視野を詳しく(アムスラーチャートでの確認)

一般消費者、眼鏡作製技能士を志す方に向けて

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視野(visual field)とは

視野とは、眼を動かさないで見ることが出来る範囲のことです。

その範囲は、固視点を中心とした角度で表されます。

  • 正常視野(単眼)の広さは、おおよそ以下の通りです。
    • 外方100°
    • 下方70°
    • 内方60°
    • 上方60°

単眼視野の片寄りは、主に眼窩の解剖学的配置、および鼻や眉毛による鼻側視野や上方視野の縮小によるものです。

視野が縮小しているかどうかの手掛かりは、患者さんを注意深く観察することで得られます。

例えば、視力0.05の低視力で中心視野欠損のみの場合には、家具にぶつかる事はないと考えられますが、周辺視野欠損の有無はこのような動作の有無で推測できます。

暗い所で見えにくいという訴えは、杆体視細胞が関与する視覚の欠損が考えられます。更に、周辺視野の欠損は、読書中に文字をとばしてしまうという訴えでも推測できます。

両眼視野

単眼視野(Monocular visual field)は、眼球運動をせずに単眼で視物を認知できる空間上の広さをいうのに対し、

両眼視野(Binocular visual field)は、単眼視野が重なる視野のことで、サイズは約124°です。

その両眼視野の両側には、約42°の大きさの両眼視下で重なる事ができない『耳側半月』という単眼視野のみの部分があります。

  • 両眼視野と耳側半月
    • 猫・・両眼視野120°、耳側半月80°
    • 兎・・両眼視野10°、耳側半月170°
    • 馬・・両眼視野65°、耳側半月146°
    • 人・・両眼視野124°、耳側半月42°

視交叉での視神経の交叉程度

哺乳類の進化階級が上がっていくと、視交叉の程度が増していきます。より、動物の眼のシステムが高度になるほど交叉程度は大きくなります。

ヒトの交叉程度は約50%といわれています。

因みに、視交叉とは、

例えば、右眼の場合には、網膜の右側の像は右脳へ、網膜の左側の像は左脳に送られます。半分だけ交叉しています。

左右眼での像の違いによる立体視ができるというような利点があります。

色視野

色を感じる視野を『色視野』といいます。白、青、赤、緑の順で約10°ずつ狭くなっていきます。

車やユニフォーム、ボールなどは『白』の方が視界に入りやすいというのも経験的に納得できますね。

逆に、迷彩服などに『緑』が良く使用されている理由も、草木と同化させる他に色視野が狭いからという理由があります。

視細胞の『錐体(cone)』は明所視で働き、視力や良く、色覚があります。

その錐体には、感度最大が450nm、525nm、575nmの分光感度が異なる3種類がある(Young Heimholtz説3色説)とされております。

因みに、可視光線は360nm~830nm位です。

  • 3種類の錐体
    • L錐体・・赤色を感じる
    • M錐体・・緑色を感じる
    • S錐体・・青色を感じる

錐体の分布は均一ではなく中心約30°以内の狭い範囲に集中しており、特に、周辺になると『黄-青』だけの色知覚と明暗の情報処理しか行っていないことが心理・物理的実験で裏付けされております。

その為、『白』の次に『青』の視野が広くなります。更には、中心部分では『赤-緑』の色知覚になる為、色視野が狭くなります。

量的視野

視野の広さは『色』ばかりではなく、『大きさ』や『明るさ』の変化でも異なります。

視野の『大きさ』や『明るさ』を変えて測定した視野を『量的視野』といいます。

視野を、等しい感度をもつ点で結ぶと等感度線というものになります。

ここでイメージして欲しいのですが、視野は視覚の感度分布であり、『盲目の海に浮かぶ視覚の島(visual island)』という考え方もあります。

動的視野と静的視野

  • 動的視野とは、指標を動かして見えた点の軌跡です。視野全体の形を把握します。
  • 静的視野とは、指標を固定し、明るくしていき見えた点の軌跡です。主に中心視野30°を把握します。コンピュータ内臓が多く、測定方法のプログラム化が行われているため『自動型視野計』とも呼ばれます

  • 量的視野検査
    • 動的視野検査
      • Goldmann(ゴールドマン)視野計などで検査
    • 静的視野検査
      • Humphrey(ハンフリー)自動視野計などで検査

Mariotte(マリオット)盲点

マリオット盲点(blind spot of Mariotte)とは、固視点の耳側約15.5°の位置にある、直径約5°の円形(縦8.5°、横5.5°)の視野欠損部分をいいます。

眼底における、視神経乳頭の部分に相当します。

自覚する事はなく、検査などでわかる『虚性暗点』です。

  • 片眼で以下の表をご覧ください。片目にして、黒や青、赤の○を見てみて消えて見える○を確認することで暗点の確認できますよ。
  • 例えば、左眼を隠して、右眼のみで以下の左側の○を見ると、右側の○が消えませんか。

視野異常

視野異常の種類は『狭窄』『半盲』『暗点』の3つがあります。

視野異常の原因は、『網膜疾患』、『視神経や視路の疾患』、『緑内障』、『ヒステリー』などです。

狭窄(きょうさく)

狭窄とは、視野の広さが狭くなるものをいいます。

  • 求心狭窄・・視野全体が狭くなるもの
    • 網膜色素変性症、緑内障の末期、ヒステリーなど
  • 不規則狭窄・・視野が不規則に狭くなるもの
    • 網膜剥離など
  • 鼻側狭窄・・鼻側が狭くなるもの
    • 緑内の中期以降など

半盲

半盲とは、視野の半分が見えなくなるものをいいます。

  • 異名半盲
    • 両耳側半盲・・視交叉で交叉繊維が障害される事による下垂体腫瘍など
    • 両鼻側半盲・・視交叉で両側から対称的に障害される事による血管性などで頻度は少ない
  • 同名半盲
    • 右側同名半盲・・視野の右半分が欠損するもので、左視索より上方の視路の病変による
    • 左側同名半盲・・視野の左半分が欠損するもので、右視索より上方の視路の病変による
  • 四分の一半盲
    • 同名半盲で両眼の視野、上方または下方の四分の一が欠損するものであり、視放線の病変で起こりやすい
  • 黄斑回避
    • 半盲の時に、中心部の視野が残っている状態で、後頭葉視中枢に近い部位の病変で起こる。
  • 黄斑分割
    • 周辺部も視野欠損し、中心部も半分見えない状態

暗点

視野の中に見えない部分のあるものをいいます。

  • 中心暗点・・注視点を含む暗点
    • 中心性脈絡網膜症、黄斑変性など
中心暗点
  • 盲点中心暗点・・盲点を含む中心暗点
    • 球後視神経炎など
    • 石津暗点・・ラケット状の盲点中心暗点
      • 乳頭黄斑線維束の障害
        • 乳頭黄斑繊維束・・黄斑部からの神経線維は乳頭の耳側から視神経に入り、その中央を走行します
盲点中心暗点
  • 副中心暗点(傍中心暗点)・・注視点付近にある暗点
    • 網膜や脈絡膜の限局的病変
副中心暗点
  • 輪状暗点・・中心部と周辺部の視野は残され、その中間に輪状の視野欠損が見られるもの
    • 網膜色素変性の初期
輪状暗点
  • 盲点の拡大・・盲点が拡大するもの
    • うっ血乳頭では盲点が全体に拡大
    • 緑内障の初期では盲点が上下に拡大する
      • 盲点の上下への拡大をBjerrum(ブエルム)暗点、またはSeidel(ザイデル)暗点という。
盲点の拡大、うっ血乳頭
盲点の拡大、緑内障によるSeidel暗点

  • 絶対暗点・・視野が全く見えないもの
  • 虚性暗点・・視野が不鮮明、あるいは色視野で異なる色に見えるもの
  • 実性暗点・・自覚する暗点
  • 虚性暗点・・自覚しないが、検査により見出される暗点
    • Mariotte盲点など

閃輝(せんき)暗点

視野の一部にチラチラした閃光を伴う暗点が表れ、次第に周囲へ広がる症状があります。その後、眼性片頭痛という偏頭痛が起こります。

若年者に多く、脳血管の一過性痙攣と考えられ、脳血管閉塞症と関連があります。

視野検査の表

  • 以下の『アムスラーチャート』の中心部分●を30cmの距離で片目で見た時に、格子が歪んでいたり、不鮮明に黒く見えていないか、見えない部分が無いか、などの確認で使用してみてね。
アムスラーチャート

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