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『グルストランドの模型眼』という言葉は、眼鏡の仕事に携わる人間であれば必ず聞く言葉です。
アルベール・グルストランド(Allver Gullstrand 1862~1930)は、スウェーデンの眼科医であり、眼の屈折を計算する『模型眼』と『細隙灯』を作成しました。
その結果、1911年にノーベル生理学・医学賞を受賞しました。
模型眼としては、他にも『Heimholtz』や『LeGrand』の模型眼、『Donders』、『Lawrence』、『Listing』の省略眼(模型眼を簡素化したもの)などがあります。
Gullstrandの模型眼
角膜の屈折力は43.05[D]
角膜の前面は曲率半径は7.70mmであり、空気(屈折率1.0)と角膜実質(屈折率1.376)の2つの媒質の境界面を形成しています。
角膜の後面は曲率半径6.80mmであり、角膜と、房水(屈折率1.336)の境界を形成しています。
角膜の中心厚は0.5mmです。
以上の事から、全屈折力を求めてみます。
- 角膜の前面屈折力は
- (1.376−1.336)÷0.0077=48.83[D]
- 角膜の後面屈折力は
- (1.336−1.376)÷0.0068=−5.88[D]
- よって、角膜の全屈折力は
- 48.83+(−5.88)−(0.0005÷1.376)×(48.83)×(−5.88)=43.05[D]
角膜は、空気中ではマイナスの屈折力をもつメニスカスレンズです。
しかし、角膜前面が空気で、後面が房水と接しているため、眼の中では極めて強力なプラスの屈折力を持つレンズとして作用するのです。
プールの中で目を開けると、角膜前面の屈折率が大気中の1.00から水中1.33になる為に極度の遠視状態になり、見えなくなってしまうのです。
これが、水の中でボヤける理由です。
へぇ~。
水晶体の屈折力は19.11[D]
調節休止状態の水晶体は、前面の曲率半径10mm(最大調節時は5.3mm)、後面の曲率半径−6.00mm、水晶体の屈折率1.4085、房水の屈折率1.3360、硝子体の屈折率は1.3360、水晶体前面と後面の厚みは3.60mm(最大調節時は約4.0mm)です。
水晶体は前面が房水と接し、後面は硝子体と接していますので、
- 水晶体の前面屈折力は
- (1.4085−1.336)÷0.010=7.25[D]
- 水晶体の後面屈折力は
- (1.336−1.4085)÷(−0.006)=12.08[D]
- よって、水晶体の全屈折力は
- 7.25+12.08−(0.0036÷1.4085)×7.25×12.08=19.11[D]
水晶体は、大気中で屈折力が101.82D(厚みを無視した場合は108.93D)にもなります。
角膜は、大気中で屈折力が−5.48D(厚みを無視した場合は−6.46D)になります。
以前、牛か豚(忘れました・・・)の眼を解剖した時の事ですが、
角膜(屈折率1.376)も水晶体(屈折率1.4085)も、水の屈折率1.33とほぼ変わらない為、水の中では見えづらくなります。
その事をふと今、思い出しました。何年も前の話しです。
Gullstrandの模型眼には、他にも、眼球の大きさが24mmで等々・・・細かい数値が示されております。
因みに、この眼軸長24mmというのは、+1.00Dの弱度遠視眼となります。正視眼が24mmではありません。
余談ですが、眼軸長が1㎜大きいとおよそ3. 00Dの屈折異常が起こります。眼の大きさで、そんな変わるんですね。
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