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雲霧法の原理
雲霧法とは、常に近視状態を保つことにより調節関与を排除した静的屈折測定の方法です。
乱視測定では、弱度の近視性乱視の方向性を持った見え方を利用しております。
球面レンズの交換手順
雲霧法では、調節介入による測定誤差を防がなければなりません。
テストフレームにて測定を行う際、レンズ交換中に、交換後の屈折測定状態よりもマイナスに偏る状態があってはなりません。
その為、凸レンズと凹レンズでの交換手順が異なります。
凸レンズの交換法
- 凸レンズの交換法
- 新しい凸レンズをレンズホルダーに挿入した後に、古い凸レンズを取り去ります。
もし仮に、新しい凸レンズを挿入しないまま、古い凸レンズを先に取り去りますと、その時点で調節が介入してしまいます。
凹レンズの交換法
- 凹レンズの交換法
- 古い凹レンズをレンズホルダーから取り去り、その後で新しい凹レンズを挿入します。
もし仮に、新しい凹レンズを追加で挿入しますと、その時点で調節の介入が関与してしまいます。
※レンズホルダーに挿入せずに、眼前にレンズを保持したままでスムーズに交換する『重ね取り』という手法もあります。
濃く見える方向の測定
サンバースト視標などの乱視視標にて、濃く見える方向を測定する場合、テストフレームの角度目盛りにて読み取ります。
竹串などを使用し、被検者自身で濃く見える方向に合わせてもらうというのも方法の1つです。(マイナス乱視軸方向は、濃く見える方向の±90°方向です。)
濃くはっきりと見える方向を被検者に尋ねる場合、詳しく尋ねる必要があります。
例えば、『斜め方向の2時-8時方向が濃いです。』という回答が得られた場合、『それは、1時寄りだったり、3時寄りだったりしますか?』と尋ねる必要があります。
『少し1時寄りです。』という回答があれば、乱視軸方向は60°ではなく、50°であるかもしれません。
一般的には、放射線視標の数字に30を掛けた値を、マイナス乱視軸の方向として測定します。
一般的な雲霧法の手順
- 測定準備
- PDを測定する。
- 裸眼視力、旧眼鏡の装用視力を測定する。
- 調節緩解措置
- 球面度数を調整し、視力0.1の状態にする。
- 乱視測定準備
- S−0.25Dステップで付与していき、徐々に雲霧を解除し視力0.5~0.6の状態にする。(球面レンズの交換手順を遵守する事)
- 乱視測定
- 乱視有無の測定
- どの方向も均一な太さに見える場合には、『乱視なし』
- 濃くはっきり見える線がある場合には『乱視あり』
- 乱視軸の測定
- 濃くはっきり見える方向を、乱視視標の角度目盛りで読み取る。『乱視軸=(濃く見える方向)±90°』
- 乱視度数の測定
- マイナス円柱レンズの軸を、乱視軸に一致させC−0.25Dステップで順次付加していく。
- どの方向も均一に見えるときの度数が、乱視度数です。
- 付加し過ぎると、±90°逆方向に濃い線が表れます。
- 乱視有無の測定
- 球面度数の測定
- 視力を確認しながら、S−0.25Dステップで付与し、最高視力の最弱度数を測定値とします。
一般的な雲霧法の問題点
不正乱視の測定には不可
雲霧法は、正乱視の見え方を基にした測定である為、円柱レンズである程度の補正ができる不正乱視でも、測定が対応できません。
度数の強さで測定時間が変わる
測定時間が一定ではないという事は、測定精度に差が出るという事です。
遠視眼や強度近視の場合には、視力0.1の近視状態にする為の時間が掛かります。強度乱視である場合にも、測定時間が長く掛かります。
それらの解決手段として、旧眼鏡や他覚測定値を利用することが挙げられます。
旧眼鏡度数とその視力から、視力0.1となる球面度数を推測する事ができます。
他覚屈折測定値(オートレフラクトメーター)などの他覚屈折測定値の等価球面度数にS+2.00D~S+2.50Dを付加し、視力0.1を推測する事もできます。
乱視軸などの測定誤差が起こりやすい
被検者の顔が傾いている場合には乱視軸などに測定誤差がでます。姿勢の傾きなどの分だけ、乱視軸に誤りがでます。
竹串などの細い棒を使用し、濃く見える方向を直接テストフレームに当てる事で解決できます。
もし、お顔が傾いても、竹串も一緒に傾きますので円柱軸の誤差を防ぐことができます。
実用的な雲霧法の手順
オートレフラクトメーターの等価球面度数におよそS+2.00D~S+2.50D付加(視力0.1になるよう球面度数の調整が必要)したレンズ度数を仮枠の一番後方に入れます。
レンズ交換手順を遵守し、マイナス球面度数を仮枠の中央に入れて付加していき視力0.5~0.6にします。
放射線視標により乱視軸を合わせて、仮枠の前方のみで円柱レンズを付加していき乱視度数を決定します。
仮枠中央の球面度数をS−0.25Dステップで付加していき最高視力を求めます。
仮枠後方と仮枠中央を足し合わせた球面度数と、仮枠前方に入っている乱視度数が、『屈折測定値』となります。
雲霧法の測定理論
視力0.1の近視状態にする理由とは
先ずは、調節の機構とは何なのかを考えてみます。
例えば遠方視の場合、遠方の『ぼやけ』を知覚すると調節が働きます。
調節をすると、当然ながら『ぼやけ』が増大します。
『ぼやけ』の増大に気付き、初めて調節を減少し遠方が鮮明に見る事ができるようになります。
このように、その形状が判断できないほど『ぼやけ』がある場合には調節を解く事ができません。
その為、試視力表のサイズが最大である0.1視標を用いて、調節機構が働く一番強い近視状態で調節緩解が可能となります。
視力0.1の近視状態から、視力0.5の近視状態にする理由とは
視力が高い強度乱視では、後焦線が網膜後方にある『混合性乱視』の状態となる場合も考えられます。
その結果、乱視度数の測定ができなくなる可能性があります。
乱視視標は視力0.5があれば測定可能となります。(C−2.00Dの近視性単乱視の斜乱視で、視力0.5に相当します。)
C−2.00D超えの乱視測定の場合、太い線を用いたサイズの乱視視標を使用するか、雲霧法ではなく『クロスシリンダー法』を用いる必要があります。
また、乱視C−0.25D未満の乱視は、視力0.5~0.6では濃淡のむらとして知覚されずに無視されます。
調節緩解処置から調節を解く場合、視力0.1の近視状態から視力0.5にする過程で『随時、しっかり注視させる事』により、確実に調節を解く事ができます。
近視性複性乱視の状態にする理由とは
『近視性単乱視』や『混合乱視』の状態では、測定精度が下がります。
近視性単乱視の場合には、乱視度数を付与していく過程で、本来の乱視度数よりも強く付与された場合でも調節により最小錯乱円視されてしまい、『ぼやける方向が無い』となる可能性があります。
混合乱視の場合でも、調節により乱視度数を付与しても常に濃く見える線が無いなど最小錯乱円視されてしまい測定ができなくなります。
乱視補正にプラス円柱レンズを使用しない理由とは
近視性複性乱視から測定を始め、プラス円柱レンズを使用しますと、測定終了時点で後焦線が前焦線の位置まで移動することになり、乱視視標の判別可能な視力0.5を維持する事ができなくなります。
一方で、マイナス円柱レンズを使用した場合には、前焦線が後焦線の位置まで移動しますので、乱視視標の示す線は後焦線と同様に鮮明に見ることができ判別可能となります。
球面度数をS−0.25Dステップで行う理由とは
『ぼやけ』という網膜像の判断能力には個人差があります。
正視眼や弱度の遠視眼では、『ぼやけ』の判断を諦め易い傾向にあります。少しの『ぼやけ』でも、視力が大きく低下する傾向があります。
近視などでは、『ぼやけ』に慣れている為、少しの『ぼやけ』では視力が低下しづらい傾向があります。
様々な傾向に合わせて同様の精度を得る為には、少しの変化も見逃さないように最小ステップでレンズ交換をする必要があります。
測定値の確認方法
球面度数の確認方法
球面度数では、最高視力を得る最弱度数ですので、S+0.25Dを加えると視力は低下する筈です。
視力低下が起こらない場合には、測定時に調節が介入していた事となります。
一方で、S−0.25Dを加えた際に、視力の向上は認められないが『くっきり見えやすく感じる』という回答が得られる事があります。
測定距離が5mである(0.2Dの弱補正)事もありますが、コントラストが上昇するのと同時に、視標のサイズが若干小さく見えている筈です。
眼に入る光線の量は、小さくなった網膜像の前と後では等しいからです。
よって、調節力がある眼の場合、視力を確認せずにS−0.25Dを付加し見え方を比較させるのは間違いの原因となります。
乱視軸の確認方法
『斜交円柱の原理』を利用し確認する事ができます。
円柱レンズの軸を意図的にずらす事で『残余乱視』を発生させて確認する事ができます。
残余乱視の軸は、『本来の眼の乱視軸』と『ずらした乱視軸』の中間から45°ずれた角度に発生します。
例えば、軸度を±10°ずらして、濃く見える方向が等しくずれるのであれば、補正した乱視軸は正しいといえます。
乱視度数の確認方法
乱視が完全に補正された状態である場合には、C−0.25Dが増加されますと、濃く見える方向の線が90°ずれます。(実際には、不正乱視の影響で90°から若干ずれます。)
視力と度数の記入例
VdとRVは右眼、VsとLVは左眼の事です。ODやOSとある場合も右眼と左眼を意味しています。
例えば、以下のように記入します。
『右眼』、『裸眼視力が0.2』、『S−1.00D C−0.25 Ax90°の補正視力が1.2』という事を意味します。
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