?

⦿ 炎症、アレルギー、有毒反応を起こす原因となる素材を直接肌に触れる部分に使用してはいけません。

ラテックスアレルギーなど、個々により要求事項は異なりますが、

JIS規格により、ニッケル溶出試験(被覆されたフレームでは2年間の模擬摩耗加速試験を行った後で試験する)でのNi溶出量は、0.5μg/cm2週以下と定められております。

⦿ ボクシングシステム方式による表示寸法の許容差(JIS B 7281)は、

玉形幅、レンズ間距離(ブリッジ幅)、鼻幅(パッド間距離)・・±0.5mmの範囲

テンプル長さ(丁番ネジからテンプルエンドまでの直線に伸ばしたときの長さですが、デザイン上での湾曲は無視します)・・±2.00mmの範囲

とされております。

つまり、その範囲内で違いがあるということです。

⦿ 高温での寸法安定性も必要です。

常温の約23℃でレンズを枠入れした試験フレームを、約55℃で2時間保持した後に、常温に2時間ほど冷却した状態での変化を試験したときの寸法差がJISで規定されております。

テンプルチップ間は、+6mm(外側)~−12mm(内側)以内です。

小さな眼鏡フレームでは(フロントの背面からテンプル先端までの長さが10cm以下)+5mm~−10mm以内と規定されております。

⦿ 耐汗性が必要です。

約55℃の人工汗(乳酸50g、塩化ナトリウム100gを溶かした1Lの水)に、約8時間浸けた後の『しみ』や『変色』を調べます(フレームのあらゆる部分)。

更に、約16時間浸けた後の『腐食』や『表面劣化』、『コーティング層の剥離』を調べます(肌に触れる部分)。

⦿ 力学的安定性(ブリッジ変形、レンズの保持特性)が必要です。

5N(約510g重)以下の力で押し下げたときの『玉形中心間距離の変形率』が2%未満であること、破損していないか、溝や糸が部分的に移動しないかどうかを確認します。

⦿ 耐久性が必要。

試験レンズを枠入れしたフレームを回転運動(500回)を行い、破損せず、テンプル間の距離が5mm以下の変形である必要があります。

⦿ 難燃性、耐光性が必要です。

難燃性では、約650℃の剛棒をフレーム表面に5秒押し付けても発火しないかどうかを目視します。

耐光性では、キセノン放射に約25分さらした後で、JIS L 0804 の変退色用グレースケールの3号を超える色の変化がないかどうか、光沢面の輝きが消失しないかどうかを確認します。

眼鏡フレームの素材

⦿ プラスチック素材では、

『アセテート』・・難燃性、着色性に優れ、切削やインジェクションの可能ですが、復元性が小さく、衝撃強度がやや劣ります。

『セルロイド(CN)』・・着色性、伸縮や復元性、衝撃強度も優れていますが、可燃性(60℃以上で弾力性がなくなり、130℃で内部気泡、170℃以上で発火)があり、紫外線による経年劣化(黄変、ひび割れ)、アルコール系の有機溶剤に弱いです。

『ポリカーボネート(PC)』・・エンジニアリングプラスチックの一種で、強靭で寸法の安定性もありますが、アルコール系の有機溶剤に弱いです。

『ポリフェニルサルフォン(PPSU)』・・超弾性特性があり、復元性、耐熱性、生体適合性にも優れています。

『グリアミド(ナイロン系)』、TR-90など・・弾力性に優れ、軽量ですが、変形させることが難しく調整が困難な種類もあります。

『エポキシ樹脂(EP)』・・軽量で、寸法安定性、復元性にも優れております。熱することでの伸長性があります。

⦿ 金属素材では、

『NT合金』・・生活温度での超弾性、形状記憶の特性があります。(NiとTiが元素比1:1のため、金属アレルギーの心配は少ない)

『ゴムメタル』・・軽量、超弾性(半永久的)に優れ、引張り強度、表面硬度が高い。Tiを主原料とし、Nb、Ta、Zr、Vなどの合金。

『クラッドチタン(Ti-C)』・・純チタンの芯金にNi合金を取り巻いた素材で、ろう付けや表面処理が容易になることが特徴です。

『金(金合金)』・・純金の比重は19.3で重い(アセテートの比重は 1.3位)。K24を純金とします。銀、銅、亜鉛、パラジウムなどを配合することで強度を出します。

『プラチナ(合金)(白金) 』・・比重は21.45であり重い。純度90%~95%のプラチナにイリジウム、銅、パラジウムなどを加えます。

『真鍮(黄銅)』・・化学成分比で「銅:亜鉛=65:35」位。パッド芯などに使用される。

『洋白』・・化学成分比で「銅:ニッケル:亜鉛=64:18:18」位。銅合金の中では耐食性、耐酸性、ばね性が良い。丁番のねじなどに使用される。

その他・・アルミニウム合金、マグネシウム合金など

⦿ 天然素材では、

べっ甲・・ワシントン条約により全面輸入が禁止されている。生後7年~10年のタイマイの甲羅を吟味(厚さ、質、色など)して使用されます。軽さと質感が良い。バフ掛けによる艶出し、ニカワ質であるため修理(水蒸気で圧着)が可能ですが、長期保存での虫喰いに注意。


その他・・バイソンホーン(水牛の角)、シープホーン(羊の角)、木、皮、竹など

⦿ カーボンファイバーでは、

耐食性、耐薬品性、耐腐食性、生体親和性に優れ、熱膨張性、吸水性も小さく寸法安定性が良い。強度、弾性も良い。

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