視力の正答率について、勘で答えて正解

一般消費者、眼鏡作製技能士を志す方に向けて

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例えば、視力測定の際に、ランドルト環の切れ目の方向(8方向:正答率1/8)に縦方向と横方向しか提示されないと被検者がわかっていた場合(4方向:正答率1/4)、もしくは自身の乱視方向を知っている場合(正答率:1/2)、勘でたまたま正解した場合の誤差って何%ぐらいなのかを考察してみました。

結論としては、すごく曖昧だなと・・。

対数視力ではなく小数視力が定着している現状(今更、対数視力には変えられませんが)、消費者が安心するためのものと考えます。あとは、ざっくりとした基準。

個人的に受けた質問内容『受験者用動画:リモコン操作と視標の説明』についてですが、同様の質問を他の方からも受けたことがあります。 ⇩

実際に測定する際には、基本的には視力表の縦一列で提示し、間違えた視力値の1段階低い視力表を横一行で提示、正答率〇%以上で判別できたら次の段階の視力表を横一行で提示し判定基準を下回った段階で終了します。

「基本的には、一文字、横一列、縦一列は使用しないでください。」の内容は無視でOKです。しかも、「横一列」ではなく横の場合は「行」を使用するべきだし・・なんて揚げ足をとってみたり・・。

国家資格がんばってね!!

視力の定義

本題に入る前に、先ずは視力の定義についてですが、

『物体の形や存在を認識する眼の能力』となります。

例えば、小数視力1.0は最小視角1分(1分=1度の1/60)の逆数で表されます。

視力を最小視角で表しますと、この理屈では距離とは無関係となります。

視角および視標の大きさと距離の関係

ただ実際には、眼に映る網膜像の大きさは、距離により異なります。

近い距離の方が、相対距離的に拡大されますので見えやすくなります。

例えば、測定距離3mで視力1.0の人が、10m先の1.0視標を判別できるかどうかは何ともいえません。

日本の測定距離は、一般的に5mとなりますが、こういった曖昧さは勿論あります。

視力は体調により多少前後もしますし、日内変動があるものです。

ただ、なるべく測定毎に変化しない視力の決定方法が理想となります。

また、その視力とする正解率について考えてみましょう。

正解率

正解率は、使用する視標により異なります。

Landoit環の切れ目のように、2点を2点として分離して読める『最小分離閾』では、5分の3以上の正解(60%)となります。

文字や図形を読むことのできる『最小可読閾』では、5分の4以上の正解(80%)となります。

最小可読閾は、最小分離閾とは同じではありませんが、実用的に手軽に測定できるところが利点といえます。

日本工業規格JISでは、背景の輝度や測定距離の範囲など、他にも条件が細かく決められております。

視力測定をする際の注意点の1つに、眼を細めずまっすぐ前を見て測定する事が基本としてあります。

例えば、眼を細めずに測定した視力が0.3でも、眼を細めると視力1.0まで見える事もあります。

眼を細めずに、以下のような場合の視力はいくつでしょうか。

例えば、4つのランドルト環のうちの正解数が、

① 0.5視標が4つ全部(100%)
② 0.6視標が3つ(75%)
③ 0.7視標が1つ(25%) ・・の場合です。

正解数が60%以上となるのは、②の「視力0.6」となります。

視力が0.6である事は間違いありませんが、0.7視標が見えない訳ではありません。正解率が悪いだけです。

実際は、勘で答えて『正解』した場合もあると思われます。

正解率としては以下のようになります。

『ランドルト環』の上下左右だけの使用ですと、4つの中から選びますので、正解率は25%(1/4)です。斜め方向を入れますと12.5%(1/8)です。

『ひらがな』では、50音ある中でよく使用される10文字『いくけこつてとにへり』としますと、正解率は10%(1/10)です。

『ランドルト環』で視力測定する場合には、基本的には5回提示しますが、先に正解が3回になりましたら、後の2回は提示しません。

3回正解した時点で、3/5回の正答率60%となりその視力と決定できるからです。

また、先に3回不正解が続いた時点で、その視力とはいえなくなります。

5回全て提示しますと全部で32通りありますが、途中で終わるのだけですと以下の20通り(5P2=5×4=20)のみになります。

〇✕の順列(ランドルト環の正答)

そして、『ランドルト環』で例えば、1回目に上方向を提示した場合には、2回目は横方向を提示します。その方が効率的と思われます。

上下方向の輪の切れ目が分かる場合には、横方向のブレは無いと推測できますし、横方向の輪の切れ目が分かる場合には、縦方向のブレは無いと推測できるからです。

全て勘で答えた場合

では、『ランドルト環』で上下左右のみを提示した場合を考え、全て勘のみで正解し、その視力と間違いで決定される確率はどの位になるのでしょうか。

勘で正解する1回の確率は25%ですので、例えば『正解』が3回続く確率は0.25の3乗ですので1.56%となります。

100回測定する内の1回か2回あるかどうかの数字です。

『正解』『正解』『不正解』『正解』など全部の場合を合わせた場合でも3.32%となります。

誤差の範囲内です。

上下左右を、2回のみ提示

では、上下左右を2回だけ提示し、続けて正解した場合にのみ、その視力とした場合はどうでしょうか。

その視力として決定して良いのでしょうか。

上下左右方向の判別が出来るのであれば、3回目以降の提示はしなくても良いのかどうかについてです。

『〇』『〇』『✕』『✕』『✕』となる場合が問題となります。

つまり、1回目か2回目、もしくはどちらも『勘でたまたま正解』した場合です。

単純計算の4分の1である25%の内、どちらも勘だった場合の確率は

1回目が勘で正解し、2回目は勘では無い場合は25%(1/2×1/2=1/4)

1回目は勘では無く、2回目が勘で正解した場合は25%(1/2×1/2=1/4)

1回目も2回目も勘で正解した場合は6.25%となります。(1/4×1/4=1/16=0.0625)

この3通りを足して、単純計算した25%と掛け合わせますと14.06%となります。(9/16×1/4=0.140625)

ですので、86%は問題ないですが、残りの14%は問題となります。

運転免許の更新などでは『斜め方向』は基本的にありませんので、『上下左右』の4通りのいづれかになります。

ですので、ランドルト環でも基本的には上下左右のみを提示しますが、2つ続けて正解した時の上下左右はブレていないものとし、再度、上下左右を提示し確認を行います。

しかしながら、同じ方向を出していては芸が無く少し無駄な作業な気もします。

でしたら、斜め方向を提示するか、いっその事『ひらがな視標』を提示した方が実用的では無いか・・とも思えます。

つまり、『最小分離閾』と『最小可読閾』を併用する事も有りなのかと考えます。

『ランドルト環』は上下左右と斜め方向ですので、全部で8通り

その内、正乱視の未補正が残っていた場合でも、以下の様に『上下左右、もしくは斜め方向』のうち、ある方向は判別できます。

実際のところ、『上下左右』のみの提示では、50%は答えられるかもしれません。

近視性倒乱視の見え方

一方で、『ひらがな視標』を『いくけこつてとにへり』の10文字として、

実際には、経験的に形から推測して間違いやすいのは『け』か『り』『こ』と『に』などの二者択一である事が多く、50%は答えられるとします。

あくまで、個人的な考えですが、視力の決定では、

『ランドルト環』を上下左右の別方向で2回提示し続けて正解したら、『ひらがな視標』を提示し読んでもらい、『ひらがな視標』5つ提示した内、(本来は80%の正解ですので、4つ正解しなければいけませんが)2つ以上『正解』したら、その視力とすると安定した視力になるのではないかと考えます。

乱視のブレる方向

『ランドルト環』でも『ひらがな』でも、

どう間違えたかで、未補正の正乱視方向の判別が出来ます。

放射線視標

一旦、視力0.1まで雲霧してから、視力0.5ぐらいにした後に放射線視標をみますと、乱視がある場合には濃く見える線があります。

『近視性単乱視』の状態が理想となります。

例えば、横線が濃く見える場合には『近視性倒乱視』となります。

つまり、横にブレている場合には、横線が濃く見え、縦線が薄く見えます。

『け』を『り』と読んでしまう場合は、横線が薄く見えている(縦にブレている)筈ですので、近視性直乱視の状態となります。

『に』を『こ』と読んでしまう場合は、縦線が薄く見えている(横にブレている)筈ですので、近視性倒乱視の状態となります。

ランドルト環の『横方向』がわからない場合は、縦にブレていますので、以下のような近視性直乱視の状態となります。

近視性直乱視の見え方

ランドルト環の『縦方向』がわからない場合には、横にブレていますので、近視性倒乱視の状態となります。

このように、被検者の受け答えにより、乱視の未補正を推測することができます。

視力値の判定基準(JIS T7309:2002 視力検査装置、同一段階の最少視標数)

標準視力検査装置と准標準視力検査装置についての検査距離の最短を4mとし、5mを推奨する。とあります。3mは推奨されておりません。

検査室の照明は50 lx以上とし、視標輝度を上回らない照度とするともあります。

視標の提示方法では、切れ目が水平又は垂直方向を50%の提示とし、異なる切れ目方向を提示しなくてはなりません。

視力値の判定基準

a)  使用した視標の数が

2個又は3個の視標数・・2個以上の正解、
4個又は5個の場合・・3個以上、
6個又は7個の場合・・4個以上、
8個又は9 個の場合・・5個以上、
10個の場合・・6個以上の正解でその視力値とする。

b) 提示の好ましい個数は、5個、8個、10個とし、

それぞれの場合につき、最低正答個数は、提示個数の約60%とする。

c) 視力値は判定基準を下回った段階で終了し、 終了した段階より1段階低い視力値の段階とする。

同一段階の最少視標数

視力値と最小視標数(並べる数)は

視力値0.05以上~0.1以下では2個、
視力値0.125以上~0.2以下では3個、
視力値0.25以上~2.0以下では5個、

としています。

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